「思いがけないことで失敗させられる」との意味で「足をすくわれる」と「足元を~」のどちらを使うかは、「足元」と答えた人が過半数を占めました。新聞では「足をすくわれる」を使いますが、一般には「足元」が浸透していると言えそうです。

「足をすくわれる/足元をすくわれる」のいずれを使うか伺いました。

「足元を~」が優勢

好調な時こそ気をつけて、「○をすくわれる」ことがないように――どう言いますか?
足をすくわれる 35.3%
足元をすくわれる 56.6%
上のいずれも使う 8.1%

 

「思いがけないことで失敗させられる」(明鏡国語辞典3版)という意味の慣用句として「足をすくわれる/足元をすくわれる」のどちらを使うかは、「足元」派が過半数を占めて優勢でした。新聞では「足をすくわれる」を使いますが、一般には「足元」もよく使われることが分かります。

本来は「足を~」とする考え方

毎日新聞用語集は「誤りやすい表現・慣用語句」の欄で「足元をすくわれる→足をすくわれる」とする書き換えを案内しています。足元とは「足が地についている所。また、その周り」(大辞泉2版)という意味で、すくうことのできるものではない、という考え方からです。この書き換えは日本新聞協会の新聞用語集で採用されており、新聞・通信各社の用語集はいずれも「足をすくわれる」を使うよう求めています。

文化庁の国語に関する世論調査では、2007年度と2016年度に、「卑劣なやり方で、失敗させられること」について、「足下をすくわれる」と「足をすくわれる」のいずれを使うか質問しています。結果は両年度とも「足下をすくわれる」を選んだ人が多数を占めました。

「卑劣なやり方で,失敗させられること」を 2016 年度 2007年度
「(a)足下をすくわれる」を使う       64.4%   74.1%
「(b)足をすくわれる」を使う        26.3%   16.7%
(a)と(b)の両方とも使う         1.9%    1.6%
(a)と(b)のどちらも使わない       6.0%    5.5%
分からない                 1.4%    2.1%

2007年度よりは2016年度のほうが「足を~」を使う人が増えていますが、これは調査をしたことによって「足を~」が「本来の言い方」だということがアナウンスされたことによるものとも考えられます。

「足元を~」も可能という考え方も

国語辞典も大方は「足をすくわれる」を採用しており、明鏡のように「近年、『足元を掬(すく)われる』とも言うが、本来は誤り」といった説明を載せているものもあります。

ただし、回答から見られる解説でも挙げましたが、三省堂国語辞典8版は「あしもと」の子項目として「足下をすく(掬)われる」を誤りとせずに載せています。この場合の「足下」は「足の先のほう」であるとし、意味としては「足をすくわれる」の項目を見るように誘導しています。

三省堂国語辞典の編者を務める飯間浩明さんは、三省堂のウェブサイトのコラム(三省堂国語辞典のすすめ「足も、足下も、すくわれないでね。」)で、以下のように記しています。

「足下」には足先の意味もあります。「足下が冷える」とか、〈部屋に入ろうとすると、足もとに何か触れた。〉(河野多恵子「幼児狩り」1962年)とか言うのはその例です。『三国 第六版』の「足下」にも、〈足の、先のほう〉という意味が加えられました。したがって、「足下」はすくうことができます。

また、辞書編集者の神永暁さんも、辞書サイト「ジャパンナレッジ」のコラム「日本語、どうでしょう」

「足もと」には「足の下」という意味も古くからあるわけで、「足もとをすくわれる」を本来無かった言い方、あるいは誤った言い方だと決めつけてしまうのも危険な気がするのである。

としており、「足を~」のみが正解とする立場には留保を示しています。

一般的にはいずれも使えそう

新聞の用語の取り決めには、誤りを正すという観点だけではなく、表記の不ぞろいを防ぐという側面から設けられているものもあります。「足をすくわれる」の場合にしても、「足」か「足元」かのどちらかを取るならば「足」だろう、という話であって、「足元」を誤りと見なしてのものではないのかもしれません。

今回のアンケートの結果についても、出題者は「やっぱり『足元を~』のほうが多いのか」という感想は持ちましたが、それに対して「足を~」を使うように勧めたいという気持ちはありません。一般的には、自分の感覚になじむものを使うのがよいのではないかと考えます。むしろこのような傾向が続くならば、いずれは新聞用語も「足/足元」の違いにはこだわらない、ということになるかもしれません。

(2022年02月01日)

質問に際して

「相手のすきをついて、卑劣なやり方で失敗させる」(大辞林4版)という意味の慣用句は、本来は「足をすくう」だとされます。受け身で使われることが多く、「足をすくわれる」という形で掲載する辞書も。日本新聞協会の新聞用語集は「足元をすくう・すくわれる→足をすくう・すくわれる」と直すように案内しており、新聞・通信各社の用語集もそれに倣っています。▲ただし、先ごろ改訂された三省堂国語辞典(8版)は「あしもと」の項目に「足下をすく(掬)われる」を載せており、「足下=足の先のほう」として「足をすくわれる」と同様に使えると示しています。▲文化庁の国語世論調査では2007、2016の両年度に「足をすくわれる」「足下を~」のどちらを使うか尋ねていますが、いずれの調査も「足下」が「足」にかなりの差をつけて多数を占めました。今回の質問でも「足元」が多数になるのではないかと予想しています。なお「足元」という表記は新聞協会で統一しているもの。表記は「足下」「足許」であっても意味は同じとお考えください。

(2022年01月13日)

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