自動車について「航続距離」という言葉がなじむかどうかという問いに、言い換えなくともOKという人は4分の1にとどまりました。「走行可能距離」がより多くの支持を集めましたが、辞書や新聞記事では「航続距離」が許容されつつあります。

「航続距離」という言葉を自動車に使うのをどう感じるか伺いました。

「航続距離でOK」は4分の1止まり

電気自動車の「航続距離」は昔より長くなった――カギの中、言い換えますか?
言い換え不要。「航続距離」がよい 23.8%
「走行距離」の方がよい 22.4%
「走行可能距離」の方がよい 44%
「一充電走行距離」の方がよい 9.8%

 

船舶や航空機ではない、地上を走る自動車についても「航続距離」という言葉はなじむかどうか。出題者にとっては意外でしたが、言い換え不要という人は4分の1にとどまりました。自動車には「走行」でなければしっくりこないという人が多いようです。

「航続」は船舶・飛行機に でも「航続距離」は…

国語辞典では多くが「航続」について「船舶・航空機が、燃料の補給なしに航行を続けること。『航続距離』」(明鏡国語辞典3版)などと、船か飛行機についての用語だとしつつ、用例で「航続距離」を挙げます。これを見る限り、「航続距離」は船や飛行機の用語だと受け止めるのが自然な反応と言えそうです。

一方で、大辞林4版は次のような説明を載せています。

こうぞく【航続】船舶や航空機が、燃料を補給せずに航行を続けること。
――きょり【航続距離】船舶・航空機・電気自動車などが、一度蓄えた燃料や電力だけで、航行や運転を継続できる距離。

ここでは、「航続」については「船舶や航空機」としながらも、「航続距離」については「電気自動車など」にも使われるとして、用法を広げています。ほかにも三省堂国語辞典7版が「航続」の用例で「航続距離(キョリ)〔自動車にも言う〕」としており、三省堂現代新国語辞典6版が用例「航続(可能)距離」について「自動車(とくに電気自動車)にも言う」としています。「航続」は旧来のままでも、「航続距離」については自動車にも使えるとする傾向が徐々に出てきているようです。

メディアでも賛否割れる

「航続距離」を自動車にも使うことについて、関西マスメディアの用語担当者の間で意見が交わされたことがあります。おかしいと言う社もあれば、既に許容されているようだと言う社も。そんな中で、電気自動車について「航続距離」が使われるのは、ガソリン車の燃費のような指標が確立していないからではないか、という意見がありました。

制度面で言うと、電気自動車の場合は道路運送車両法に基づき、型式指定時に「一充電走行距離」を国土交通省に申請することになっています。アンケートの選択肢としても挙げた言葉ですが、一見してぎこちないというか、こなれているとは言い難い言葉です。1回の充電で走れる距離という意味は伝わりますが、これならば航空機などの類推で「航続距離」を使う方がよいということになるのかもしれません。

まだしばらくは迷いそう

アンケートの結果では「走行可能距離」がよいとした回答が4割超を占め最多でした。確かにぱっと見たときの分かりやすさがあり、浸透すれば使いやすそうな印象を持ちます。ただし、毎日新聞の記事データベースで「電気自動車」と組み合わせて検索すると、「+航続距離」では70件がヒットするのに対し、「+走行可能距離」では17件。既に使用実態には大きな差があります。

今後、電気自動車が主流になるならば、今までのガソリン車での報道で燃費が取り上げられるのと同様の頻度で、1回の充電でどれだけ走れるかが取り上げられることになるでしょう。その時にどんな言葉を使うべきか、まだしばらくは迷うことになりそうです。

(2021年12月21日)

質問に際して

最近のモーターショーを取り上げた原稿で、1回の充電で1000キロ以上走ることができる電気自動車が紹介されていました。走れる距離を表す言葉は「航続距離」。しかし、これを「船や航空機に限定して使う言葉」だとして、別の言葉に置き換えたいという声を聞くことがあります。▲確かに国語辞典で「航続」を引くと「船や航空機が、燃料の補給なしにつづけて進むこと。『航続距離』」(新選国語辞典9版)のような書き方が主流です。とはいえ乗り物ということは共通しているので、類推で自動車に使うことはさほど問題なさそうにも感じます。▲書き換える場合には「走行距離」が多く使われているようですが、これは本来なら「走った距離」に使う言葉でしょう。「走行可能距離」がより正確か。販売時に表示義務のある諸元の一つとしては「一充電走行距離」も使われますが、これを一般的に使うかというと、ためらいを感じます。皆さんはどの言い方がなじむでしょうか。

(2021年12月02日)

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