読めますか? テーマは〈似た漢字〉です。
閏日
(2016年02月29日)
選択肢と回答割合
じゅんじつ | 58% |
じゅんにち | 6% |
ねいじつ | 36% |
于撥ね干引き
(2016年03月01日)
選択肢と回答割合
かんぱねせんびき | 21% |
うはねかんびき | 65% |
ちょうはねほびき | 14% |
祗候
(2016年03月02日)
選択肢と回答割合
しこう | 32% |
ぎこう | 56% |
ていこう | 11% |
元巳
(2016年03月03日)
選択肢と回答割合
がんし | 30% |
げんき | 29% |
げんし | 42% |
爪牙
(2016年03月04日)
選択肢と回答割合
しが | 41% |
そうが | 53% |
かげ | 6% |
◇結果とテーマの解説
(2016年03月13日)
この週のテーマは「似た漢字」。きっかけは、「とめ・はね」の細かい違いを問題視しないとした文化庁文化審議会漢字小委員会の方針に対し「それはいいけど漢字によっては、とめはねの違いによって別字になってしまうものがある」と思ったことでした。
2月22日夕刊(東京本社版)より
その報道が毎日新聞の1面を飾るまでは、うるう年にちなみ暦関係の漢字を考えていました。「閏日」「元巳」はその名残であると共に、今回のテーマにも合わせた漢字です。
まずは本筋ではありませんが「うるう」について調べて「えっ」と思ったことを引用しましょう。
暦法上は閏年の決定には依然として皇紀が用いられている。これは戦後もなお西暦が公認されていないためで、今日実際には年号以上に紀年法として西暦が広く用いられている実情からはちょっと考えられないことではあるが事実なのである。
岡田芳朗「暦ものがたり」角川ソフィア文庫
我々は「うるう年といえばオリンピックイヤー」という結び付きを意識しますが、なんと4で割り切れる皇紀だったとは……。今年は皇紀2676年だそうです。
ここから本題。「閏」に似た字に「閠」があります。字が小さいと判読できないほどわずかな違いですが、門構えの中が前者は「王」で後者は「玉」。単独の王と玉は、古代ならいざ知らず現代は似て非なる別の字です。しかし「閏」と「閠」は同じ字で、いわゆる「異体字」とされます。人名用漢字の字体としては「閏」が掲げられていますが、テンの付いた「閠」も誤字とはいえません。ここで疑問が湧きます。仮に「潤う」という漢字を書かせる試験問題があったします。「王」の部分にうっかり点をつけて「玉」を書いた生徒は「×」となるのでしょうか?
では別の疑問です。「干」と「于」は下をはねるか否かによって別の字になるので書き分けなければいけませんが、「于」を構成要素に持つ「宇」「芋」の下をはねないと、漢字のテストでは「×」になるのでしょうか?
文化庁のホームページでは「Q78」までの詳細なQ&Aがありますが、以上のような質問はありません。ただし「字形比較表」に掲げられた「手書き文字の字形の例」には「潤」の中が「玉」の字、「宇」の下がはねない字は例示されていません。ということはそれらは「×」なのか。いや、そういう字になったところで別の字になるわけではないので、許容範囲なのか。よくわかりません。さまざまな疑問に全て答えるわけにいかないのでしょうが、もどかしさが残ります。
文化庁「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(案)より
まあ手書きの問題はさておき、印刷文字をなりわいとする者としては「似ているが別の字」には気を付けなければなりません。
「于」は中国人名などに多く見られますが、日本でも人名用漢字になっています。百人一首に
山里は冬ぞ淋しさまさりける人目も草もかれぬと思へば
の歌を残した源宗于(みなもとのむねゆき)に「于」が使われています。ネットには「源宗干」という間違いが少なからず見られますので要注意です。
「祇園」と「祗園」については以前もブログで取り上げましたが、今回「祗候」を「ぎこう」と答えた人が正解の「しこう」より多かったという結果には、この二つの字の違いがあまり認識されていないということを思い知らされました。
「爪牙」も「しが」の誤答が多くなりました。「歯牙」との混同によるものでしょう。「爪」は「瓜」となると別字の「うり」ですが、その違いで間違えるよりも、意味が近い別の言葉と読み間違える方が多いのかもしれません。
今回は難しい週でした。なお、文化庁の今回の方針は評判がいいといえず、毎日新聞にも読者から反対意見が寄せられています。このブログでも疑問を述べましたが、全体的には参考にすべき資料だと評価しています。漢字に携わるすべての方に読んでほしいと思います。
→文化庁「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(案)