読めますか? テーマは〈春の七草〉です。
薺
答え
なずな(正解率 60%)春の七草の一つ。語源は一説に「撫(な)で菜」から。ペンペングサなどともいう。実が三味線のバチに似ていることから。「正月七日の朝、ナズナの香り立つ熱い七草粥(がゆ)を啜(すす)ると身も心も温まる思いがする」(ちくま学芸文庫「柳宗民の雑草ノオト」)
(2013年01月07日)
選択肢と回答割合
すずな | 18% |
すずしろ | 22% |
なずな | 60% |
菘
答え
すずな(正解率 44%)「鈴菜」とも書く。春の七草の一つ。カブのこと。春の七草はほとんど文字通り草だが、これとスズシロは根菜。ただし葉も食べられる。
(2013年01月08日)
選択肢と回答割合
すぎな | 28% |
すずな | 44% |
せり | 28% |
繁縷
答え
はこべら(正解率 62%)春の七草の一つ。「はこべ」とも読む。音読みでは「はんる」。「容易によく繁茂する上にその茎の中に一条の縷(いと)、すなわち維管束がある所からこの名が生れた」(牧野富太郎「植物記」ちくま学芸文庫)
(2013年01月09日)
選択肢と回答割合
すずしろ | 18% |
はこべら | 62% |
はしばみ | 21% |
蘿蔔
答え
すずしろ(正解率 40%)春の七草の一つ。音読みで「らふく」。ダイコンのこと。和名は「清白」とも書く。一説にスズナの代わりということでスズシロとなったという。なおダイコンは古代には大根(おおね)といったが、中世ごろから音読みするようになったらしい。
(2013年01月10日)
選択肢と回答割合
すずしろ | 40% |
はこべら | 54% |
ぶどう | 6% |
御形
答え
おぎょう(正解率 42%)春に黄色い小花をたくさんつける。ハハコグサ(ホウコグサ)ともいう。一般に春の七草としてはゴギョウとよくいわれるが、もとはオギョウで、植物学者の牧野富太郎によると「ゴギョウというのはよくない」(ちくま学芸文庫「植物記」)という。
(2013年01月11日)
選択肢と回答割合
おぎょう | 42% |
ぎょぎょう | 20% |
ほとけのざ | 37% |
◇結果とテーマの解説
(2013年01月20日)
この週のテーマは「春の七草」でした。あとの二つは「芹」「仏の座」です。
こうしてみると春の七草は難読漢字が多いですね。秋の七草は萩、尾花、桔梗、藤袴など比較的読みやすく、以前出した「読めますか?」でも「撫子」97%、「葛」93%、「女郎花」80%でした。
全体的に3択の割合が分散していることからも、春の七草の漢字が難しいことがうかがえます。テーマが強力なヒントになるはずですが、七草のうちのどれなのかが分かりにくいのです。ふつう仮名書きされるので無理もありませんが。
今回の中で唯一常用漢字である「御形」が40%という低率なのが象徴的です。「ごぎょう」では簡単すぎると思い、元の名称とされる「おぎょう」を正解としましたが、「ごぎょう」が選択肢にないことが混乱を招いたのでしょう。「ほとけのざ」にも37%という回答が集まりました。
「菘」の場合、「すぎな」「せり」の誤答が28%ずつ。スギナは春の七草でなくツクシの成長した姿です。
今回最も正解率が高かったのは「繁縷」62%で、漢字の難しさの割には予想外に高かったといえます。しかし、その翌日「蘿蔔」を出したら「はこべら」の誤りが過半数に達し、正解率は逆に最も低くなりました。違う漢字なのに同じ答えをしてしまった人が多かったのでしょうか。だとしたら、「繁縷」の正解率にも3択ゆえのまぐれ当たりが含まれていることが推測されます。
ところで「薺」の出題後、このようなツイートをいただきました。「七草なずな♪ のハヤシ歌に出てくる、トウドノトリというのは中国から飛んでくる唐土の鳥で、いわゆる流行性感冒、流行り風邪のことをさすらしい」
「七草なずな」は七草がゆを作るときのはやし歌で「唐土の鳥が日本の国へ渡らぬ先に」などと歌われます。出題者は聞いた記憶がなかったのですが、今回聞き「なんだか怖い歌」という印象を持ちました。
七草がゆは元々単に正月の飲み食いで疲れた胃を休めたり無病息災を祈ったりするというだけでなく、邪気を払う意味合いがあったということです。この歌にもそういう呪術的な気持ちがこもっているのかもしれません。ただ、「唐土の鳥」が流行性感冒のことを指しているという説がそれなりに裏付けのあるものなのか、単なるうわさの域を出ないのか、現在確認中です。ネットでなく文献でみたなどの情報があればぜひお寄せください。
ちなみに、鈴木棠三「日本年中行事辞典」(角川書店)によると、「七草ばやしの歌に唐土の鳥とあるのは、鬼車鳥という鳥であるとの俗説」があるとのことで「人の爪を拾って食うというので、夜爪を切らぬものなどの禁忌がある。これが転じたものが『姑獲鳥(うぶめ)』という怪鳥だともいわれる」。なんと、京極夏彦さんの小説「姑獲鳥の夏」で有名になった妖怪がこんなところに。爪切りとの関わりも俗信とはいえ面白いですね。