読めますか? テーマは〈開戦〉です。

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劈頭

答え
へきとう
(正解率 78%)

事の初め。1941年12月19日の「東京日日新聞」(毎日新聞の前身)の1面トップは「開戦劈頭の帝国海軍の赫(かく)々たる戦果」と書き出し、真珠湾攻撃などの詳報を伝えている。

(2016年12月19日)

選択肢と回答割合

へきとう 78%
とうとう 9%
かんとう 13%


出師

答え
すいし
(正解率 53%)

軍隊を繰り出すこと。駆け付け警護など危険を伴う新任務を付与された陸上自衛隊第9師団などの部隊が、南スーダンに派遣された。師の字には元々、軍隊の意味があり、諸葛孔明の「出師の表」でも知られる。

(2016年12月20日)

選択肢と回答割合

しゅっし 10%
すいし 53%
しゅっすい 37%


干戈

答え
かんか
(正解率 69%)

「たて」と「ほこ」。「干戈を交える」とは戦争をすること。駆け付け警護など危険を伴う新任務を付与された陸上自衛隊の南スーダン派遣について、安倍晋三首相は「政府軍と自衛隊が干戈を交えることにはならない」と述べた。

(2016年12月21日)

選択肢と回答割合

かんか 69%
かんじゅ 13%
かんぶ 18%


釁端

答え
きんたん
(正解率 26%)

争いの始まり。昭和天皇による1941年12月8日の開戦の詔書に「米英両国と釁端を開く」と出てくる。釁の部首は「酉」。古代、いけにえの鶏の血を器にぬって祭ったことからという。この字には「きず」「すき(隙)」「あやまち」などの意味もある。

(2016年12月22日)

選択肢と回答割合

ふんたん 44%
きんたん 26%
がくたん 30%


◇結果とテーマの解説

(2017年01月01日)


真珠湾

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

元日から「開戦」の言葉はいささかはばかられる感がありますが、先週安倍晋三首相が真珠湾を訪問したばかりですし、年頭に平和を祈るのも意義深いことですので、取り上げる意味はあると思いました。

「劈頭」は1941年12月19日の東京日日新聞(毎日新聞の前身)朝刊1面トップの冒頭に出てきます。

開戦(せん)劈(へき)頭のハワイ海戦(せん)における帝国海軍(ぐん)の赫(かく)々たる戦果(せんくわ)は全世界(かい)を驚倒(けうとう)せしめたが……

(原文は旧字。以下同じ)

ところで、パールハーバーは一般的に「真珠湾」と書かれます。しかしharborは「港」ではないかと読者の質問がありました。確かにそうで、湾はgulfかbayですが、なぜか昔から「真珠湾」の表記が定着しています。


1941年12月19日の東京日日新聞1面

ところが、同日の東京日日新聞紙面では「特殊潜航艇、真珠港へ決死突入」という見出しがあります。「真珠湾」ではありません。「大本営海軍部発表」として次のように書かれています。

同海戦において特殊潜航艇をもつて編成するわが特別攻撃隊は警戒厳重を極むる真珠港内に決死突入し……

しかしその前の記事では「この特殊潜航艇隊(とくしゅせんこうていたい)は海鷲の真(しん)珠湾(わん)急襲(しう)に呼応(おう)し、ひそかに港内に突入」とあり、社説でも「真珠湾」の文字が見えます。誤植でないとしたら、大本営海軍部発表の部分は直訳、東京日日自体の記事はそれと違う表記を選んでいることになります。

「出師」は、三国志ファンなら諸葛孔明の「出師の表」で知っている人が多いのではないでしょうか。劉備亡き後、魏への出陣時に劉禅にあてた上奏文です。「出」は音読みで普通「しゅつ」ですが「全訳漢辞海」によると「スイの音は、『出師』『出納(スイトウ)』など、他動詞『いだす』意の用法の一部に限定される」そうです。

「師」は軍隊を指し、自衛隊に「師団」があることは自ら軍隊と名乗っているようなものですが、それはともかく、白川静「常用字解」によると、師を率いる将軍は「現役引退後は、氏族の指導者として若者の教育にあたったので、師は『せんせい』の意味にも用いる」ようになったそうです。

「干戈」は、先月の志位和夫共産党委員長との党首討論で安倍首相が「政府軍と自衛隊が干戈を交えることにはならない」と述べたことがきっかけの出題です。「戦争」あるいは「戦闘」という刺激的文言を避けるためにわざわざ難しい言葉を持ち出したのですかね。

41年12月8日の開戦の詔書にもこの語は出ています。

今ヤ不幸ニシテ米英両国ト釁端ヲ開クニ至ル洵ニ已ムヲ得サルモノアリ豈朕カ志ナラムヤ中華民国政府曩ニ帝国ノ真意ヲ解セス濫ニ事ヲ構ヘテ東亜ノ平和ヲ攪乱シ遂ニ帝国ヲシテ干戈ヲ執ルニ至ラシメ……

この週で最も正解率の低かったのは、ここに引用した初めに出てくる「釁端」でした。過去の「読めますか?」の中でも難問中の難問。こういう漢字検定1級にしか出てこないような難問奇問はなるべく避けていますが、今回は開戦の詔書に出てきたことから、いかに難しい語が使われていたかという例として出題しました。

なお「全訳漢辞海」によると「釁」は「犠牲(いけにえ)を殺し、その血を器物に塗って祭る。ちぬる」と①の意味にあり、成り立ちからして血なまぐさい字です。しかし別の意味として「すきま」「過失」「欠点」「罪科」などがあり、結果的には日本政府と軍の失敗を暗示しているように今からみれば思えます。

以下、無用のことながら……毎日新聞データベースで「開戦75年」を検索すると15件、「戦後70年」は5860件でした。首相の演説でも戦後の「和解」ということが全面的に打ち出され、開戦に至った経緯は語られませんでした。

いま振り返るべきなのは、戦後の関係というより戦前であり、必要なのは、日本がいつどこで間違った道を選んでしまったかを改めて検証し尽くすことではないでしょうか。次の「開戦」へと道を誤らないために。

春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉たち

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