読めますか? テーマは〈年末〉です。

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臘月

答え
ろうげつ
(正解率 52%)

陰暦12月の異称。年賀状に「旧臘中はお世話になりました」と書くのは漢字の意味からいうと「去年の12月だけはお世話に」と言っているようでおかしい。「旧年中」と書くべきだろう。

(2016年12月26日)

選択肢と回答割合

おぼろづき 41%
ろうげつ 52%
ろうがつ 7%


晦ます

答え
くらます
(正解率 86%)

見つからないように隠すこと。「晦日」を「みそか」と読むのは、旧暦で月の30日目、つまり三十日(みそか)に月が行方をくらますことから。晦日を「つごもり」ともいうが、これも月がこもることからという。12月末日は「大みそか」「大つごもり」。

(2016年12月27日)

選択肢と回答割合

くりすます 10%
くらます 86%
だます 4%


世間胸算用

答え
せけんむねさんよう
(正解率 11%)

大みそかの町人を描く井原西鶴の小説。金は無い無いといっても有るところには有ると語る。「胸算用」自体は心の中の見積もりのことで、今は「むなさんよう」「むなざんよう」と言うが、西鶴がいた元禄時代はまだ「むねさんよう」が多かったようだ。ただ「むねざんよう」とする本もある。

(2016年12月28日)

選択肢と回答割合

せけんきょうざんよう 7%
せけんむねさんよう 11%
せけんむなざんよう 81%


極月

答え
ごくげつ
(正解率 32%)

「ごくづき」ともいう。陰暦12月の異称。年の極まる月ということから。大みそかの町人を描く井原西鶴「世間胸算用」に「極月の末」という用例がある。

(2016年12月29日)

選択肢と回答割合

ごくげつ 32%
きょくがつ 14%
きめつき 54%


大年の客

答え
おおとしのきゃく
(正解率 40%)

「大年」は「おおどし」ともいう。大みそかのことで、井原西鶴の「世間胸算用」にも出てくる。「大年の客」は大みそかの夜にみすぼらしい旅人をもてなすと翌朝その客が黄金になっていたという昔話。

(2016年12月30日)

選択肢と回答割合

だいねんのきゃく 27%
おおねんのきゃく 33%
おおとしのきゃく 40%


◇結果とテーマの解説

(2017年01月08日)

この週は「年末」がテーマでしたが、今となってはちょっとタイミングがずれますので「世間胸算用」以外は簡単に振り返ります。

12月の異称として「師走」は有名ですが「臘月」などほかにもいろいろあります。誤答の多かった「おぼろづき」は「朧月」と書き音読みではやはり「ろうげつ」です。

「晦ます」は「姿を晦ます」などで使います。「暗ます」と書くのは間違いとはいえませんが普通平仮名で書きます。そういえば「大晦日」も新聞では「大みそか」です。

「極月」で「きめつき」という誤答が多かったのは「月極駐車場」の連想に違いありません。

「大年の客」は「大歳の客」とも書きます。昔話には、大みそかの客に親切にすると翌日小判になっていたという話のほか、さまざまなバリエーションがあります。

さて「大年」も「極月」も出てくる「世間胸算用」が今回の正解率最低でした。「新潮日本古典集成 世間胸算用」の注釈には「ムネザンヨウと読む。西鶴の作品でもムナザンヨウの振り仮名は数例に過ぎない」とあります。この本や小学館ライブラリーなど少なからぬ文献が「むねざんよう」としています。

だったら「むねざんよう」を正解にすべきだったかもしれませんが、そうしなかった理由は二つ。調べた国語辞典のすべてが「むねさんよう」と濁らないことと、「新潮古典文学アルバム17 井原西鶴」などで写真を確認したところ振り仮名が「むねさんよう」に見えること。いずれにせよ、「むな」ではなく「むね」であることは変わらないので、この漢字クイズでは「むねさんよう」を正解にしました。

なお広辞苑の「むなざんよう」には「江戸中期頃までは多くムネザンヨウ」とあります。「世間胸算用」が出たのは元禄5年正月。1692年は江戸初期なのか中期なのかは微妙ですが、まだ「むね」が当時の一般的な読みだったと思われます。

ところで、この古典を拾い読みすると現代にも通じる言葉が次々出てきます。「世界にないないといへど、あるものは金銀ぢや」「神にさへ、このごとく、貧福のさかひあれば、況(いは)んや、人間の身の上。定めがたきうき世」など、金が第一の格差社会が早くも生まれていたことをうかがわせます。

そして「巻一 鼠の文づかひ」には思わず目を見張る文言が。隠居のおばあさんが恵方棚に上げていた「年玉銀(としだまがね)」が盗まれたと嘆いています。探したところ屋根裏から見つかりました。ネズミの仕業だと若い衆が言いますが――

お祖母(ばば)、なかなか合点せられず、「これほど遠ありきいたす鼠を、見た事なし。あたまの黒いねずみの業。これからは、油断のならぬ事」

とわめきます。この「あたまの黒いねずみ」という言葉、ご存じでしたか。出題者は不明にして知りませんでしたが、辞書には「こそこそと家の物をくすねる者のたとえ」(新明解国語辞典)と載っています。ことわざ辞典にもあります。

この言葉が目に留まったのは、小池百合子東京都知事の記者会見で出てきたからです。東京五輪の複数の会場を東京以外の所にする案が採用されなかったことに関し、12月2日「大山鳴動してネズミ一匹」と記者が指摘しました。これに対し小池知事は「ネズミどころか、大きな黒い頭のネズミがいっぱいいたことが、ここでわかった」と切り返したのです。ことわざの追及にことわざで応酬したわけです。西鶴を読んで、知事の才覚に初めて気づきました。

もう一つ。「鼠の文づかひ」の話には「わたくしの惜しむは、去年の元日に堺の妹が礼に参つて」というおばあさんのせりふがありますが、「大晦日を笑う『世間胸算用』」(広嶋進著、清文堂)で「『今年』とあるべきところ」と注釈されています。

この手の今年、去年の間違いは年の変わり目に起きがち。私たち新聞の校閲は身にしみています。西鶴も間違えていたことにちょっと親しみを覚えました。

春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉たち

当サイトの「読めますか?」をもとに、季節にちなむ言葉を厳選し加筆しました。

さまざまな文学作品が築いてきた味わい深い日本語の一端を紹介しています。

美しい季節の言葉を味わいたい方、間違えずに使いたい方におすすめです。

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