「洋数字」「算用数字」「アラビア数字」はいずれも同じ数字表記を指す呼称ですが、アンケートでは「洋数字」は驚くほどの低支持率でした。算用数字、アラビア数字にも問題点はありますが、「洋数字」の使用がためらわれる結果ではあります。

漢数字に対して0,1、2などの数字を何と呼ぶかうかがいました。

「アラビア」と「算用」が伯仲

漢数字に対して「0、1、2、3…」のような数字は何といいますか?
洋数字 3.6%
算用数字 45.4%
アラビア数字 51.1%

 

結果はご覧の通り「アラビア数字」が最多で、「算用数字」と合わせると9割以上になりました。それより驚きだったのは「洋数字」の少なさです。

毎日新聞は社告などで「洋数字」

毎日新聞は1996年4月1日付で、数字の表記を変えました。同日の1面に「漢数字が原則だった数字の表記をきょうから洋数字に変えます」という社告を出しています。

1996年4月1日付毎日新聞朝刊より

これは少なくとも大手の新聞では初めての試みであり、その後朝日、読売などが追随しました。それはともかく漢数字との書き分けの基準や用例を決めるのは大変な作業で、社内の用語委員会で「この場合は漢数字?」「この場合は洋数字?」と議論を重ねていたことが思い出されます。

しかしこの「洋数字」という呼称が一般的かどうかは検討された記憶がなく、社告も「洋数字」と記載されました。その後もこの呼称は多くの記事で使われています。

辞書には「インド数字」も

今さらではありますが、辞書の扱いを調べてみました。

【広辞苑7版】
洋数字:アラビア数字に同じ。 
算用数字:筆算に使用する数字。アラビア数字。
アラビア数字:(インドに始まってアラビア人がヨーロッパに伝えたからという)0・1・2・3…9の数字。インド数字。算用数字。

【大辞泉2版】
洋数字:⇒アラビア数字
算用数字:筆算に使用する数字。0、1、2、3、4、5、6、7、8、9の10種のアラビア数字のこと。
アラビア数字:0123…9の10個の数字。インドで考案され、アラビアを経てヨーロッパに伝わった。インド数字。算用数字。

【三省堂国語辞典8版】
洋数字:⇒アラビア数字
算用数字:⇒アラビア数字
アラビア数字:0・1・2など、計算などでふつうに使われている数字。算用数字。洋数字。

【新明解国語辞典8版】
洋数字:⇒アラビア数字
算用数字:〔漢数字に対して〕アラビア数字。〔実用計算に用い(得)る数字の意〕
アラビア数字:〔正しくは、「インド・アラビア数字」〕アラビア人がインド人から受け継いで中世ヨーロッパに伝えた十進位取り記数法に用いる十個の数字。算用数字。洋数字。〔今日、計算に普通用いられる〕

【新選国語辞典10版】
洋数字:アラビア数字。
算用数字:アラビア数字。0・1・2・3…9など。
アラビア数字:アラビア人がインド人からうけついでヨーロッパにつたえた数字。今の算用数字。

【岩波国語辞典8版】
洋数字:立項せず
算用数字:→アラビアすうじ
アラビア数字:数式や横書きに使う数字。算用数字。▽インド人が考え出したのをアラビア人がヨーロッパに伝えた。

【明鏡国語辞典3版】
洋数字:立項せず
算用数字:筆算に用いる数字。アラビア数字。
アラビア数字:0・1・2・3・4・5・6・7・8・9の一〇の文字。インド人が考案してアラビア人が欧州に伝えた。インド数字。算用数字。Arabic numerals の訳語。

「洋数字」はいわゆる空見出しにして「アラビア数字」に導くのが主流で、岩波、明鏡に至っては、立項はおろか別の語の同義語扱いさえしていません。どうも「洋数字」というのは一部でしか使われず、一種の業界用語ではないかという気がしてきました。一般の人にとって意味不明な業界用語とは違いますが、これだけ低い支持率を目にすると使用をためらわざるを得ません。

「算用数字」が無難ですが…

ただし、その代わりに何がベストかというと「算用数字」「アラビア数字」のいずれも問題なしとしません。多くの辞書が「洋数字」を「アラビア数字」へと誘導していますが、考案された場所をいうのであれば「インド数字」が適切なのです。また、「算用数字」は筆算に使うなどと説明されていますが、江戸時代の和算でも筆算があったはずという指摘があります。

出題者は問題点をふまえても「算用数字」が一番無難と考えます。ツイッターの書き込みでも「『他人に伝わる』ことを前提にして考えた場合『算用数字』がベターだと思う」という意見がありました。

とはいうものの、自分の文章ならともかく校閲作業で「洋数字」が出てくれば「算用数字」に直すかといえば、悩ましいところです。できれば筆者の皆さんが執筆時にこのアンケートも参考にして判断していただければと思うのです。

(2022年04月28日)

質問に際して

今年の1月に、文化審議会は「公用文作成の考え方」を建議、発表しました。これは「政府内における公用文作成の手引」であり、一般の人が書く場合にそれに従わなければならないということはありません。ただし新聞と同じ方針も多く、表記で困った場合の一つの参考になりそうです。▲たとえば「1つ」「2つ」ではなく「一つ」「二つ」、「数10人」ではなく「数十人」と書くなどは大方の新聞と共通します。ところで建議の文書には「1,2、3」などの数字は「算用数字」と表記されています。しかし少なくとも毎日新聞社の校閲や編集の現場では「洋数字」と言い習わされ、毎日新聞用語集でも「洋数字」と書かれています。一方、この「毎日ことば」で「洋数字」と書くと「アラビア数字」だというコメントをいただくことがあります。▲毎日新聞は算用数字を基本とする表記なので、漢数字との使い分けにはいつも悩まされているのですが、「算用数字か洋数字かアラビア数字か」という呼称問題は本格的に議論したことがありませんでした。三つとも正しい呼び方で、統一しなければ混乱するというようなことはないと思われますが、はたして一般的にはどれがなじみやすいのでしょう。

(2022年04月11日)

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