「木の実」をどう読むか「好み」を聞いた結果は「きのみ」が約7割と「このみ」を圧倒しました。辞書では「きのみ」を立項していないものが少なくないのですが、だからといって「このみ」の方が適切と判断するのは早計でしょう。

「木の実」の読み方について「きのみ」と「このみ」のどちらかを2択で選んでいただきました。

「きのみ」が「このみ」を圧倒

「木の実」――どちらの言い方がお好みですか?
きのみ 69.4%
このみ 30.6%

 

「どちらもいう」という人も多いだろうとは思いつつ、あえてその選択肢は入れず「好み」を問う形にしました。結果は「きのみ」が約7割と「このみ」を圧倒しました。出題者は半々ぐらいかなと予想していたので、少々意外です。

文化庁は「このみ」優勢とみていた

1981年に出た文化庁「国語に関する問答集7」によると、17世紀の「日葡(にっぽ)辞書」に既に「きのみ」「このみ」の両方があったようです。しかし「問答集」は、「きのみ」を見出しとして掲げていない小型国語辞典が多いことなどから「『きのみ』よりも『このみ』の方がやや優勢であるといってもよいのではないか」と記しています。

また、2016年発刊のNHK放送文化研究所編「日本語発音アクセント新辞典」では「きのみ」は「このみ」の項を見るよう促し、「きのみ」は「許容」という扱いです。

文脈によって使い分けたい

しかし今回のアンケートは、逆に「きのみ」が優勢だということを示しています。これはどういうことでしょう。

もっとも「問答集」でも「『の』に助詞意識が感じられれば『き』になりやすい」とあります。そして、おそらく小型国語辞典はスペースなどの関係から、「木(き)」「の」「実」に分解できるような語は見出しとして立項していない方針なのかもしれません。だから「きのみ」の項目を立てていない辞書が多いからといって「このみ」の方が適切と判断するのは早計です。

現代国語例解辞典第5版にも「草の実」に対して「木の実」と言うときなどは「きのみ」というとあります。このように、文脈によって使い分けるべきです。

「このみ」は「古風」とする辞書も登場

とはいうものの、文脈の取り方が人によって微妙に分かれるケースは少なくないでしょう。そんなときは、2020年に改訂版が出た新明解国語辞典第8版の語釈が指針になるかもしれません。

このみ【木の実】「きのみ」の古風な表現

「古風」。これは同辞典の7版では「雅語的表現」とありました。それが「古風」となってしまった流れと、今回のアンケートの結果は軌を一にしているようです。

ところで、今年はNHK「みんなのうた」放送開始から60周年ということで、時々懐かしい曲が流れます。その中の一つが1971年初回放送の「小さな木の実」(ビゼー作曲)。「ことしまた秋がくると木の実はささやくパパの言葉」という歌詞などから、父親が亡くなっていることを思わせる哀切な曲で、ここでは「このみ」と歌われます。

出題者の好みをいわせてもらえば、この歌詞が記憶として刻まれているので、迷うときは「このみ」としたいのですが、やはり「古風」と受け取られるのでしょうか。

(2021年11月16日)



質問に際して

「木の実」は一般の新聞や書籍などでは振り仮名は付かないので問題にならないのですが、毎日小学生新聞は総ルビなので「きのみ」「このみ」のどちらにするか判断しなければなりません。30年以上前に職場の先輩から「木の実」は女優の「木の実ナナ」では「きのみ」だけど一般的には本当は「このみ」なんだと教わった記憶があります。▲辞書を引くと、例えば三省堂国語辞典7版では「きのみ」は「⇒木(コ)の実」と、いわゆる「空見出し」になっています。岩波国語辞典8版に至っては「きのみ」を仮見出しとしても立項せず「このみ」の項に「きのみ」と付記するにとどめています。▲ということは、やはり「このみ」の方がよいのでしょうか。しかし「きのみ」も間違いではない以上、「き」と付いた振り仮名を「こ」に直すことにはためらいがあります。そこで皆さんはどちらの言い方が好み(すみません、しゃれです)か調べてみようと思いました。

(2021年10月28日)

 

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