読めますか? テーマは〈工芸〉です。
堆朱
答え
ついしゅ(正解率 35%)朱色の漆を厚く塗り重ねて、そこに模様を彫り込んだ工芸品。堆の字は訓で「うずたか(い)」、音読みで「堆積」のタイが知られているが、ツイとも読む。その少ない用例の一つが堆朱だ。黒い漆の場合は「堆黒(ついこく)」。
(2014年01月27日)
選択肢と回答割合
すいしゅ | 21% |
たいしゅ | 44% |
ついしゅ | 35% |
截金
答え
きりかね(正解率 39%)「切り金」などとも書く。金箔(きんぱく)、銀箔などをさまざまな形に細かく切り、これらを貼って文様を表す技法。平安時代に仏画や仏像の装飾として発展した。なお「切り金」には貨幣の一種や江戸時代の債務弁済の手続きを示す別の意味もあり「きりきん」「きりがね」などと読む。
(2014年01月28日)
選択肢と回答割合
きりかね | 39% |
せっきん | 16% |
たいきん | 45% |
七宝焼
答え
しっぽうやき(正解率 96%)金属工芸の技法の一つ。銅や銀などの下地にガラス質のうわぐすりを焼き付けて模様を描き出すもの。七宝は仏教でいう7種の宝物のこと。なお愛知県あま市に「七宝町」があり、七宝焼づくりが盛んだが、そこから「七宝焼」という名称が生まれたのではなく、逆に町名を七宝焼から取ったようだ。
(2014年01月29日)
選択肢と回答割合
しちほうやき | 4% |
しっぽうやき | 96% |
しっぽやき | 0% |
螺鈿
答え
らでん(正解率 82%)貝殻の真珠色に光る部分を漆器などに飾り付けたもの。海堂尊(かいどう・たける)さんの小説が原作のドラマ「チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮」に使われている。
(2014年01月30日)
選択肢と回答割合
らさい | 6% |
らせん | 12% |
らでん | 82% |
窯変
答え
ようへん(正解率 73%)陶磁器が窯で焼かれるうち、炎やうわぐすりなどの関係で、色や模様に予期せぬ変化が表れること。最近出た三省堂国語辞典第7版ではこれに加え「人やものが思わぬ変化を見せること」の用法も載せている。陶芸の世界で悠々自適だった細川護熙元首相は一転、東京都知事選に立候補した。まさに窯変か。
(2014年01月31日)
選択肢と回答割合
かまがえ | 20% |
かまへん | 6% |
ようへん | 73% |
◇結果とテーマの解説
(2014年02月09日)

曜変天目茶碗(藤田美術館蔵)
この週のテーマは「工芸」でした。
このジャンルは難しい漢字が多いのでいつでも出題できます。「堆朱」「截金」などは、陶芸展や人間国宝などのかつての記事から拾ったものです。
個人的な思い出で恐縮ですが、螺鈿という字と初めて出合ったのは高校2年の修学旅行の時でした。奈良でのグループ行動中、ちょっと時間があいたので入った市美術館で螺鈿の展覧会をやっていたのです。何と読むか分からず友達は「『らさい』じゃない?」と言っていたのですが、結局美術館の人に聞きました。
もう一つ、工芸関係で時事にからむ言葉はないだろうかと思っていろいろ探しているうちに見つけたのが「窯変」です。2014年1月に出た三省堂国語辞典第7版に次の語釈を発見し、「いいね」と思いました。
《②人やものが思わぬ変化を見せること。「俳句が―する」》
元首相の陶芸家が突然2014年の都知事選に立候補したことにぴたり結びつくではありませんか。
しかし「窯変=ものの思わぬ変化」は比喩としてわかりますが、「人」について使う例が辞書に載るほどあったのでしょうか。三省堂国語辞典の担当者、奥川健太郎さんに聞いてみました。以下の例などがあるそうです。
《そんな環境の〔=性から隔てられた大正中期の〕少女が文学的には早熟で、 恋愛や情事を早くから読み習ったのだから、身心に奇妙な窯変の起ったことは事実である》(円地文子「彩霧」=1976年)
《斎院が川原悠紀子を通して自分に憑(つ)いたのか、それとも老境に入った女の性が他眼(はため)には分らぬ窯変を起して、自分を別の女にしているのか》(同)
けっこう古くから使われていたのですね。出題者としては橋本治さんの「窯変源氏物語」(1991年)あたりから陶芸以外でも使われるようになったのかなと思っていたのですが。奥川さんによると「陶磁器の例に比較すると例が少ないことは否めません。しかし、日本語として不自然でないところから、普通の文章で使うことのできる用法と判断しました」ということです。
なお、調べた限りではこの用法を載せているのは三省堂国語辞典第7版しかありませんでした。さすがに新語や意味の変化に敏感な「三国」というところでしょう。