読めますか? テーマは〈日記〉です。

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「楮山」ヒロ子

答え
かじやま
(正解率 38%)

広島で1歳の時に被爆し、16歳で白血病のため亡くなった少女。死の1年前、日記に「あのいたいたしい産業奨励館だけがいつまでもおそるべき原爆を世にうったえてくれるだろうか」と記したことがきっかけで、産業奨励館、つまり原爆ドームの保存運動が盛り上がり、世界遺産登録へとつながった。楮の字は一般語としては「こうぞ」と読む。和紙の原料になる植物だ。

(2013年08月05日)

選択肢と回答割合

かじやま 38%
こうじやま 28%
はしやま 35%


閑間重松

答え
しずましげまつ
(正解率 49%)

井伏鱒二「黒い雨」の主人公。広島での被爆を記す日記がつづられる。モデルの一人となったのは「重松静馬」という人物で、その日記を含む「重松日記」が筑摩書房から刊行されている。

(2013年08月06日)

選択肢と回答割合

かんましげまつ 36%
しずましげまつ 49%
ひるましげまつ 15%


断腸亭日乗

答え
だんちょうていにちじょう
(正解率 74%)

作家、永井荷風が1917(大正6)年から59(昭和34)年までの42年間つけた日記。断腸亭は荷風の別号、日乗の「乗」は記録を表す。45年8月6日に「広嶋」の字がみえる(岩波文庫版)が、広島から帰った人から古本を借りたという記述なので、まだ原爆の情報は知らされておらず、不思議な偶然のようだ。

(2013年08月07日)

選択肢と回答割合

だんちょうていじつじょう 23%
だんちょうていにちじょう 74%
だんちょうていひのり 3%


仰臥漫録

答え
ぎょうがまんろく
(正解率 86%)

正岡子規が死の直前まで書き続けた日記。俳句もふんだんにあり、時々絵も入れている。「仰臥」はあおむけに寝ること。「臥(ふ)して見る秋海棠(しゅうかいどう)の木末(こずえ)かな」。秋海棠の別名は「断腸花」である。

(2013年08月08日)

選択肢と回答割合

おうぎまんろく 7%
ぎょうがまんろく 86%
ぎょうしんまんろく 7%


御堂関白記

答え
みどうかんぱくき
(正解率 96%)

藤原道長による現存する日本最古の自筆日記。御堂とは京都の法成寺(ほうじょうじ)の異称。道長が建立したことから道長は「御堂関白」といわれた。6月にユネスコの世界記憶遺産に選ばれた。上野の東京国立博物館で9月8日まで公開中。

(2013年08月09日)

選択肢と回答割合

おんどうかんぱくき 1%
ぎょどうかんぱくき 4%
みどうかんぱくき 96%


◇結果とテーマの解説

(2013年08月18日)

この週は、夏休みといえば「日記」ということで日記にまつわる固有名詞がテーマでした。

最も正解率が高かった「御堂関白記」からコメントしましょう。世界記憶遺産に登録されて日も浅いことで正解者が多かったのかもしれませんが、「御堂」という言葉は「御堂筋」など固有名詞ではよく使われますので、そちらの方が主な要因かもしれません。ちなみに「世界記憶遺産」は「世界記録遺産」と間違えられたことがありますので要注意です。

正岡子規の「仰臥漫録」で面白いのは、自分の世話をする妹律への言及です。「律は強情なり 人間に向って冷淡なり 特に男に向ってshyなり 彼は到底配偶者として世に立つ能(あた)わざるなり」「余は時として彼を殺さんと思ふほどに腹立つことあり」とさんざん非難しつつ、自分が死んだ後の律のことを心配しています。ところで律についての悪口で「言語同断」という文字があったのですが(岩波文庫版第17刷)、「言語道断」の間違いですね。現在発行のものは直っています。

「断腸亭日乗」の74%は思ったより低いと思いました。解説で断腸花が秋海棠(しゅうかいどう)の別名と記しましたが、それを知ったのは北村薫さんの「秋の花」(創元推理文庫)からです。女子高生の死の謎が解けたラストシーンで「人を思って泣く涙が落ち、そこから、生えたといいます」と語られます。何度読んでも泣ける名シーンだと思います。

「閑間重松」と「楮山ヒロ子」は8月6日の広島原爆にちなんだ人名です。

前者は井伏鱒二の「黒い雨」の主人公。題材が題材だけに重苦しい小説ですが、後半、日記の中でホオジロは何と言って鳴くかという愉快な雑談が出てきます。「一筆啓上ツカマツリ候と鳴くんだ」「私の郷里の頬白は、ベンケイ皿モテ来イ酢ヲ飲マショ、と鳴きます」「何だこら、もっと短く鳴け」「私が子供のときには、頬白は、チンチク二十八日、と鳴きました」「よし、それなら短てよろし」――敗戦直前でも、こういう会話がなされていたのですね。その場面のちょっと前に「ハラガヘッテハイクサガデキヌ」という落書きがあったと、やや反戦的なメッセージがありますが、それよりこういうちょっとした日常会話の記述に、教条主義に流れない井伏鱒二の真骨頂がうかがえます。

最も正解率の低い「楮山」という名前は、広島にいたときも目にした記憶がありません。楮をなぜ「かじ」と読むのか。思うに、楮(こうぞ)も梶(かじ)の木も和紙の原料になることから、混同されたのかもしれません。それはともかく、この人はふつうの女子高生で、作家でもないし、有名な小説のモデルでもありませんが、白血病により亡くなった彼女の日記が一つのきっかけになり、原爆ドームが保存されることになったということは、もっと知られるべきではないでしょうか。現在からみると、原爆ドームのない広島の姿は想像できません。しかし原爆ドームは1960年、取り壊されるという方針がありました。「取り壊せという市民の声が強く」「いつまでも不快な記憶を止めたくない」という考えが多かったようです(汐文社編集部「原爆ドーム物語」)。その流れを変えた一つが、原爆ドームに触れた彼女の日記でした。さて今、東日本大震災の遺構取り壊しのニュースが続きます。悲しい記憶を思い起こさせるという現在の痛みと、大震災があったことを端的に思い起こさせる場所がないという数十年先の未来と――その難しい選択をするうえで一つの材料を、原爆ドームの歴史は提供しているような気がします。
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