読めますか? テーマは〈泣く〉です。

洒ぐ

答え
そそぐ
(正解率 57%)

「注ぐ」と同じこと。洒の字は「洒脱」「洒落」の熟語で知られる。「洒涙雨(さいるいう)」は七夕で二星が会って別れるときの涙とも、会うことを妨げる雨ともいう。戦国武将、直江兼続は「織女惜別」という漢詩で「洒涙(涙をそそぐ)」と使っている。

(2014年07月07日)

選択肢と回答割合

あおぐ 19%
そそぐ 57%
ひしぐ 23%


号ぶ

答え
さけぶ
(正解率 50%)

「叫ぶ」と同じこと。夏目漱石「三四郎」などに「泣き号ぶ」の用例がある。「号泣」とは本来、声を上げて激しく泣くことだが、声を上げなくても使われる例が広がっている。しかし先日話題になった兵庫県議会議員の「号泣」は正しい使い方。

(2014年07月08日)

選択肢と回答割合

おたけぶ 36%
くちずさぶ 14%
さけぶ 50%


咽ぶ

答え
むせぶ
(正解率 96%)

むせること。また、泣き声をのどにつまらせ激しく泣くこと。咽はのどのことで、「むせぶ」の関連では「嗚咽(おえつ)」という熟語をつくる。

(2014年07月09日)

選択肢と回答割合

しのぶ 2%
すさぶ 2%
むせぶ 96%


馬謖

答え
ばしょく
(正解率 83%)

「三国志」に出てくる諸葛孔明の部下。「泣いて馬謖を斬る」という故事で有名。孔明に目をかけられながらその命令に従わず大敗し、軍律のため孔明に斬られた。最近あまり聞かないが、身内に厳しい処分をするところがないせいだろうか。

(2014年07月10日)

選択肢と回答割合

ばしょく 83%
ばぞく 3%
ばり 13%


滂沱

答え
ぼうだ
(正解率 92%)

涙などが盛んに流れ落ちるさま。尾崎紅葉「金色夜叉」では「はらはら」と読ませている。元々は雨が激しく降るさまをいったようだ。

(2014年07月11日)

選択肢と回答割合

ぼうた 3%
ぼうだ 92%
ぽた 5%

◇結果とテーマの解説

(2014年07月20日)

この週は「泣く」。お分かりだと思いますが「号泣県議」が契機です。

いやー日本全国笑かしてもらいました。芸人真っ青でしたね。いや、本当は笑いごとではないのですが。

同僚からは「初めて正しい『号泣』の使われ方に出合った」という冗談が飛び出しました。というのは、本来号泣とは「大声を出して泣くこと」なのに、最近は声とは関係なく単に激しく泣く意味で使われることがほとんどになっている実態があるからです。

2012年の文化庁「国語に関する世論調査」によると、本来の「大声を上げて泣く」が34%、「激しく泣く」が48%と、意味を拡大させている人の方が多いという数字が出ています。

文化庁のサイト「言葉のQ&A」ではこの結果を踏まえた上で次のように分析しています。「このように『号泣』の意味するところの範囲が拡大して用いられるようになったのは、週刊誌やテレビ番組などが、誰かの激しく泣く様子を、声の有無にかかわらず、『号泣』と表現し始め、それが、次第に、一般にも広がっていったのではないかと思われます。激しく泣いたり、大泣きしたりすることを表すのに、ふさわしい熟語がほかにないことなども関係しているのかもしれません」

たしかに2文字の熟語で、それも常用漢字など分かりやすい字で似た言葉を探すと「感涙」くらいしか思いつきません。それではインパクトが足りないと思う雑誌やテレビの担当者が「号泣」の語につい頼ってしまうのでしょう。

それに加え「号」の字が「さけぶ」ことだと意識されないことも「号泣」の受け取り方が変質している理由と思います。今回「号ぶ=さけぶ」の正解率が半分にとどまったことからもそれがうかがえます。

この実態をふまえ、今年発行の「三省堂国語辞典」第7版では「号泣」に〔俗〕として「大いになみだを流すこと」という意味が加わりました。編集委員の飯間浩明さんによると、毎日新聞連載の漫画「毎日かあさん」に「声を止めて号泣」とあったのが証拠の一つだそうです。うーん、毎日新聞が用例を与えてしまっていたとは。

泣くというと50歳の出題者がすぐ連想する漫画は「巨人の星」です。「『巨人の星』に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ」というたいへん長いタイトルの本(講談社文庫)によると、この漫画で泣きの回数は123回だそうです。うち星飛雄馬が42回。筆者の堀井憲一郎さんは数えるだけではなく、泣き方や、その場面などを一覧表にしています。暇な、いえ失礼、まめな方です。

実によく泣く星飛雄馬ですが、この表の「涙の種類」に「号泣」とあるのは意外にも1カ所だけ。あとは「悔し泣き」「悲し泣き」「感動」などと分類されています。そういえば確かに彼はよく涙を流しますが、わんわん大声を上げて泣くシーンはあまり記憶にありません。「号泣」と記されたのは恋人美奈さんの死のシーンで、確かに絶叫していました。しかし人前ではなく山の中で木に頭を打ちつけつつ泣くのです。どんなに取り乱しても男は人前で号泣するものではないという美学がうかがえます。

人前で、というより全世界に号泣する姿をさらしてしまった議員は、だからとても珍奇な例として人々の記憶に残るでしょう。ああ、あんまり号泣について書くことが多すぎて他の漢字について書く余裕がなくなりました。すみません(涙)。

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