「並大抵」を含む文をどんな形で結ぶかとの質問には、否定の形のみをよしとした人が8割近くでした。「並」「大抵」という似た言葉を重ねた強調語。否定の形で使うことで「普通ではない」ということを強めるのが普通の使い方と言えそうです。

「並大抵」という言葉をどのような述語で受けるか伺いました。

肯定文でもよしとする人は2割強

この強さなら並大抵の相手に「○○」――カギの中、何を入れますか?
勝てる 15.7%
負けない 76.7%
上のどちらでもよい 7.7%

 

「並大抵」を含む文をどんな形で結ぶかという質問に、否定の形のみをよしとした人が8割近くを占めました。半面、肯定文をよしとした人が2割を超えたことには少し驚いています。

「多く打ち消しを伴う」とされる

まず「並大抵」についての国語辞典の典型的な説明を引くと「普通の程度であるさま。ひととおり。『並大抵の苦労ではない』『彼の地の寒さは並大抵でない』▼多く下に打ち消しを伴う」(明鏡国語辞典3版)というところでしょうか。「多く下に打ち消しを伴う」の「多く」が気になるところ。文字通りに受け止めれば、打ち消しを伴わない場合も少しはある、ということになります。

それでは実際に、「並大抵」が打ち消しや否定的な表現との組み合わせなしに使われることはあるのでしょうか。現代日本語書き言葉均衡コーパス「少納言」を見てみると、「並大抵」でヒットする記事は119件。うち、否定的な表現をともなわないものは1件ありましたが、表示される部分では文意が通らず、内容を確認できませんでした。他は全て「並大抵ではない」「並大抵のことではない」のように、否定的な表現につながるものばかりでした。

青空文庫を検索してみると「並大抵の者ならば、驚いて慌てて逃げ出すべきであるが、重蔵は頗る大胆であった」(岡本綺堂「飛驒の怪談」)という用例がありました。この「並大抵」は「大抵」や「一通り」と置き換えてよいもので、肯定の形で受けることもできそうです。ただし、青空文庫でもこうした例はほとんどなく、一般的な用法とは言いにくいようです。

「否定が来る」と言い切る辞書も

三省堂国語辞典8版は「並大抵」の項目で、「多くは」という留保なしで、単に「後ろに否定が来る」と説明しています。現状での一般的な用法は否定の形だと判断しているようです。新選国語辞典10版も「下に打ち消しの言い方がくる」ときっぱり。質問文のような場合も「勝てない」で受けるのが普通である、ということになるでしょうか。

今回のアンケートの結果としては、2割強の人が、「並大抵」から肯定の形に続く場合も「あり」だと判断しています。辞書の説明からいえば「普通の程度」という意味なので、「並」「大抵」それぞれを個別に使ったときと同じように使うこともできるのは理解できます。

しかし、「並大抵」という言葉が似た意味の言葉を重ねた強調語であるだけに、「並大抵のことではない」「並大抵の相手には負けない」というような使い方で、「めったにないことだ」「ほとんどの相手には勝てる」ということを際立たせる働きを持たせているのだと考えられます。肯定の形で使うことが必ずしも不可ではないにせよ、一般的には否定の形が使われるということには留意したい表現だと言えるでしょう。

(2022年03月08日)

質問に際して

子ども向け雑誌の付録の紹介を読んでいて、気になる部分がありました。カードゲームの特典カードなのですが「並大抵の相手を一撃で倒せる」とあり――おお、すごく強いのか!ということではなく、「並大抵」を「倒せる」という肯定の形で受けるのが引っかかったのでした。▲「並大抵」は「普通の程度であるさま。並であるさま。平凡。多く下に打消の語を伴って用いる」(日本国語大辞典2版)と説明されるように、意味としては「並」とほぼ同じ。ただし、打ち消しの表現を伴うことが多い言葉で、質問文の場合も通常は「勝てる」ではなく「負けない」で受けるのではないでしょうか。毎日新聞の過去記事を見ても、最近の使用例50件はすべて「並大抵のことではない」など、打ち消しの表現を伴うものでした。▲もっとも、質問文のような例であっても、「並」を外して「大抵の相手に~」とするなら、「勝てる」「負けない」の両方で受けることができそうです。そう考えると、この質問は「並大抵」を「大抵」と同じように使うかどうか、という問いなのかもしれません。皆さんはいかがでしょうか。

(2022年02月17日)

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