「並々ならない」との言い方になじみがあるかを伺う質問でしたが、「並々ならぬ」のみを使う人が8割超で、浸透した言い方はこちらであることがはっきりしました。文語の形容動詞と口語の助動詞を組み合わせた形は、やはりおかしいようです。

「並々ならない」という言い回しについて伺いました。

「並々ならぬ」が8割超す

「一通りでない覚悟」のことですが――どう言いますか?
並々ならない覚悟 4.5%
並々ならぬ覚悟 84.8%
上のいずれも言う 10.7%

 

「並々ならない」という言い方になじみがあるかを伺う質問でしたが、「並々ならぬ」のみを使う人が8割を超え、一般的に浸透した言い方はこちらであることがはっきりしました。文語の否定の助動詞「ず」(「ぬ」はその活用形)は口語では「ない」となりますが、「並々ならない」はやはりなじめない形のようです。

「並々ならぬ」で連体詞とも

国語辞典の多くは「並々」(辞書の多くは「並並」と表記)の項目を設けて「なみひととおりであること。また、そのさま。多く、打消しの語を伴って用いる」(大辞泉2版)のように説明し、用例で「並々ならぬ苦労」などと、「並々ならぬ」という形が用いられることを示しています。

一方、この形で項目を立てている辞書もあり、明鏡国語辞典(3版)は連体詞として「並々ならぬ」を載せています。連体詞は体言(名詞)を修飾する、活用しない(動詞などのように形が変わることのない)言葉で、「この」「その」などの指示語も連体詞です。三省堂現代新国語辞典(6版)も「並々ならぬ」で項目を立てており、「並々ならない」となる余地はなさそうです。

生き延びる文語の形

「~ならぬ」という言い方は文語のものですが、こうした用法は今でも口語に交じって使われます。明鏡にはほかにも連体詞として「時ならぬ」「ほかならぬ」「ひとかたならぬ」といった語が採録されています。「ほかならない」と言うことはできますが、名詞にかぶせる場合には「ほかならぬ」が定型だと考えられているようです。

また、小学館「全文全訳古語辞典」で「並々」は、名詞と同時に「形容動詞ナリ活用」として記載されています。つまり「並々ならぬ」は形容動詞「並々なり」の未然形「並々なら」に、文語の助動詞「ず」の連体形「ぬ」を合わせたものです。このうち助動詞だけを口語にして「並々ならない」とするのはやはりおかしく感じられます。「油断(が)ならない」のような、動詞「なる」の未然形「なら」+助動詞「ない」の形に引っ張られたものかもしれません。

口語なら「並々でない」に

今回のアンケートの結果から見ても、「並々ならない」という言い方を使うのはよした方がよさそうです。口語の場合、形容動詞を否定の形にすると「並々でない」となります。「並々ならぬ」か「並々でない」のいずれかを使うことをおすすめします。

(2022年03月29日)

質問に際して

記事中に出てきた「並々ならない覚悟」という言い回しに、ゲラに線を引く手が止まりました。普通は「並々ならぬ」とするところではなかろうか、と感じたからです。これを現代風にすると「並々ならない」になる? いや、それはどうでしょうか。▲似たような語には「時ならぬ」などがあります。例えば春になってから「時ならぬ(=時期外れの、思いがけない)大雪で往生した」などと使いますが、これを「時ならない大雪」とは言わないでしょう。▲「並々ならぬ」に戻ると、この形で連体詞としている国語辞典も見かけます。また「並々」で名詞・形容動詞としている辞書でも、例文を見ると「並々ならぬ努力の結果」とあります。「並々でない」という形も見かけますが、「並々ならない」は見かけませんでした。やはり大勢は「並々ならぬ」にあると思うのですが、皆さんはどう感じるでしょうか。

(2022年03月10日)

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