読めますか? テーマは〈宵〉です。

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入相

答え
いりあい
(正解率 53%)

「夕方」の古い言い方。新古今和歌集の能因法師の歌に「山里の春の夕暮れきてみれば入相の鐘に花ぞ散りける」がある。なお、共同で利用する土地を意味する「いりあいち」は「入会地」と書く。

(2016年04月18日)

選択肢と回答割合

いりあい 53%
にゅうしょう 18%
じっそう 30%


夕星

答え
ゆうずつ
(正解率 28%)

「ゆうつつ」「ゆうつず」などとも表記される。宵の明星、すなわち夕方に西の空に見える金星のこと。「長庚」とも書く。枕草子に「星はすばる。ひこぼし。ゆふつつ。よばひ星。すこしをかし」とある。

(2016年04月19日)

選択肢と回答割合

ゆうばえ 38%
ゆうずつ 28%
せきしょう 35%


春宵

答え
しゅんしょう
(正解率 64%)

春の宵。「春宵一刻直(あたい)千金」は蘇東坡(そ・とうば)の詩の一節。なお「宵のうち」は気象庁では現在使わず「夜のはじめ頃」で午後6~9時ごろとしている。

(2016年04月20日)

選択肢と回答割合

しゅんえん 27%
しゅんちょう 9%
しゅんしょう 64%


大禍時

答え
おおまがとき
(正解率 75%)

夕方の薄暗い時のこと。大きな災いが起きる時とされることから、魔にあう意味で「逢魔(おうま)が時」などとも書く。死亡に至る交通事故が多い魔の時間なので、ドライバーの皆さん、ヘッドライトはお早めに。

(2016年04月21日)

選択肢と回答割合

おおまがとき 75%
たいかじ 13%
たそがれどき 12%


泥む

答え
なずむ
(正解率 56%)

「とどこおる」と同じ意味。日が暮れそうでなかなか暮れないでいることを「暮れ泥む」という。主に春の夕方について表し、秋に用いるのは誤りだ。歌の「贈る言葉」の歌いだしは「暮れなずむ町の光と影の中」。

(2016年04月22日)

選択肢と回答割合

ぬるむ 31%
なずむ 56%
くろずむ 12%


◇結果とテーマの解説

(2016年05月01日)

この週は「宵」がテーマでした。

「宵のうち」は気象庁の用語からなくなったとはいえ一般的にはまだ使われていると思います。しかし音読みはそれほど知られていないことが「春宵」64%という結果からうかがえます。ショウの音読みも常用漢字表に掲げられているのですが……。

「春宵」は蘇軾(蘇東坡)の詩「春夜」の冒頭が引用されることが多い言葉ですが、この表記は辞書によって違っています。

春宵一刻値千金…大辞泉、大辞林、三省堂国語、新明解国語、新選国語、学研現代標準国語
春宵一刻直千金…広辞苑、明鏡国語、集英社国語、角川必携国語、新潮日本語漢字
春宵一刻価千金…日本国語大辞典、岩波国語

これほど「あたい」の表記が違っているのはどういうことでしょう。岩波文庫「中国名詩選」には「直」で載っていました。つまり、原典は「直」なのだけれど、日本では読みやすい「値」で広まっているということでしょうか。ところが、岩波書店の別の本「中国詩人選集」シリーズの一冊「蘇軾 下」を見ると「春宵一刻値千金」となっているではありませんか。岩波文庫によると、この詩は「蘇軾の元の詩集には収められていない」ということなので、1次資料というべきものが存在せず写本によってさまざまな表記があるのかもしれません。

 

さて、他の語です。「入相」は「入り相」と送り仮名を付けると「毎日新聞用語集」は定めているのですが、この語は今ほとんど使われていません。森鷗外の「高瀬舟」には

智恩院の桜が入相の鐘に散る春の夕べに、これまで類のない、珍しい罪人が高瀬舟に載せられた。

とあるように、昔の文学作品には送り仮名なしでよく出てきます。

 

「夕星」の用例は夢野久作「髪切虫」から引きましょう。

桐畠の周囲の木立ちは、大きくまばたく夕星(ゆうずつ)の下(もと)に、青々と暮れ悩んでいた。

期せずして出てきましたが「暮れ悩む」なんて言葉もあるんですね。まさか「暮れ泥む」の間違いということではありますまい。ちなみに「暮れなずむ」を秋に使うと間違いということは、校閲としては知っておかなければなりません。

 

最も正解率が高かったのは「大禍時」。「逢魔が時」だと簡単すぎるので元の形とされる字で出題しましたが、それでも比較的易しかったようです。なお「おおまがとき(大禍時)」を見出し語にするか、「おうまがとき(逢魔が時)」にするかは辞書によって分かれます。大体は「逢魔が時」を見出し語に出しているのですが、大辞林、三省堂国語辞典は「大禍時」にしています。三省堂国語は「逢魔が時」は「おおまがとき(大禍時)」の方に誘導され、大辞林は「おうまがとき【逢う魔が時】『大禍時(おおまがとき)』に同じ」となっています。どちらの漢字が今多く使われるかはいうまでもなく「逢魔が時」でしょうが、「おお」で引く人が多いことを考慮しているのでしょうか。

ところで、大島弓子さんの漫画に「たそがれは逢魔の時間」という短編があります(白泉社文庫「夏のおわりのト短調」所収)。中年男が主人公で少女売春も扱っているという少女漫画らしからぬストーリーですが、すばらしく詩的な名作と思います。タイトルに使われる「逢魔の時間」ですが、中では「魔が刻(こく)」という言葉になっています。これ、辞書では調べた範囲では見つかりません。大島さんの造語なのでしょうか。

もっとも、この回の出題のきっかけは出題者の趣味などではなく、国土交通省が自動車メーカ−に対し、一定の暗さになれば車のヘッドライトが自動で点灯する機能の装備を義務づける方針を固めたというニュースでした。たそがれは美しく切ない時間。魔の時にしないように気を付けたいものです。

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