会社を「背負って立つ」人材というような場合は「しょってたつ」と読む人が7割以上を占めました。とはいえ「せおってたつ」が誤りというわけではありません。新聞でも、漢字書きをする場合は読者に読み方を委ねているといえます。

「背負って立つ」をどう読むか伺いました。

7割は「しょってたつ」と読む

将来、会社を「背負って立つ」人材――カギの中、どう読みますか?
せおってたつ 28.5%
しょってたつ 71.5%

 

将来、会社を「背負って立つ」人材――という時は「しょってたつ」と読むと答えた人が7割以上の多数派でした。

辞書の記載も「しょってたつ」

「背負う」は「せおう」ですが、母音同士がつながって音が変化し、「しょう」とも読まれます。どちらで読んでも基本的に意味は変わりません。新明解国語辞典8版は「しょう」について「『せおう』の口頭語的表現」と説明します。

広辞苑7版は「しょう」(セオウの転)の項で成句として「背負って立つ」を挙げ、「組織や団体の中心となって、活動・発展のささえとなる。また、全責任を一身に負う」という意味を載せています。日本国語大辞典や他の小型辞書も同様で、いずれも「しょってたつ」を見出し語にしています。アンケートで7割を超える人がこちらを選んだことからも、この成句については「しょって」と読むのが一般的であると言えそうです。

「せおってたつ」もあり得る

一方で元々の「せおう」にも「苦しい仕事や条件などを身にひきうけて責任をもつ」(岩波国語辞典8版)という意味があり、「せおう」+「立つ」をそのまま「せおってたつ」と読むことももちろんできるでしょう。発音上の都合で音が変化しただけであり、読み方によって意味が変わるわけではないため、二つははっきり区別できるものではないかもしれません。

さて、新聞の言葉は内閣告示の「常用漢字表」に基づいて表記のルールが決められていますが、「背負う」と漢字で表記した場合、常用漢字表に従うと「せおう」と読むのが原則で、「しょう」は「表外読み」という扱いになります。多くの辞書でも「しょう」の項では、漢字表記のところに、常用漢字表で認められた音訓ではないことを表す記号がついています。

表外読みは漢字を使わないのが原則なので、新聞で「背負う」と書かれていたら「せおう」と読まれることを想定しており、いやここはぜひとも「しょう」と読んでもらいたい、という場合は漢字でなく、ひらがなで書く必要があります。

とはいえ、毎日新聞の過去の紙面では「背負って立つ」が使われたのが211件、「しょって立つ」は17件と、圧倒的に漢字が多いです。前述のようにどちらで読んでも意味は変わらないことから、漢字で書かれたものを校閲でひらがなに直すことは積極的にはしていません。

「しょう」はかな書きにする場合も

同じ「しょう」であっても「しょいこ」(背負子:荷物を背負って運ぶための道具)や、「しょってる」(背負ってる:うぬぼれているという意味の俗語)などは、やはり「せおう」ではしっくりこないため、ひらがなで書くのがよさそうです。読みを一つに指定したいかどうか、程度によって判断し、どちらでもよい場合は読者に委ねている格好でしょうか。

表外読みはひらがなに、というのは読みやすさに配慮したルールではあります。しかし、「せおって」と読んでもらうつもりで「背負って立つ」と書いたとしても、実際には多くの人が「しょって」と読んでいることが、アンケートの結果からはうかがえました。今後の参考にいたします。読む人に届くまで読み方が決まらない曖昧さは、書き言葉の面白いところでもあると改めて思いました。

(2022年01月18日)

質問に際して

「背負う」は「せおう」ですが、音が変化して「しょう」とも読まれます。広辞苑は「しょってたつ【背負って立つ】」を見出し語にとり、「組織や団体の中心となって、活動・発展のささえとなる。全責任を一身に負う」という意味を載せています。他の多くの辞書も同様で、この成句では「せおって」ではなく「しょって」と読むべきでしょうか。▲新聞では常用漢字表に従い、「背負う」と漢字で表記した場合は「せおう」と読むことにしています。「しょう」は表外読みとなり、「せおう」でなく「しょう」という音でぜひ読んでほしいという場合は、ひらがなで表記するのが決まりです。ただ、新聞を声に出して読む機会はあまりありませんし、振り仮名もつかないので、漢字で表記したものが実際にどう読まれているかはなかなかわかりません。▲どちらの読み方をしても意味に変わりはないためさほど問題になりませんが、実際にはどう読んでいる人が多いのか、伺ってみたいと思います。

(2021年12月27日)

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