読めますか? テーマは〈ウリ〉です。
瓜田に履を納れず
(2012年08月20日)
選択肢と回答割合
うりたにおおいをいれず | 14% |
かでんにくつをいれず | 74% |
がでんにふくをいれず | 12% |
蔓茘枝
(2012年08月21日)
選択肢と回答割合
つたうりえ | 3% |
つるれいし | 44% |
らいち | 52% |
水瓜
(2012年08月22日)
選択肢と回答割合
すいか | 38% |
しろうり | 11% |
めろん | 52% |
三毛門南瓜
(2012年08月23日)
選択肢と回答割合
さんもうもんなんか | 2% |
みけかどかぼちゃ | 72% |
みけもんなんきん | 26% |
冬瓜
(2012年08月24日)
選択肢と回答割合
おそうり | 0% |
とうがん | 95% |
とうり | 5% |
◇結果とテーマの解説
(2012年09月02日)
この週は「ウリ」がテーマ。
ウリは万葉集で山上憶良が「瓜食(は)めば子ども思ほゆ」とうたったように、古くから日本人になじみ深い食べ物です。漢字の問題としても事欠かず、ここに挙げた五つだけでなく、「糸瓜」も以前「正岡子規」のテーマで出題しています。
糸瓜についてはこんな語源説があります。江戸時代の俳人、越谷吾山の「物類称呼」(1775年刊)は、元は「いとうり」の上を略し「とうり」といったと述べたうえで「或人の曰(あるひとのいわく)」と続けます。「へちまといふ名は とうり より出たり 其故(そのゆえ)は とうり の と の字はいろはの へ の字と ち の字の間なれば へち の間 といふ意にて へちま となつくる」(岩波文庫)
広辞苑でも触れられている説ですが、いささか出来過ぎの感があり、国語学者には受け入れられていないようです。大槻文彦は明治時代の辞書「言海」で「強牽ナラム」(こじつけだろう)とばっさり。金田一春彦さんも「あてにならない語源説」(「ことばの歳時記」新潮文庫)としています。しかし、ではなぜ「へちま」になったのか、これといった定説はないようです。
さて今回の漢字ですが、もっとも正解率が低かったのが「水瓜」とは予想外でした。「西瓜」だとやさしすぎるので、「言海」では第1表記のこの漢字にしたのですが、今ではほとんど使われなくなったことが、この数字からうかがえます。
「蔓茘枝」も正解が半数以下。ニガウリの別名としては「ゴーヤー」が一般的になり、ツルレイシなんて誰もいわなくなったためでしょう。ちなみに「ゴーヤー」か「ゴーヤ」かが分かれるため、毎日新聞では「ゴーヤー」に統一しました。沖縄では「ゴーヤー」に強いこだわりを持つ人が多いようです。
「三毛門南瓜」は「南瓜」だけだと簡単すぎると思って産地名を付けました。ところで「なんきん」というカボチャの別名について、こんなツイートをいただきました。「南京錠、南京豆等の単語を考えると南京は中国の代名詞みたい。どうして『南京』でしょうね」
本当に、どうしてでしょう。「日本国語大辞典」には「南京」は「近世、このあたりの地一帯、ひいては中国のことをもいった」とありますが、なぜ中国の代名詞となったかは記されていません。想像の域を出ませんが、江戸時代は日本との交易は主に南京を通してだったので、日本では舶来の珍しい品に「南京」をつけるようになったのではないでしょうか。カボチャが南京産だったという証拠も見いだせません。単に「南の方から来た」というイメージだけで「南京」と言われるようになったと思われます。
しかし、「南京豆」「南京錠」も最近あまり聞かなくなりましたし、共通語化が進んだ今はカボチャのことを「南京」と言う人も少なくなっているのではないでしょうか。
時代が変われば名称も変わります。ゴーヤーのように沖縄方言が勢力を拡大する例がある一方、死語となる言葉も数限りありません。そういえば「言海」では「南瓜」はポルトガル語に由来する「ボウブラ」を見出し語にしています。そのうえで「京ニテハ、誤リテ、かぼちゃトイフ。大坂にて、ナンキン」とあります。言葉の栄枯盛衰がうかがえますね。