災害時などに買い物客が殺到し、品物が棚から消える現象をどう呼ぶかは、「買い占め」を選んだ人が4割、「買いだめ」が3割、「どちらも当てはまらない」が3割と回答は割れました。誰もが納得できるぴったりの表現を探すのは難しそうです。

災害時などに人々がお店で物を多く買い込むことをどう表現するか伺いました。

「買い占め」が4割、「買いだめ」が3割

生活必需品の品薄で人々が店に殺到、我先にと食料などを買い込む――どう表現しますか?
買い占め 42.4%
買いだめ 29.7%
上のどちらも当てはまらない 27.8%

 

「買い占め」を選んだ人が4割、「買いだめ」を選んだ人が3割、「どちらも当てはまらない」という人が3割と回答は割れました。誰もが納得できるぴったりの表現を探すのは難しそうです。

「ひとり占め」でなくても「買い占め」?

「買い占め」は「必要以上に買い集めて利益をはかること。買い取ってひとり占めにすること」(岩波国語辞典8版)。それなのに新聞原稿で、地震直後にスーパーなどから水や食料がなくなる現象を「買い占め」と表現しているのを読んで「これって買い占めなの?」と思ったことがアンケートのきっかけでした。

マスコミの用語懇談会で各社に意見を聞いてみたところ、「本来の意味から多少ずれるかもしれない『買い占め』を使うことで、品薄状態や焦燥感を表現する」「とにかく我先に、手に入れられるだけ手に入れようとする行動態様を強調する際には『買い占め』を許容してもいいのでは」という意見がありました。

また「『買いだめ』には計画性がともなう面もある」ため冷静な行動に見え、「『人々があちこちの店に走って買い回る』という意味合いが出てこない」ため、ぴったりの言い換えだとは言いにくいという指摘もありました。実際に人々が取っている行動としては「買いだめ」のほうが近いのですが、状況を描写するのにはふさわしくないと感じられるようです。

「買い占め」がにじませる批判

もう一点、出題者が重要だと感じたのは「『買い占め』ということばにはやや悪いイメージがある」「『買いだめ』では批判的な意味が含まれているのか分かりにくくなる」という意見。確かに先ほどの辞書の説明に「利益をはかる」「ひとり占め」とあるように、「買い占め」は自分勝手な印象のある言葉です。

実際にお店で自分より先に並んでいた人が大量に買い込み品切れになってしまった場合。「あいつ、他の人が買えるはずだった分まで買っていきやがって!」という怒りを表すなら、確かに「買いだめしやがって!」とは言わず「買い占めやがって!」となるでしょう。

文脈に応じて使い分けたい

以上のことから考えると、文脈に応じて、また何を描写したいのかに応じて、表現を選ぶのがよさそうです。

単に「多めに買っておこう」という個人の行動に焦点を当てているのであれば「買いだめ」でよいでしょう。しかしそれが多くの人の行動になった一種のパニック状態を表現するのであれば「買い占め」の方がしっくりきます。

さらに個人の行為についても、値上がりしたところでの転売をもくろんでいる場合や、あまりに非合理的な分量を買い込んでいる場合、批判的に「買い占め」と表現してよいでしょう。

ちなみに東京都が2022年5月に発表した、首都直下地震が起きた際に予想されるシナリオでは、「過剰な購買や買い占めにより生活必需品の品薄状態」が予想されるとのこと。客観的に見た表現としてはこの「過剰な購買」も使えるかもしれません。

(2022年08月04日)

質問に際して

今やどこのドラッグストアでもマスクが山積みです。しかし新型コロナウイルスの流行開始当初は品薄で、求める人が店舗に押し寄せる事態に。こうした行動について「買い占め」と表現する記事をよく見かけました。▲買い占めとは「必要以上に買い集めて利益をはかること。買い取ってひとり占めにすること」(岩波国語辞典8版)。店に殺到しての大量買いについては、転売してもうけようという人以外にはぴったりではないように思えます。▲対して買いだめは「品物の不足や値上がりに備えて、品物をたくさん買ってためておくこと」(三省堂国語辞典8版)。意味としてはこちらのほうが近い気がしますが、店頭での混乱ぶりをこのような冷静な言葉で表現できるのかという問題もあります。読者の皆さんは、どちらのほうがしっくりくるでしょうか。それともさらに別の表現を考えた方がよいのでしょうか。

(2022年07月18日)

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