「ナイーブな問題」という言い回しは「繊細で扱いに注意を要する問題」だとした回答が7割を占めました。「未熟さ」が前面に出る英語の意味からすると「ナイーブ」と「問題」は結びつきにくいのですが、意外に通じる言い回しのようです。

「ナイーブ」という語の使い方で伺いました。

「扱いに注意を要する問題」が7割

「ナイーブな問題」――この言い回し、どう受け止めますか?
単純で素朴な問題 4%
繊細で扱いに注意を要する問題 71.7%
上の二つのいずれか判断できず分からない 6%
「ナイーブ」と「問題」が結びつかないので分からない 18.3%

 

「繊細で扱いに注意を要する問題」とした回答が7割を占めました。英語の意味からするとちょっと結びつきにくい「ナイーブ」と「問題」なのですが、日本では意外に通じる言い回しのようです。もっとも出題者自身、「ナイーブな問題」に対して一応は言い換え案を提示することができたのですから、そもそも意味の通じない言い回しというわけではないのだとも言えます。

英語では明らかに否定的な言葉

回答から見られる解説では国語辞典の説明を引きましたが、ここではまず英和辞典の説明から。まずはランダムハウス英和辞典(2版)。

1 無邪気な、天真爛漫(らんまん)な
2 経験〔判断力、知識など〕に欠けた、だまされやすい、愚直な、単純な、ばか正直な

パッと見て分かる通り、分量が多いのは2番のネガティブな意味です。経験不足、判断力不足、知識不足でだまされやすい。散々な言いようですが、仕方がありません。英語では否定的な意味で使うのが普通の言葉なのです。

学習者向けの英和辞典は、日本語として使う「ナイーブ」と、英語の「naive」の違いを丁寧に説明してくれています。

・日本語で用いる「繊細な」の意のナイーブにはsensitive, innocentなどを使う。(ジーニアス英和辞典5版)
・日本語では「ナイーブ」は主に2〔筆者注:無邪気な、純真な〕のよい意味で使われるが、英語では1〔単純な、世間知らずの〕の悪い意味で使うのが普通。(コンパスローズ英和辞典)
・1〔(けなして)世間知らずの、単純な〕の意味で用いられることが多く、日本語の「ナイーブ」とは異なる;「傷つきやすい、繊細な」の意味ではsensitiveなどを用いる方がよい。(ウィズダム英和辞典4版)

うっかり英語で人に向けて「naive」を使ってしまい、トラブルが起きることがないようにという親切心もあるのだろうと思います。

国語辞典では「繊細」と捉えるものも

とはいえ、外来語が原語とは異なる意味で使われる、ということ自体は決して珍しいことではありません。例えば日本語では「気分」という意味で使われることもある「テンション」は原語だと「ピンと張ること」「緊張」といった意味合いです。

ですので、三省堂国語辞典(7版)のように「①〔性格が〕すなおで純真であるようす」にくわえて「②繊細で傷つきやすいようす」という意味を挙げていても、取り立てて言うべきことではないかもしれません。その「傷つきやすさ」が人間を離れて、扱いに注意を要する物事にまで適用されるようになるのも、自然な成り行きだったのかもしれません。

通じるとしても使いにくい

しかし校閲のツイッターには「英語との意味が違いすぎる」「センシティブくらいにして」といったコメントが寄せられました。出題者も直しを提案するときに「センシティブ」と「デリケート」で迷い、意味としては「センシティブ」のほうがより良さそうだと感じましたが、一般的に浸透している語は「デリケート」の方であろうと判断し、「デリケートな問題」としてもらいました。

アンケートの回答では7割が「繊細で扱いに注意を要する問題」を選び、「ナイーブな問題」のままでも一応、意味が伝わるというのも事実です。しかし、ツイッターにはまた「原語と意味の異なるカタカナ語は使うのがためらわれる」という趣旨の書き込みもありました。人が使ったものを理解することはできても自分で使うのは控えたい、という言い回しも時にあります。「ナイーブな問題」はそうした表現の一つであろうと考えます。

(2021年07月27日)



質問に際して

新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるかどうかは個人の健康情報にも関わるので「ナイーブな問題だ」――という発言を引いた原稿に、どう受け止めるべきか困りました。

「それはナイーブな考え方だ」といった使い方なら、意味は分かるように思います。単純で底の浅い、物事の複雑さを理解できていない考え方――というのは少しきついかもしれませんが、辞書にも「単純で未熟なさま」(大辞泉2版、「ナイーブ」の項から)という語釈もあることを踏まえると、そのあたりに落ち着くのではないでしょうか。しかし「ナイーブな問題」はどう考えたらよいのか。

国語辞典の「ナイーブ」の説明は「素朴なさま。純真なさま。感じやすいさま。うぶ」(広辞苑7版)のようなものが大半で、もっぱら人の性格について使うべきものだと示唆します。仮に「感じやすい」という点が傷つきやすさに結びつくとしても、「問題」について使うのは難しいという印象を受けます。

冒頭の原稿は結局、出稿部と相談のうえで「デリケートな問題」と言い換えたのですが、「ナイーブな問題」で話が通じるのかどうかが気になりました。皆さんの回答を参考にしたいと思います。

(2021年07月08日)

 

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