他動詞としての「香る」の用法について、すんなり受け入れる人は1割強でしたが、「業界用語」と捉える人も含めると半数近くが言い換えまでは求めないという結果でした。「嗅ぐ」よりも好印象を与える言葉として使われているものでしょうか。

「香る」を他動詞として使う用法について伺いました。

半数近くは「言い換え不要」

香水のお店で「ぜひ香ってみてください」と言われたら……
違和感はない。素直に香る 11.3%
「嗅ぐ」の業界用語かな、と思う 35.7%
違和感があり、別の言い方をしてほしい 53%

 

「素直に香る」人は1割でしたが、「業界用語」と捉えて許容する人を含めると半数近くに通用する表現だといえそうです。かなり限られた場所での用法だと思っていたため割合に少し驚きましたが、もし実際に耳にしたことがないとしても、意図が伝わりやすい言葉なので納得です。

本来「香る」は自動詞だが…

この問題を作成するにあたり職場にある辞書を片端から引いたのですが、「香る」はいずれも「自動詞」との位置づけでした。つまり「香水が香る」ならば、香水自体が香りを発していることを表すため用法として正しいのです。しかしこの例文の場合は「香水『を』香る」となり、「香る」は他動詞的に使われています。

仮に文法的に正しく言い換えるならば「香りを嗅いでみてください」(嗅ぐ=他動詞)、「香りをお確かめになってください」(確かめる=他動詞)などでしょうか。「香水」や「香り」という目的語がある限り、続く動作にはどうしても他動詞を使用するほかありません。

「嗅ぐ」より「香る」が好印象か

個人的な印象ですが、「嗅ぐ」というと対象物に自分から鼻を近づけてクンクンやるイメージがあります。ちょっと無粋かな?なんて印象も。対して「香る」は、ただよってくる香りを受け止めるような、やや受け身な印象です。香水・化粧品などの華やかな売り場で、シンプルながら少しでも優雅な印象を——と思案した結果このような用法が生まれたのかもしれません……というのは出題者の想像ですが、そんなふうに背景を考えてみるのもちょっと楽しかったりします。

言葉は日々移りゆくものです。もちろん、昔ながらの日本語を守っていくのは尊いことです。しかし、日常での新しい言葉や用法の出現もまた、わたしたちの発想に彩りを与えてくれます。「香る」が自他同形の動詞として広く受け入れられる日が来たらおもしろいな……と、出題者個人としては思っています。

(2022年02月11日)

質問に際して

出題者は香水が大好きなのですが、近年、香水売り場で「(サンプルを)香ってみてください」と言われる頻度が高くなったような気がしています。香水を使用している方は、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。▲はじめは「他動詞?」と違和感があったのですが、今は「業界用語だなあ」と受け止めています。辞書には「香る」は自動詞として掲載されています。たとえば「香水が香る」として「香水そのものが香りを放つ(その香りがただよってくる)」という意味で使用するのが自然な使い方ですね。▲「香水を香る」のような形は俗用なので、良い悪いという話ではないのですが、どれぐらい世間で通用する使い方なのか聞いてみたいと思いました。いかがでしょうか。

(2022年01月24日)

フォローすると最新情報が届きます

Twitter