読めますか? テーマは〈手紙〉です。

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匆々

答え
そうそう
(正解率 61%)

手紙の「前略」に対しては最後に「草々」と受けることが多いが、「匆匆」「怱々(そうそう)」もある。ともに「あわただしい」さまを表す。きょうは「郵政記念日」。

(2015年04月20日)

選択肢と回答割合

そうそう 61%
ひんぴん 14%
もんもん 25%


答え
みぎり
(正解率 78%)

「頃」「折」と同じ意味。手紙の時候のあいさつで「陽春のみぎり」などと使うが、漢字はほとんど見ない。また「陽春の候」など「候」の方が主流。「性霊集」で空海の詩に「砌の中の円月(えんがつ)を見て」とあるのは「水際」の意味。

(2015年04月21日)

選択肢と回答割合

いしきり 14%
せつ 8%
みぎり 78%


時下

答え
じか
(正解率 76%)

「このごろ」という意味。手紙の初めのあいさつで「時下ますますご清栄のことと存じます」というのはビジネスなどの手紙の決まり文句。

(2015年04月22日)

選択肢と回答割合

じか 76%
じげ 21%
とっか 3%


小生

答え
しょうせい
(正解率 98%)

手紙などで男性がへりくだって使う自称。主に同輩以下の者に対し用いられる。最近見つかった谷崎潤一郎の娘あての手紙でも「小生が」と書かれている。先日亡くなった作家、白川道(とおる)さんも小紙の人生相談で「小生」を常用していた。

(2015年04月23日)

選択肢と回答割合

こしょう 2%
しょうしょう 0%
しょうせい 98%


貴翰拝誦

答え
きかんはいしょう
(正解率 55%)

「お手紙をお読みしました」ということ。返事の手紙の冒頭に使う。「貴翰」は「貴簡」とも書く。太宰治の「虚構の春」は、彼あての書簡を集めたという体裁の小説。この中で、「津島君」(太宰治)にあてた「井伏鱒二」の手紙の初めに出てくる。

(2015年04月24日)

選択肢と回答割合

きかんはいしょう 55%
きせんはいしょう 40%
きとくはいず 6%


◇結果とテーマの解説

(2015年05月03日)

この週は「手紙」がテーマでした。4月20日が「郵政記念日」ということにちなみます。飛脚に代わり郵政制度がスタートした日です。4月に新生活を始めた人がちょっと落ち着いたころ、これまでお世話になった人に近況報告を兼ねて感謝の手紙を出すのに絶妙のタイミングといえるでしょう。日本郵便は記念切手を出すだけでなく、その日に心のこもった手紙を出そうと宣伝してもいいのではないでしょうか。

さて「匆々」は前回のテーマ「畳語」の流れです。そうそう読めるものではないと思っていましたが、けっこう読めていますね。意外に見る機会があるのでしょうか。ところで手紙の初めの「冠省」を当初出題しようと思っていたのですが、やめました。ほとんどの辞書は「かんしょう」しか読みを記していないのですが、三省堂国語辞典は「かんせい」も認めているからです。

「砌」も漢字使用が少ない割に正解率は悪くなく、この週で最も難読だろうという予想は外れました。ツイッターで、名香智子さんの漫画「PARTNER」で覚えたという反応がありました。主人公の相手役の名前が「砌」だそうです。なるほど、正解者にその漫画の読者がどれほどいたか分かりませんが、一般語としては見たことがなくても固有名詞として使われていて覚えるということはありそうです。

「時下」は逆に予想より低い数字となりました。ビジネスマンではなくとも、業者からの手紙や、何かの告知で目にすることが多い決まり文句ですが、文字として見るだけで声に出して読まないため改めて漢字クイズとして出されると「もしかして、じげ?」と思った人が数字を下げたと思われます。

「小生」は最もよく読めています。もとは「後輩」の意味だったとか。自分を謙遜していう表現とされますが、いま目上の人に使うと、ふざけていると受け取られてしまうかもしれません。新明解国語辞典には「立場の上の人に対しては使わない」という注記があります。へりくだった言葉だったのが、今では時代がかって逆に尊大なイメージを与えてしまうのでしょうか。

この週で最も正解率が低くなったのは「貴翰拝誦」。「翰」も「誦」も常用漢字ではないので、新聞では「書翰」は「書簡」に、「暗誦」は「暗唱」に書き換えるなどしているのでほとんど紙面には出てきません。しかし、便箋を買おうとすると必ずといっていいほど「翰」の字は目にするはず。表に「書翰箋」と書かれた便箋です。だからなじみがなくはないはずですが、間違いの選択肢「きせんはいしょう」を選んだ人が多かった。その人々は「書翰箋」の「箋」の読みの方に引きずられたのではないでしょうか。

そういえば、「貴翰拝誦」を毎日新聞「週刊漢字」で出題した時、この語が出てくる太宰治「虚構の春」を「書簡小説」と解説に書きました。すると複数の同僚から「体」を入れ「書簡体小説」とした方がいいのではと指摘されました。たしかに「書簡体小説」という用語は定着し、辞書もそれしか載せていないと思います。それは分かっていましたが、あえて「書簡体」とはしませんでした。書簡体小説は「若きウェルテルの悩み」(ゲーテ)、「貧しき人々」(ドストエフスキー)、「あしながおじさん」(ウェブスター)など枚挙にいとまがありませんが、主人公が主な手紙の筆者というのは共通します。

ところが「虚構の春」は、主人公(太宰治本人)が書いた手紙は一つも登場せず、太宰治あてに書かれたさまざまな人々の手紙のみで構成されます。主人公は無言。しかし他者の手紙によって確実にその言動や心理状態が浮かび上がってきます。「貴翰拝誦」は井伏鱒二の手紙として出てきて「病気恢復(かいふく)のおもむきにてなによりのことと思います」と続きます。その前にも井伏鱒二の手紙があるのですが、いきなり「きょうは妙に心もとない手紙拝見」。「貴翰拝誦」よりよほど平易な言葉遣いですが、逆に太宰が切迫した状態だったことがうかがわれます。

このように型破りの小説「虚構の春」は既存の「書簡体小説」に収まり切れるものでないと思い、手紙そのものを並べたということから「書簡小説」と書きました。もっとも小説ですから、現実の手紙の文面そのままではないでしょう。「虚構」とタイトルにうたっていますし。でも案外、ほとんど現実の手紙のままかも。そういう想像をあれこれしたくなるのも、この小説が非凡なことを表しているのではないでしょうか。太宰治の代表作とはされませんが、才気がほとばしる画期的小説であるとはいえるでしょう。

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