読めますか? テーマは〈終戦の詔書〉です。

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茲に

答え
ここに
(正解率 61%)

現在の場所、時点などをいう改まった言い方。昭和天皇が玉音放送で読み上げた終戦の詔書は「朕(ちん)深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク」で始まる。

(2015年08月17日)

選択肢と回答割合

ここに 61%
ただちに 16%
まさに 23%


爾臣民

答え
なんじしんみん
(正解率 51%)

「臣民」は旧憲法で天皇・皇族以外の者を指す。終戦の詔書には、天皇が国民に直接語りかけることを意識したためか「爾臣民」という言葉が5回使われている。しかし難しい漢語や文語体のため全体として意味が分かった人は少なかったという。

(2015年08月18日)

選択肢と回答割合

じしんみん 29%
なんじしんみん 51%
わがしんみん 21%


抑々

答え
そもそも
(正解率 64%)

終戦の詔書でポツダム宣言受諾を伝えた後に「抑々帝国臣民ノ康寧(こうねい)ヲ図リ万邦共栄ノ楽ヲ偕(とも)ニスルハ……」と続く。

(2015年08月19日)

選択肢と回答割合

しもじも 6%
そもそも 64%
やや 30%


五内

答え
ごだい
(正解率 74%)

「ごない」とも。「五臓」と同じことで、心臓・肝臓・肺臓、腎臓・脾臓(ひぞう)の五つの内臓を指す。終戦の詔書の中で「非命ニ斃(たお)レタル者及其ノ遺族ニ想(おもい)ヲ致セハ五内為(ため)ニ裂ク」とある。「思いがけない最期を遂げた者、またその遺族のことを考えると、身が引き裂かれる思いがする」との意味。

(2015年08月20日)

選択肢と回答割合

いつうち 10%
ごのうち 16%
ごだい 74%


趨く

答え
おもむく
(正解率 33%)

今は普通「赴く」と書く。「時運ノ趨(おもむ)ク所堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」の「堪え難きを堪え忍び難きを忍び」は終戦の詔書の中で最も有名なフレーズ。

(2015年08月21日)

選択肢と回答割合

あまねく 55%
おもむく 33%
とどく 12%


◇結果とテーマの解説

(2015年08月30日)

この週は「終戦の詔書」でした。「終戦の詔勅」という言い方もよくします。「詔勅」は「詔書」の他に「勅書」「勅語」を含んだ、天皇の命令・意思を伝える文書の総称だそうです。だからどちらでも間違いではありません。

「終戦の詔書」御署名原本=国立公文書館サイトから

それにしても難読語の多いこと。今の新聞などの日本語とは異質です。玉音放送を実際に聞いた人々もほとんどが何のことだか分からなかったと口をそろえます。ただし、読みも意味も分からない漢語はそれほど多くありません。今はふつう平仮名、あるいはもっと易しい漢字で書くものが多いことが読みにくくしているのであり、漢文の素養があれば見た目ほど難しくない文章といえるかもしれません。(宮内庁サイトのPDF版はこちら

今回の出題中「五内」は言葉自体なじみがないと思います。「五つの内臓、つまり五臓六腑(ろっぷ)の五臓と同じこと」と説明されないと、何のことやらさっぱりですね。それなのに正解率は最も高くなりました。これは「ごない」が選択肢になかったことが理由の一つと考えられます。「日本国語大辞典」(小学館)は空見出しとして「ごない」も掲げているから外したのです。また「内」を「だい」と読ませるのは「内裏」「参内」など天皇関係では珍しくないことも選択を容易にしたのでしょう。

その他はいずれも表記として難しいのであり、意味としては説明不要でしょう。「茲に」「抑々」は漢文の訓読として「ここに」「そもそも」と読ませますが、今は新聞だけではなく一般的にも平仮名。「なんじ」はこの言葉自体、現代語とはいえませんが漢字なら「爾」ではなく「汝」の方をよく見ます。

「おもむく」は新聞用語では「赴く」で、他に「趣く」という表記もありますが、常用漢字表は名詞の「趣=おもむき」は認めても動詞は認めていません。今回最も正解率が低くなった「趨く」は手近の国語辞典を調べた中では「大辞林」「学研国語大辞典」「講談社カラー版日本語大辞典」にしか見つかりませんでした。「堪え難きを堪え忍び難きを忍び」というあまりにも有名なフレーズに直結する文言でありながら「趨く」を採用していない辞書が多いということは、特殊な用字であることをうかがわせます。

半藤一利著「決定版 日本のいちばん長い日」(文春文庫)によると、閣議に提出された詔書案ではここは「義命の存する所」でした。「難解であるという理由」により「時運の趨く所」に変わったそうです。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)
半藤 一利
文藝春秋
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同書でその前の起草段階のところの「注」の中に「校閲」という言葉があるのが職業上目につきました。

開戦の詔書には文法的な誤りがあったということで、一層慎重を期し、漢学者川田瑞穂、安岡正篤の両氏が、用語、表現について協力した。(中略)ふたたび安岡正篤氏の校閲を経て、完成した

しかし閣議での修正案を改めて専門家が「校閲」したという記述は少なくとも同書にはありません。時間的に無理だったことがうかがわれます。ということは「趨く」という表記は、良くもあしくも、いわば「校閲を通さない」まま出た可能性があります。

いや、だからこの字が不適切というつもりはありません。まさか「趣く」の誤字だったわけでもないでしょう。ただその例とは離れて一般論としていうと、締め切り直前に修正を加えたところでは十分なチェックが働きにくいことを、校閲として身にしみているから気になったまでです。

第三者のチェック機能は、文章であれ国家の政策であれ、絶対に外してはならないと思います。

  戦後70年に当たり公開された玉音放送の原盤の音声

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