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河内山宗俊

答え
こうちやまそうしゅん
(正解率 59%)

1936年、山中貞雄監督。江戸時代に実在した河内山宗春を基にした快男児が主人公。もとは歌舞伎。かれんな甘酒売りを演じるのは9月に亡くなった原節子さん。

(2015年11月30日)

選択肢と回答割合

かわちやまむねとし 20%
かわちやまそうしゅん 22%
こうちやまそうしゅん 59%


驟雨

答え
しゅうう
(正解率 85%)

1956年、成瀬巳喜男監督。驟雨とはにわか雨のこと。原節子さんは所帯やつれした妻を演じる。貧乏好きな成瀬監督は「美しい原節子でさえも、台所に立たせないではいられない」と評論家の川本三郎さんは記す(岩波現代文庫「今ひとたびの戦後日本映画」)。なお12月1日は「映画の日」。

(2015年12月01日)

選択肢と回答割合

しゅうう 85%
しゅんう 10%
しゅう 5%


小早川家の秋

答え
こはやがわけのあき
(正解率 12%)

1961年、小津安二郎監督。「こばやかわ」ではない。「晩春」「麦秋」「東京物語」などと名作が続いた原節子さんの同監督作品への出演は、これが6本目で最後になった。

(2015年12月02日)

選択肢と回答割合

こばやかわけのあき 79%
こはやがわけのあき 12%
こばやがわけのあき 9%


君よ憤怒の河を渉れ

答え
きみよふんどのかわをわたれ
(正解率 31%)

1976年、佐藤純弥監督。高倉健主演。「憤怒」という言葉は「ふんぬ」とも「ふんど」とも読むが「ふんぬ」の方が一般的か。西村寿行の同名の原作小説は「ふんぬ」だが、映画タイトルでは「ふんど」とルビがある。

(2015年12月03日)

選択肢と回答割合

きみよいかりのかわをわたれ 4%
きみよふんどのかわをわたれ 31%
きみよふんぬのかわをわたれ 65%


四十七人の刺客

答え
しじゅうしちにんのしかく
(正解率 76%)

1994年、市川崑監督。高倉健主演。忠臣蔵の物語に謀略という新たな視点を加えた。吉良上野介が収賄をしていたといううわさは健さん演じる大石内蔵助が流したという解釈だ。

(2015年12月04日)

選択肢と回答割合

しじゅうしちにんのしかく 76%
しじゅうしちにんのしきゃく 11%
よんじゅうしちにんのしかく 13%


◇結果とテーマの解説

(2015年12月13日)

この週はすべて映画のタイトルでした。先日訃報が出た原節子さん(写真は「新しき土」)と、1年前に亡くなった高倉健さんの出演作です。

まず「河内山宗俊」ですが、毎日新聞に寄せられた映画評論家・山根貞男さんの追悼文から引用します。

冥福を祈るうち、あの独特の微笑を思い浮かべた。たとえば1953年の「東京物語」の終わり近く、義父に「あたくし狡(ずる)いんです」と言うシーン。にっこり笑うわけではないが、苦しい告白をする顔に、ほほえみが混じる。重要なシーンであるだけに不思議な印象をもたらす。あるいは36年の「河内山宗俊」の終盤。町娘が弟のため身売りする羽目になったとき、悩む表情に、うっすら笑みが混じるように見えて、より強く哀切さを訴える。

新聞でここを読んで「しまった」と思いました。その前に校閲した社説では「私ずるいんです」となっていたからです。「私」は常用漢字表の訓で「わたくし」か「わたし」の読みが当てられています。原節子さんが「あたくし」と言ったのなら社説の「私」は「あたくし」に直さなければならなかった、ということになります。また川本三郎さんの「今ひとたびの戦後日本映画」(岩波現代文庫)などにも「あたくし狡いんです」と引用されています。

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どうも映画の脚本で「あたくし」となっているので、そういう表記になることが多いようです。しかしDVDで確認すると、問題のシーンでははっきり「わたくし」と聞こえました。「わたくし」か「あたくし」かなんて、小さなことではないかと思われるかもしれません。が、ここは恐らく何百万の観客の涙を絞った、日本映画の珠玉というべきシーンです。「わたくし」と「あたくし」では微妙に(人によっては全く)印象が変わります。おろそかにできません。

「驟雨」は陰々滅々になる話が多い成瀬巳喜男監督にしては珍しく爽やかなラストが印象に残ります。出題時の解説にも少し引用しましたが、「今ひとたびの戦後日本映画」の「貧乏の好きな成瀬巳喜男」の章からもう少し紹介しましょう。

貧乏はむしろ、隠れ里のような静かな生活を保証してくれるサンクチュアリ(聖地)だったのではあるまいか

成瀬巳喜男は、貧乏を否定したり、貧乏から這い上がろうとしたり、貧乏を不幸だと考えたりしなかった、むしろ、貧乏を静かに受容した。そこから穏やかな気品が生まれた

「小早川家の秋」。原節子さんの訃報を受けたコラムで「こばやかわ」とルビがあったのを「こはやがわ」が正しいのではと指摘しました。新聞記事の校閲ではすぐ家に帰ってDVDで確認するということが難しいので、ネットで見られるポスターのルビを根拠にしました。実は本編では「こばやかわ」と言っているとしたら大失態だと内心ひやひやしましたが、後日DVDではっきり「こはやがわ」と複数の登場人物が発音しているのを確認したので安心しました。

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「君よ憤怒の河を渉れ」。これは原作と映画で読みが違うというまれな例です。小説では「ふんぬ」なので、「テーマ・映画」という前提さえなければ「ふんぬ」の方が正しいといえます。それにしてもなぜ映画では、わざわざタイトルにルビまで振って変えたのでしょう。事情をご存じの方があればお知らせ願います。

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「四十七人の刺客」の出題時「日本人はいつ頃から七を『なな』と言うようになったのでしょう」という疑問が寄せられました。難しい質問です。「なな」は和語なのでむしろ「しち」の方が後から入ってきた読みなのですが、漢語として数える習慣が定着し、例えば九九では「しち」で覚えます。しかし「四」「七」に関しては、「し」が「死」に通じること、「しち」は「いち」と紛らわしいことから昔から「よん」「なな」が根強かったと思われます。ただ「四十七士」に関しては「しじゅうしち」と読むのが常識だったはず。それが今「よんじゅうななし」とアナウンサーが思わず言って訂正したりするほどになったのは、忠臣蔵の物語があまりはやらなくなったのと無縁ではないでしょう。今年の12月14日もテレビでは特に赤穂浪士のドラマ・映画は用意されていないようです。「四十七人の刺客」や原節子さんの最後の出演作「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」をこの日に見たいと思う視聴者は少なくないと思うのですが……。

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