「いかがでしたでしょうか」という言い回しは「違和感あり」とした人が大半を占めました。「でしたでしょう」の形を載せる辞書もあり、語調をやわらげる効果もありそうで、間違いとはいえませんが、過剰とみなす人が多いことが分かりました。

「いかがでしたでしょうか」という言い回しについて伺いました。

「いかがでしたか」とする人が3分の2占める

「いかがでしたでしょうか」という言い回しはいかが?
特に違和感はない 24.8%
違和感あり。「いかがでしたか」にすべきだ 63.9%
違和感あり。「いかがだったでしょうか」にすべきだ 11.3%

 

「いかがでしたでしょうか」という言い回しは「違和感あり。『いかがでしたか』にすべきだ」という回答がほぼ3人に2人という結果になりました。ただし「特に違和感はない」という回答も4人に1人と、無視できない数字です。

二重敬語でしたでしょうか?

実際、毎日新聞でもコラムなどを中心に出ています。ただ、一般記事では文末が「だ」「だろう」などとなる常体が基本ですので、件数は参考になりません。そこで、国会会議録を検索しました。

いかがでしたでしょうか 64件
いかがだったでしょうか 95件
いかがでしたか    133件

割合は「いかがでしたでしょうか」が22%と、今回のアンケートの「特に違和感はない」と似たような数字です。

「いかがでしたか」で済むはずなのに、なぜこのような言い方になるのでしょうか。そもそも「でしたでしょうか」というのは敬語のあり方として正しいのでしょうか。
敬語についてのインターネット記事では、「いかがでしたでしょうか」は「二重敬語」で間違いだとするものと、逆に「だったでしょうか」の方が不統一で不適切とするもの――の真っ二つになっています。そのどちらも、ちょっと首をかしげるところがあるように思います。

まず二重敬語ですが、この用語は主に「いらっしゃられる」(尊敬語のダブり)、「ご拝見します」(謙譲語のダブり)など、尊敬語同士、謙譲語同士が直接連結することをいいます。「です」も敬語の一種ですが丁寧語であり、二重敬語というカテゴリーには含まれないのではないでしょうか。仮に含まれるとしても、「でした」と「でしょうか」に分割できる場合は違反ではないはずで、「あけましておめでとうございます」などと同じく、よくある丁寧語の連結に過ぎないといえるでしょう。

岩波国語辞典は「でしたでしょう」を載せている

岩波国語辞典8版の「です」の項には

「でしたろう」は次第に使われなくなり、代わりに「でしたでしょう」と言う。以前は「慕っていました」のように言ったのを「慕っていたんです」のように言う傾向が強まった。

とあります。ここで「でしたでしょうか」が是認されているうえに、「慕っていたんです」のように常体+敬体の形も認められていることがわかります。実際、告白の時に「ずっと慕っていましたんです」なんて言う人はいないでしょうね。まあ今の若い人は「慕う」なんて言葉そのものを使わないでしょうが。

また、NHK放送文化研究所のウェブサイトでは「ご覧になりましたでしょうか」という聞き方はおかしいかという問いに答えています。

文法的には、おかしくはありません。(中略)
〔「ご覧になりましたか」に〕「でしょう」を加えてやわらかく仕上げたのが「ご覧になりましたでしょうか」です。この言い方に対しては「敬語表現として過剰だ(「ご覧になりましたか」で十分だ)」という意見もあるようなのですが、現代語としてすでに広く認められているものだと思います。

つまり「でしたでしょうか」も語調をやわらくしただけということかもしれません。

丸尾君はなぜ「ズバリ」の後「でしょう」と言うのか

ところで、漫画・アニメの「ちびまる子ちゃん」には「丸尾末男」というぐるぐる眼鏡の学級委員がいますね。「ズバリ」が口癖ですが、その語尾につくのは「でしょう」です。「ズバリ」と強く言うのに「不正は許しません」とキッパリ断言するのではなく、「ズバリ、不正は許さないでしょう」という推量の助動詞でまとめます。そのアンバランスが、いつも顔に縦線が入ることと相まって丸尾君の「小心さ」を表しているように思えます。

ただし「ズバリ、学級委員として粉骨砕身頑張ります!」などというよりは「ズバリ、はりきってやるでしょう」というちょっと抜けた感じがズバリ(本人の意識と関係なく)憎めないキャラクターとしての地位を確立させたともいえるでしょう。

出題者自身の最近のメールの話を出せば、問い合わせの返事がなかなか来ない相手に「メールをお送りしましたが、ご確認いただけましたでしょうか」と書きました。「ご確認いただけましたか」で意図は伝わるし、特に失礼でもないと思いますが、ちょっと詰問調と受け取られる恐れがあると感じたのです。

また、もし自分が既に来ていた返事メールを見逃していたら、など疑心暗鬼になると「ましたでしょうか」とつい文言を付け加えたくなったのです。つまりは「でしょうか」が言葉をやわらげるというのはその通りとしても、それを使いたくなる裏には自信のなさが隠れているのかもしれません。

文字では「でしたでしょうか」乱発は禁物

「いかがでしたでしょうか」もちょっと自信のなさが表れている、とまではいえませんが、間違いではないにしても、乱発は禁物です。やわらかくするはずがかえって鼻につく人を増やす結果になる恐れがあります。

明鏡国語辞典3版で「でしょう」を引くとこうありました。

「いらっしゃいましたでしょうか」のように、丁寧に言うために「…ましたでしょうか」を用いる例が見られるが、過剰だと感じる人もいる。「いらっしゃいましたか」で十分。

同辞典での「です」の項には「△結果はどうだったですか?→○どうでしたか?」という直しの例も掲げられています。

そうであれば「でしたでしょうか」のような「です」の活用の繰り返しは過剰と思う人がもっと多いでしょう。「だったでしょうか」も、形は違うものの冗長には違いありません。話し言葉なら気にする人はそれほどいないかもしれませんが、きちんとした文字にするとやはり、くどいと感じる人が大半ということが、今回のアンケートからうかがえたと思います。

(2022年01月28日)

質問に際して

あるコラムの最後の方に「いかがでしたでしょうか」とありました。何人かの目を通った後、最終段階で「そういえば」と急に違和感が湧き起こって、筆者と相談の上「いかがでしたか」に直しました。「でした」と「でしょうか」の重なりが甚だくどいと思ったのですが、最初読んだ時に何の違和感もありませんでした。▲ためしにグーグルで検索窓に“いかがでしたでしょうか”を入れ「ニュース」をクリックすると1万5100件ヒットしました。“いかがだったでしょうか”は6900件、“いかがでしたか”は38万4000件。単純に多さでいうと「いかがでしたか」が圧倒的ですが、「いかがでしたでしょうか」も無視できない数です。▲今回のアンケートでも「いかがでしたか」が最多になると予想しますが、「違和感はない」はどの程度になりますでしょうか(これもくどいですね)。

(2022年01月10日)

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