北の夜空を巡るW形の星座は「カシオペア座」と呼ぶ人が7割を超え、1割強の「カシオペヤ座」を圧倒しました。専門用語としては「カシオペヤ」が使われていますが、一般的には「カシオペア」が定着していることがうかがえます。

Wの形でなじみ深い星座の呼び方について伺いました。

カシオペ「ア」が7割超す

北の夜空に輝く「カシオペ○座」――どう呼びますか?
カシオペア座 72.8%
カシオペヤ座 12.3%
上のどちらでもよい 14.8%

 

「カシオペア座」を選んだ人が7割を超え、1割強の「カシオペヤ座」を圧倒しました。専門用語としては「カシオペヤ」が使われていますが、これだけの差を目の当たりにすると、一般的には「カシオペア」を使うのがよさそうに思えます。

神話の人名は「カシオペイア」

星座の名前はギリシャ神話の登場人物に由来します。海の怪物への生けにえにされるところを英雄ペルセウスに救われたのはエチオピアの王女アンドロメダですが、その母親がカシオペイアです。アンドロメダが生けにえとされかけたのも、元はカシオペイアが娘(または自分自身)の美貌は海の精ネレイスを上回ると誇ったことが原因でした。

神話の人物としては「カシオペイア」と書かれることが多い一方、星座の名前は国語辞典を見ると「カシオペア」「カシオペヤ」に表記が分かれています。回答すると見られる解説でも挙げましたが、広辞苑、大辞林、大辞泉の中辞典が「カシオペヤ座」を見出し語としており、集英社国語辞典、新明解国語辞典、日本国語大辞典では「カシオペア座」を掲げています。専門用語としては「カシオペヤ」が使われるのですが、日本語の書き習わしとしてはどちらがなじむのでしょうか。

「外来語の表記」に沿うのは「ア」

1991年の内閣告示「外来語の表記」には次のような原則が記載されています。

イ列・エ列の音の次のアの音に当たるものは,原則として「ア」と書く。
〔例〕 グラビア ピアノ フェアプレー アジア(地) イタリア(地)
    ミネアポリス(地)
 注1 「ヤ」と書く慣用のある場合は,それによる。
    〔例〕 タイヤ ダイヤモンド ダイヤル ベニヤ板
 注2 「ギリシャ」「ペルシャ」について「ギリシア」「ペルシア」と書く慣用もある。

「カシオペア」も、「ペ」が「エ列の音」なのでそれに続く「アの音」は「ア」と表記することになります。もちろん例外が挙げられていることからも分かるように、必ず「ア」にしなければならないわけではありませんが、日本語表記として「カシオペア」がなじむと考えられる根拠の一つにはなりそうです。

違和感のない書き方で

毎日新聞社の用語集では星座の名前に関するルールはありません。しかし、共同通信の記者ハンドブック(13版)は、「学術用語」の欄で「学術用語は各学会の学術用語集の表記を基準とする」とした上で、星座の名前も載せており、そこには「カシオペヤ座」とあります。このような姿勢を見ると、外来語表記の原則の一方で、やはり「カシオペヤ」と書くべきなのかと迷いが生じます。

しかし今回のアンケートで、7割超の人が「カシオペア」を選んだという結果を見て、改めて一般的には「カシオペア」でもよいのではないかと思い直しました。外来語の表記のような「これが正解」と言いにくいものは、一般読者から見て違和感のない書き方であるということも重視したいと考えます。

(2021年09月21日)

質問に際して

北の空で北極星の周囲を巡る、Wの形をした見つけやすい星座がカシオペア座です――と、ここでは「ア」を入れましたが、それが正解というわけではありません。毎日新聞の呼び習わしとしては「ア」の方が有力なので、とりあえずそちらを記しています。

一方で、ウェブで見ることができる日本天文学会の「天文学辞典」(https://astro-dic.jp/)は「カシオペヤ座」の表記を採用しています。国立天文台が編集する「理科年表」や、「天文年鑑」(誠文堂新光社)の表記も「ヤ」で、学術関係では「カシオペヤ座」とするのが一般的です。

国語辞典はどうか。手近な辞書で項目があったものでは広辞苑、大辞林、大辞泉が「カシオペヤ座」、集英社国語辞典、新明解国語辞典、日本国語大辞典は「カシオペア座」。事典的な項目も重視する中辞典では学術用語に合わせた記載をしており、日国は用例のあるものを見出し語にし、小辞典は編者になじみがあるものを取り上げているように見えます。

先日の仕事中に「カシオペア」か「カシオペヤ」かで迷う場面がありました。今回の質問への回答を今後の参考にしたいと思います。

(2021年09月02日)

フォローすると最新情報が届きます

Twitter