「すべきだ」と「するべきだ」のどちらを使うか。文章では「すべきだ」を使う人が「するべきだ」よりはっきり多く、口頭でも「すべきだ」が若干優位という結果になりました。もっとも、一般的にはどちらを使っても問題ないと言えます。

「すべきだ」と「するべきだ」のどちらを使うか伺いました。

「すべきだ」が好まれる

感染予防の対策を徹底「すべきだ/するべきだ」――どちらを使いますか?
すべきだ 38.2%
するべきだ 16.2%
いずれも同じように使う 28.7%
文章では「すべきだ」と書き、口頭では「するべきだ」と言う 16.9%

 

全体として見ると、文章では「すべきだ」を使う人が「するべきだ」よりはっきり多く、口頭でも「すべきだ」が若干優位という結果になりました。「すべきだ」という形は文語の名残を残したものですが、いまだに広く受け入れられているようです。

特に書き言葉では「すべきだ」が優勢

口語のサ変動詞「する」は文語の形だと「す」になります。文語の助動詞である「べし」につなげるときには、やはり動詞の形も文語の方がなじむのか、「すべきだ」を使うという人が多数派でした。

今回のアンケートの回答を、「同じように使う」、文章・口頭では使い分けるという人の回答も含めてまとめ直すと

・「するべきだ」を(も)使う 44.8%
・少なくとも口頭では「するべきだ」を(も)使う 61.7%
・「すべきだ」を(も)使う 67.1%
・少なくとも文章では「すべきだ」を(も)使う 84%

となります。文章で「すべきだ」を使わないという人は1割台にとどまり、特に書き言葉では今もなお「すべきだ」が優勢であることが分かります。

新旧が共存、使用実態には格差

北原保雄編著「問題な日本語その4」(大修館書店、2014年)でも「実行すべき/実行するべき」という項目で「どちらが正しいのかという疑問が生じる」と、この言い回しについて触れています。結論としてはどちらかが誤りというわけではなく「要するに新旧二つの形が共存している状態」だというのですが、加えて以下のように述べています。

ただし、インターネットや国立国語研究所の「書き言葉コーパス」などで実際の使用状況を調査してみると、「べき」という、文語文でなじんだ堅い助動詞に接続するためか、現代においても圧倒的に「すべき」のほうが好まれています。

アンケートの結果は「圧倒的」と言うほどではありませんでしたが、「『すべき』のほうが好まれ」るという傾向は確かにあると言えるでしょう。

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当面は両方の形が共存か

NHK放送文化研究所発行の「放送研究と調査」2021年2月号には、2018年3月に実施した調査の結果が載っています。その中で主な結果を引用すると

「早く【解決すべき/解決するべき】だ」という言い方は…
1 「解決すべき」と言う(「解決するべき」とは言わない) 41%
2 「解決するべき」と言う(「解決すべき」とは言わない) 25%
3 両方とも言うが、どちらかといえば「解決すべき」と言うことのほうが多い 14%
4 両方とも言うが、どちらかといえば「解決するべき」と言うことのほうが多い 8%
〔以下略〕

となっています。ここでも「すべき」の方が「するべき」より好まれるという傾向は確かに表れています。

NHKの「ことばのハンドブック第2版」の「すべき・するべき」の項目には「文語的表現なので、放送では、なるべく使わない方がよい」と注意喚起しつつ、「本来は『すべき』であるが、口語のサ変動詞『する』に『べき』が接続した『するべき』という言い方も認められる」という説明が載っています。「放送研究と調査」によれば当面はこの記述を維持するとのことです。

文章では「すべきだ」とすべきか?

今回のアンケートでも、専門家の調査でも、NHKのアンケートでも「すべきだ」の方が「するべきだ」より好まれるという傾向が表れました。それでは、校閲的な課題としては、原稿に「○○するべきだ」とあった場合に、「すべきだ」と直すべきなのでしょうか。

確かに「すべきだ」が好まれるという傾向はありますが、その一方で「するべきだ」を排除した方がよいという議論は見られませんでした。正しいかどうかという観点で言えば「どちらも正しい」というのが結論です。ただし、新聞の場合は文字数を減らす方がよいという価値観があるので、その限りにおいては「するべきだ」を「すべきだ」に直すのは理由があると言えます。そうした事情のない一般の文書においては、あくまで書き手の好みに従ってよいものではないかと考えます。

(2021年10月12日)



質問に際して

「べし」は文語の助動詞が、口語において現代まで生き延びているものです。今では終止形の「べし」が使われることはあまりなく、もっぱら連用形の「べく」、連体形の「べき」がもっぱら使われます。

「べし」は動詞の終止形(「ウ」音で終わる形)に付くのが普通ですが、質問文に挙げた「徹底する」のようなサ変動詞の場合は「徹底すべきだ」「徹底するべきだ」の両方の形が見られます。これは文語のサ変動詞の形「す」と口語の「する」の両方ともが、「べし」と結びつくことができるためです。従って、いずれも誤りではありません。

ただし、「実際の使用状況を調査してみると(中略)現代においても圧倒的に『すべき』のほうが好まれています」(北原保雄編著「問題な日本語 その4」)とのこと。毎日新聞の校閲でも「するべきだ」とある原稿については「すべきだ」と直す場合が多いのですが、これには字数の節約をよしとする新聞特有の事情も絡むと思われます。

どちらも間違いではないということを知っていても、実際に使う場合はどちらにするか迷うという人もあるかもしれません。皆さんはどう使うでしょうか。

(2021年09月23日)

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