「声を掛ける」という意味の「声掛け」。ただの「声掛け」では濁らない「声かけ」となるが、「お声掛け」の場合は「お声がけ」と濁る――という人が7割を占めました。連濁に「お」の有無で変化が生じるというのは不思議です。

「声掛け」の「掛」が濁るかどうかを二つの形で伺いました。

「声かけ/お声がけ」が最多

「声掛け」しますね/「お声掛け」いたします――それぞれどう読みますか?
こえかけ/おこえかけ 17.4%
こえかけ/おこえがけ 69.7%
こえがけ/おこえかけ 2.5%
こえがけ/おこえがけ 10.3%

 

「声を掛ける」という意味の「声掛け」。ただの「声掛け」では濁らない「声かけ」となるが、「お声掛け」の場合は「お声がけ」と濁る――という人が最多で7割を占めました。二つの語が合わさるときに後に付く音が濁ることを「連濁」と言いますが、複合語の頭に「お」が付くかどうかで連濁に変化が生じるというのは不思議です。

辞書の表記は分かれる

今回のアンケートの回答を整理し直すと

こえけ 87.1%/こえけ 12.8%
おこえけ 19.9%/おこえけ 80%

となり、「お」が付かない場合は「声かけ」、「お」が付く場合は連濁して「お声がけ」となるという傾向が顕著に表れています。

現在刊行されている国語辞典で、「声かけ」ないし「声がけ」で見出し語を立てていると確認できたのは4点のみでした。「声かけ」「声がけ」いずれも2点ずつでしたが、「声かけ」のうちの一つは項目の中で「こえがけとも」としており、辞書の中では「声がけ」が若干優勢のようです。

「岩波日本語使い方考え方辞典」(北原保雄監修、2003年)の「連濁」の項目を見ると、連濁の傾向の一つとして

後の語が動作的な意味を持ち、前の語がその語の対象の関係となるような語構成の場合には、連用修飾的な関係となる場合より連濁を起こしにくい(「絵描(か)き」:「筆書(が)き」「縦書(が)き」、「借金取(と)り」「物取(と)り」:「横取(ど)り」など)。

とあります。この伝でいくと「声掛け」は、動作的な意味を持つ「掛ける」と、対象となる語「声」の組み合わせですから「連濁を起こしにくい」はずです。とりあえず「声かけ」の形では連濁が起きないのも、通常のことと言えそうです。

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「お声掛け」は新しい言い方

回答から見られる解説の中でも引いた、NHK放送文化研究所が2014年に実施した「ことばのゆれ調査」(「放送研究と調査」2015年2月号)では、「近所の人に声掛けする」という場合の発音は「コエカケ72% コエガケ27%」という結果だったとのこと。今回のアンケートの結果と同様、「声掛け」の形では濁らない傾向が出ています。

NHKの調査では「お声掛け」の形はアンケートしなかったようです。ただし、報告の中で

「声掛け」に「お」を付けた「お声掛け」ということばについては、2012年10月に『お元気ですか日本列島』(NHK総合)の「ことばの宝船」のコーナーで「新語」として取り上げている。この放送の際に担当のNHKアナウンサーは「お声がけ」と連濁形で発音していたし、インタビューを受けた一般の人も連濁形で答えていた。(中略)接頭語「お」がつくと連濁形「オコエガケ」が出やすくなるのかもしれない。

という見通しを示しています。「毎日ことば」のアンケートは手順を踏んだ世論調査ではありませんが、今回の結果はNHKの見通しにも即したものだと言えるでしょう。

どうして変わる「声かけ/お声がけ」

なぜ「お声掛け」では連濁が起きやすくなるのか。校閲のツイッターに寄せられたコメントでは「お声掛かり」との連想を挙げる声もありました。なるほどと思うと同時に、「お声掛かり」は「お声+掛かり」に見えますが「お声掛け」は「お+声掛け」で、形が違うようにも思います。

また和語の複合語では、前の語が長いと(3音以上だと)連濁が起きやすくなるという説もあるとのことで、「お声がけ」の変化も関係ありそうに思えますが、詳細は出題者の手に余ります。とりあえず今回の結果としては、連濁に正解はないと言えるのですが、多くの皆さんが使いやすいと感じているのは「声かけ/お声がけ」という形だということは頭に入れておくとよいのではないでしょうか。

(2021年08月17日)



質問に際して

「かな」文字で「か(書)く」ことを続けて言うと「かながき」になり、「かなかき」にはなりません。こうした現象を連濁と言います。「かな書き」のような場合は安定して連濁が起きることが分かっていますが、起きたり起きなかったりと安定していない言葉もあります。

「声を掛ける」を縮めた「声掛け」もそうした言葉の一つです。「声かけ」「声がけ」のいずれも目にします。もちろんどちらでも意味は通じますが、ちょっと迷うという人もいるかもしれません。

NHK放送文化研究所の「ことばのゆれ調査」(2014年)では「近所の人に声掛けする」という場合、「コエカケ」72%、「コエガケ」27%だったといいますが、「お声掛け」になると連濁形になりやすいかもしれないとの推測が示されています。なかなか面白い話で、毎日ことばとしても、この場で伺ってみることにしました。いかがでしょうか。

(2021年07月29日)

 

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