「危ぶむ」の目的語には、「失敗」よりも「成功」を入れたいとした人が3分の2を占めました。「危ぶむ」は特に「実現しそうもないと思う」という意味で使われることも多く、「失敗」よりは「成功」がなじむと考える人が多かったようです。

「危ぶむ」という言葉の使い方について伺いました。

3分の2は「成功を危ぶむ」を選択

今度のイベントの「○○を危ぶむ」――何を入れますか?
「失敗」を危ぶむ 26.8%
「成功」を危ぶむ 66.8%
上のどちらでもよい 6.4%

 

「危ぶむ」の目的語には「成功」を入れたいとした人が3分の2を占めました。「危ぶむ」は「悪い結果になるのではないかと不安に思う」という意味の語ですが、特に「実現しそうもないと思う」という意味合いで使われることも多く、「失敗」はあまりなじまないと考える人が多かったようです。

「危ぶむ」の二つの意味

国語辞典で「危ぶむ」を引くと、説明は「危ながる」「心配する」という大枠では一致しているのですが、何をどう心配するかという点では少しバラつきがあります。そうした差を一つの辞書で明示しているのが新選国語辞典9版の説明でした。いわく、

あやぶむ【危ぶむ】①危ないと思う。あぶながる。「子どものひとり旅を―」②できそうも無いと思う。「成功を―」

とのこと。何事かの先行きが悪い方へ転ぶのではないかと案じるのが①、望ましいことが実現しないのではないかと心配するのが②です。

①の場合は、目的語にはいろいろなものを取ることができそうです。他の辞書に載っている用例は「安否を危ぶむ」。また「山の天気を危ぶむ」というものもありました。いずれも、「子どもがひとり旅で危険な目に遭う」「安全ではなくなる」「天気が悪くなる」といった悪いことが起きるのではないかと心配する趣旨です。

②の場合も、やはり悪い方へ転ぶのではないかと考えるのが「危ぶむ」です。他の辞書の用例を見ると「実現を危ぶむ」「完成が危ぶまれる」「卒業が危ぶまれる」と言ったものが挙げられています。いずれも成就してほしいことが成らないのではないかと心配する表現です。

「失敗を危ぶむ」でも文意は伝わりそうだが…

仕事中、たとえばこんな文章に出合うことがあります。

「コロナ禍で就職氷河期の再来を危ぶむ声も少なくない」

「失敗を危ぶむ」のような形になっていますが、就職氷河期が再来してしまうのではないかと危ながる、不安がる趣旨だというのは伝わると思います。ただし、この文を読んで何となく違和感があるとしたら、「危ぶむ」の②、実現しないのではないかと心配するという意味に照らした場合、一見「再来しないのではないか」と案じる意味にもみえるところによるのでしょう。

もちろんそんな心配をするわけはないので、この文章自体が誤解を招くものとは言えないとは思いますが、「再来を恐れる」「~を危惧する」などとした方が、文意ははっきりしそうです。「危惧」は辞書を引くと「あやぶみおそれること」(日本国語大辞典2版)とあり、「危ぶむ」とほぼ意味が重なるのですが、「惧(おそ)れる」と読む「惧」の意味から、望ましくない事態が起きることを懸念する場合に使うことができます。

伝わりやすい形を選びたい

出題者としては「失敗を危ぶむ」という言い方も、必ずしも誤りというわけではないと考えています。辞書でも、明鏡国語辞典3版は「生態系の破壊を危ぶむ」という用例を載せており、悪い結果になるのではないかと心配する意味として、ネガティブな目的語を取ることもできるという例と言えます。

ただし、アンケートの結果からは、望ましいことを目的語にする方がよりなじむ使い方と考えられていることが分かります。「危ぶむ」を使う際にはそうしたことを踏まえると、文意が伝わりやすくなるのではないでしょうか。

(2021年07月13日)



質問に際して

「危ぶむ」という言葉は「事の成り行きが、悪い結果になるのではないかと不安に思う。あぶないと思う」(大辞泉2版)という意味で使われます。質問文の例に照らせば、イベントがうまくいかないのではないかと心配する、という意味です。この場合は「失敗」を入れても「成功」を入れても、「失敗するのではないか」「成功しないのではないか」という形で、それぞれ意味が通じるようにも思えます。

ただし辞書によっては「不確かで実現しそうもないと思う」(日本国語大辞典2版)のような説明を加えているものもあります。これに従うと、「失敗」が実現しそうにないと思う、という場面は考えにくいので、「成功を危ぶむ」の方が言い回しとしてこなれているものと考えられるでしょう。

出題者としては日国の説明寄りの考えを持っていますが、実際の用例は「成功/失敗」の両方に類する言葉が使われている印象も持っています。皆さんはどう使うでしょうか。

(2021年06月24日)

 

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