「過半数を超える」という言い回しは、「半数を超える」ないし「過半数に達する」に直したいという人が大多数を占めました。重複表現として新聞では直していますが、「過半数」をポイントの数字と考えれば使用不可とも言い切れないようです。

「過半数を超える」という言い回しについて伺いました。

「直したい」人が大多数占める

与党の議席が「過半数を超える」かが焦点だ――この表現、どうでしょうか。
「半数を超える」としたい 15.5%
「過半数に達する」としたい 38.8%
上二つのいずれかにしたい 31.8%
「過半数を超える」で問題ない 13.8%

 

「過半数を超える」という言い回しについて、「半数を超える」ないし「過半数に達する」に直したいという人が9割に迫り、大多数を占めました。重複表現となることに違和感があるとした人が多かったようです。

「過半数を超える」は重複表現

毎日新聞用語集は「誤りやすい表現・慣用語句」の欄で、「過半数を超える」について「半数を超える、過半数に達する」と言い換えるように案内しています。「過」と「超」がいずれも、ある水準を上回る意味を表すため、重複表現になるからです。新聞・通信他社の用語集もほぼ同様ですが、日経新聞の用語集は言い換えの案内に加え、次のように記しています。

選挙の際など半数を超えるかどうかが関心の的になっている場合は、強調表現として「過半数を超える」または「過半数を割る」などを使うこともある。

たとえ重複表現になるとしても、意味を際立たせるために「過半数を超える」を使う場合はありうる、との立場です。新聞社でこのように「強調」として重複表現を認めるのは珍しい例だと思います。

確かに、重複表現というものは誤りというわけではありません。新聞では簡潔な表現を心がけるため、また字数を無駄に増やさないために重複表現を避けるようにしていますが、一般的には、あえて使うということもあり得るだろうと考えます。

ポイントの数字を超える場合はOKか

ところで「過半数を割る」の方は重複表現ではありません。毎日新聞では、元々過半数の議席を持っていた政党などが、選挙で破れて過半数に届かなくなった場合、しばしば「過半数を割る」「過半数割れ」という言い方をします。

NHKの「ことばのハンドブック第2版」は、日経新聞の用語集より少し詳しく説明しています。

過半数を超える・過半数割れ
 (前略)選挙の際など、「半数より1だけ多い数」を超えるかどうかが関心の的になっている場合は、「過半数を超える」または「過半数割れ(~を割る)」という表現もありうる。
 「過半数以上」は使わない。

回答から見られる解説では都議選を例に挙げましたが、都議会の定数127の半数は63.5です。それをぎりぎりで上回る整数は64なので「半数より1だけ多い数」というと不正確な感じはしますが、「過半数」というポイントの数字が話題になっており、それを超えるか超えないかと考える場合には「過半数を超える」という表現もありうる、というのは理解できるように思います。

元々なかった過半数でも…

ところで先の都議選では、4年前に大敗して公明党と合わせても過半数に届かなかった自民党が、今回も過半数を占めることができませんでした。このことを「自公過半数割れ」という形で取り上げる原稿も目にしましたが、この言い方はどうでしょうか。

出題者個人としては違和感なしと言い切れないのですが、「割る」は受験などの「定員割れ」のように、「最初少なかったものが次第に基準値に近づいていったが、基準値に達せずに終わった」という場合にも使うことがあります(森田良行「基礎日本語辞典」)。選挙の場合も同様で、「過半数割れ」と言っても差し支えなさそうです。

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今回のアンケートでは、重複表現に対して厳しい人が多いことにやや驚きました。確かに露骨な重複表現――「馬から落馬する」的な――は、真面目な話題でもちょっと面白い感じにしてしまうところがあり、文書を書く場合には注意が必要なものです。今回の厳しさは、普段から皆さんが注意して日本語を使っていることの表れなのだろうと感じました。この「毎日ことば」も、皆さんの言葉の使用に資するものとなれるよう、改めて努めたいと思います。

(2021年07月20日)



質問に際して

オリンピックの開幕が迫る中、東京では都議選が行われています。今回の選挙で与党の「都民ファーストの会」が立てた候補は47人で定数(127)の半数に届かず。焦点は前回の選挙で第1党の座を失った自民党が、協力する公明党と合わせて過半数を占めるかどうかと見られています。

議会などは大抵の場合、多数決で物事が決まるので、党派の勢力が半数を上回るかどうかが大きな分かれ目になります。そのため報道も、事前から「過半数」を巡る記事が多くなるのですが――毎日新聞用語集は「誤りやすい表現・慣用語句」の欄で「過半数を超える」という言い回しについて、「半数を超える」「過半数に達する」と直すよう案内しています。「過」と「超」で意味に重複感があるためです。

ただし、都議選の場合なら定数の半分をギリギリ超える「64」という数字を「過半数」というポイントとして、「過半数(64議席)を超える」とすれば違和感がなくなるようにも思います。普段はあまり意識されない言い回しだと思いますが、皆さんはどう感じるでしょうか。

(2021年07月01日)

 

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