よくないことが起きそうな場合に使う「恐れ」につながる言葉は「大きい」だとする人が最多で、半数近くに上りました。しかし国会の会議録では「強い」「高い」も同程度使われており、新聞では「強い」が多いなど、実態はまちまちに見えます。

よくないことが起こりそうな場合に使う「恐れ」を受ける言葉を伺いました。

「恐れ」は「大きい」で受ける人が最多

成功の確率が低い=失敗の恐れが「○○」。カギの中には何を入れますか?
大きい 45.4%
高い 20.2%
強い 22.8%
上の三つ以外 11.6%

 

負の可能性を示す「恐れ」を受ける言葉は「大きい」を選んだ人が最多で、半数近くに上りました。新聞では「強い」で受けることが多いのですが、なぜかギャップが生じているようです。

「恐れ」は心の働きを含む

「悪いことが起こるのではないかという心配。懸念」(岩波国語辞典8版)と説明される「おそれ」という言葉。「虞」「懼れ」などとも書かれますが、ここでは新聞でよく使われる「恐れ」の表記で扱います。

上に引いた語釈のように「心配」「懸念」と考えれば、「高い」というのは少し違和感があり、「大きい」「強い」の方がなじみそうです。「懸念が大きい/強い」とは言えても「懸念が高い」とは言いにくく感じるからです。

これが例えば「可能性」なら「高い」でも問題ないでしょう。「可能性」という言葉は物事の起こる確率の度合いを表す言葉なので、程度の表現である「大きい」「高い」といった言葉となじみやすいと考えられます。一方で「恐れ」は物事の起こる確率だけでなく、それに伴う感情の動き(不安、心配)を含む表現なので、高低というイメージは持ちにくいのです。もっとも、アンケートでは2割が「高い」を選んでおり、違和感を持たない層もあることが示されています。

新聞では「強い」が優勢

国立国語研究所のウェブサイト「ことば研究館」では、「ことばの疑問」の「『大きい』『高い』『強い』」という項目で、次のように述べています。

「確率」の概念を表す言葉でも,「可能性」の場合は「高い」とも「大きい」とも,どちらともお付き合いがあります。が,「頻度」となると「高い」としか付き合わず,「確率」の場合は「高い」がより多く,「恐れ」の場合は「大きい」の方が優勢,といったように,語ごとに相手を選ぶ癖があることもわかっています。

「恐れ」には「大きい」が使われやすいという見解です。

比較的最近の日本語を扱うデータベース、現代日本語書き言葉均衡コーパス「少納言」で「おそれ/恐れが強」「おそれ/恐れが大き」「おそれ/恐れが高」を検索すると、ヒットした件数はそれぞれ合計で20件、27件、11件でした。「大きい」がやや優勢というところでしょうか。

一方、毎日新聞の記事検索データベースで1987年以降(東京本社版、地域面除く)の記事を同様に検索してみると、「おそれ/恐れ」は「強」につながる場合が903件、「大き」が175件、「高」が449件と、ここでは明らかに「強」につながる件数が多く、「大き」につながる数が少なくなっています。

また、国会会議録検索システムで、検索できるすべての会議について同様に「おそれ/恐れ」とのつながりを検索すると、「強」が604件、「大き」が560件、「高」が631件と、あまり差がつきませんでした。

いずれも使えることは確か

今回のアンケートでは、「恐れ」には「大きい」がなじむとした人が多数でしたが、使用実態とは傾向が必ずしも一致しておらず、受け止め方に悩みます。実態としては「大きい」「高い」「強い」のいずれも使われており、どの言葉をつなげるか意識する必要はあまりないのかもしれません。

(2022年02月15日)

質問に際して

以前、原稿で「~の恐れが高い」というくだりを見かけて「強い」の方が良いのではないかな?と感じたことがあります。しかし、毎日新聞の過去記事を見返すと「高い」も多くの使用歴があり、結局直すのを見送りました。▲選択肢に挙げた3語はいずれも少なくない用例がありますが、それでも、度合いなどを表す名詞と、その程度を表す形容詞がどういう結びつき方をするかには、ある程度の傾向が見られます。「確率」であれば「高い/大きい」が普通で「強い」とは言いにくい。「可能性」なら「大きい/高い」の他に「強い」が使われることもあります。「疑い」なら「強い/大きい/濃い」あたりでしょうか。▲国立国語研究所のウェブサイト「ことば研究館」(https://kotobaken.jp/qa/yokuaru/qa-04/)では「『恐れ』の場合は『大きい』の方が優勢」とありますが、過去記事でよく使われているのは「強い」のようでした。皆さんはどれを選んだでしょうか。

(2022年01月27日)

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