「見える化」をどう感じるかという質問に「気になるが、定着している」と答えた人がほぼ半数。他の回答も合わせると8割が「定着」と認識しています。ただし「気になる」人の割合も6割で、安易に使うと違和感を持たれる言葉とも言えます。

「見える化」という言葉について伺いました。

8割は「定着」と認識

仕事の進み具合などを見て分かるようにすることを「見える化」と言うことがありますが、この言葉をどう感じますか?
気にならない。定着している 29.3%
気にならないが、定着したとは言えない 8.5%
気になるが、定着している 49.5%
気になる。定着したとは言えない 12.8%

 

「見える化」という言葉をどう感じるかという質問には、「気になるが、定着している」と答えた人がほぼ半数にのぼり最多でした。「気にならない。定着している」と答えた人も3割近くで、合わせてほぼ8割が定着していると考えているようです。

「気になる」人も6割超

回答を「気になる/気にならない」「定着している/したとは言えない」で分類し直すと、以下のようになります。

・定着している 78.8%/定着したとは言えない 21.3%
・気になる 62.3%/気にならない 37.8%

「気になる」という人が6割を超えており、定着したと見なされてはいるものの、必ずしも好感を持たれる言葉ではない、と言えそうです。

先ごろ公表された2021年度の文化庁「国語に関する世論調査」では、「他の人が使うと気になりますか」という問い方で「見える化」について尋ねています。その結果は「気になる 40.3%/気にならない 56.3%」。今回のアンケートより気になる人の割合は小さいものの、やはり一定数の人にとっては気になる言葉であることが示されています。

トヨタ自動車から広まった語

「見える化」は元々、トヨタ自動車の社内用語に由来すると言われます。それ自体が他所からの流用なのかは分かりませんが、経営用語として使われ出したことと、トヨタから広まったことは間違いなさそうです。回答から見られる解説でも書きましたが、毎日新聞での初出は2004年。これは経営者の言葉として掲載されたものです。

国語世論調査で「気になる」と答えた人の割合は、年代別だと10代(60.8%)と70歳以上(52.9%)で多くなっています。新しい言葉であると同時に、経営というオトナの世界に属する言葉であるということがにじむ結果だろうと思います。

校閲センターのツイッターでは、「見える化」が気になるとみられる人から、「可視化」と言えばよいだろう、という声が寄せられました。ただし「可視化」も、そう古くから使われている言葉ではありません。国会会議録検索システムでの初出は1988年。その時も「カシカ」では分かりにくいと感じたのか、発言者は「ビジブルにする」と言い直しています。毎日新聞での初出も1993年で、決して古くからなじみのある言葉ではありません。もっとも、「動詞+化」の形である「見える化」が普通の語形でないのに比べれば「可視化」は形としての違和感はなく、「見える化」が気になる人はこちらで代替するのがよさそうです。

首相の演説にも登場

「公的価格においても(中略)見える化を行いながら、看護、介護、保育をはじめ、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減を進めます」――これは10月の臨時国会冒頭、岸田文雄首相の所信表明演説の言葉です。ことほどさように「見える化」は定着している、とは言えるでしょう。今回のアンケートの結果を見ても、もはや避けて通れる言葉ではなさそうです。

とはいえ、国語世論調査と併せ見ても、「気になる」人が半数前後いるというのも確かです。「見える化」を使わなければ話が進みにくい、といった特段の事情があるのでないかぎり、普通は「可視化」ないし「見えるようにする」などと別の言い回しを用いる方が違和感を与えにくい、ということは心得ておくのがよいでしょう。

(2022年10月27日)

質問に際して

2022年度の文化庁「国語に関する世論調査」の結果が公表されました。校閲記者にとっては毎年、話の種を提供してくれるありがたいものですが、今回はその中で出てきた「見える化」を取り上げます。この言葉を他の人が使うことについて「気になる」とした人の割合が40.3%あり、意外に多いと感じたためです。▲意味としては「実態や情報などを客観的に把握できるように視覚化すること。可視化」(明鏡国語辞典3版)。「見える」ようにするというのは、そんなに一生懸命見なくても目に入るようにするということ。もともとは経営用語のようで、毎日新聞での初出も2004年の「新春 経営トップの言葉」という記事に出てくるものでした。▲動詞に「化」をつけて「○○化」とする単語は他に見られず、語形としては本来違和感のあるものですが、意味が分かりにくいわけではありません。もはや定着したかと考えていましたが、国語世論調査の結果は「気になる」人が一定数あることを示しています。出題者も「私の苦手な言葉です」という感じはあり、この場でも伺ってみることにしました。いかがでしょうか。

(2022年10月10日)

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