「持続可能な」という意味の英単語「sustainable」をカタカナではどう書くかという問いに、回答はほぼ三つどもえという結果となりました。原音に近いのは「サステイナブル」ですが、表記が安定するにはまだ時間がかかりそうです。

英単語「sustainable」をカタカナではどう書くかうかがいました。

回答はほぼ3分割

「持続可能な」という意味の英単語「sustainable」。カタカナではどう書きますか?
サステナブル 36.8%
サスティナブル 28.2%
サステイナブル 35%

 

多い方から「サステナブル」「サステイナブル」「サスティナブル」の順になったものの、それぞれの差はわずかで、ほぼ三つどもえの結果となりました。これだけ“見事”に割れてしまうと、どれか一つに表記を統一するのはなかなか難しいかもしれません。

原音に近いのは「サステイナブル」

英単語「sustainable」は、動詞「sustain(持続させる)」に可能の意の「able」がついた形容詞です。「sustain」の発音をカタカナで表すと「サステイン」。そのため原音から考えれば、「sustainable」も「サステイナブル」と表記するのが忠実だと言えます。

一方、「メンテナンス(maintenance)」の動詞形「maintain」は、「メインテイン」に加えて「メンテイン」のように発音することがありますが、このように英語では「ai」など二重母音の発音が簡略化される例がいくつか存在します。しかし「sustainable」は「サステナブル」「サスティナブル」のようには言わず、「サステイナブル」と「ai」をしっかり発音しています。

また、新聞の基本的なルールを定める「新聞用語集」(日本新聞協会発行)には、「原音で二重母音の『エイ、オウ』は、原則として長音とみなす」との記述があります。「チェーン(chain)」「メード・イン・ジャパン(made in Japan)」といった具合です。この原則に照らせば「テイ」は「テー」となるため「サステーナブル」と表記することになるのですが、この表記はほとんど見かけません。

ただこのルールは例外を認めており、「エイト(eight)」「レイン(rain)」のように長音表記がなじまないものは「エイ」と書くことにしています。この例外規定を踏まえると「sustainable」も「サステイナブル」になるでしょうか。

「サスティナブル」を“誤り“とする辞書も

発音や表記の原則から、「サステイナブル」で決まり――と言いたいところなのですが、今回の結果からも分かるように「サステナブル」「サスティナブル」の表記もある程度定着しているため、そう一筋縄ではいきません。毎日新聞の記事データベース(東京本社版)で検索してみても、固有名詞も一定数含まれているものの、「サステナブル」56件、「サスティナブル」40件、「サステイナブル」36件と“見事”に割れています。

職場にある国語辞典の記述をいくつか見比べてみると、「サステイナブル」または「サステイナビリティー(『持続可能性』を意味する名詞)」で立項しているのは広辞苑、大辞泉、三省堂国語辞典、三省堂現代新国語辞典。「サステナブル(サステナビリティー)」は大辞林、新明解国語辞典、明鏡国語辞典と、こちらも見解が割れています。「サスティナブル(サスティナビリティー)」を見出し語に取った辞書は見つからなかったのですが、サスティナブルとも書く、などと説明を付しているケースは複数ありました。

その中で気になったのが三省堂国語辞典7版の記述。なんと「あやまって、サスティナブル」と書かれています。たしかに出題者も「発音を考えればサスティナブル表記は微妙かなあ」と思うのですが、それを「誤り」だと言い切るとは!

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外来語の慣用表記の難しさ

新聞のカタカナ語表記においては、原音に近い表記では小文字であっても、大文字を用いる場合があります。例えば「水=water」は「ウォーター」のように発音しますが、毎日新聞では「ウオーター」としています。これは「原音で『ウィ、ウェ、ウォ』の音は原則として『ウイ、ウエ、ウオ』と書く」(新聞用語集)という決まりがあるからです。大文字で書くというのは新聞向けのルールであるため、みなさんが文章を書く際に、原音を尊重して「ウォーター」とするのはもちろん構いません。

しかし「sustainable」は「ティ」と発音するわけではないのだから、原音に近づくわけでもないのに「サスティナブル」とするのは「誤り」だと言いたいのかもしれません。ただし、音楽関係ではキーボードなどの「サスティンペダル」のように、音の持続について「サスティーン」「サスティン」とする慣用があり、これが「サスティナブル」につながっている可能性もあります。

カタカナ表記が本来の発音からは少しずれてしまった例は他にもあります。例えば「entertainer(芸人)」。「entertainer」も「ai」の二重母音を脱落させずに発音しているため、カタカナで書くならば「エンターテイナー」が原則になります。しかし、日本人の耳には「イ」の音が聞き取りにくかったり、あるいはネーティブもほとんど発声していなかったりするためか、「エンターテナー」の表記も見かけます。

仕切りを表す「partition」も発音を再現するなら「パーティション」が“正解”であるはずなのに、「パーテーション」の表記も浸透しています。このように発音からは少しずれてしまうものの、一種の「和製英語」的に日本人になじみやすい表記が採用されることはあるのです。それゆえ「サステナブル」「サスティナブル」も和製英語のようなものだと考えれば、一概に誤りだと切り捨てるのは難しいでしょう。

使用頻度が上がれば表記も固まるか

「SDGs」が定着してきたとはいえ、現段階で「sustainable」は「持続可能な」と日本語に訳されることが大半であるため、カタカナ語としてそのまま使われるケースはそれほど多くありません。しかし、今後カタカナの登場頻度が増えていけば、どの表記にすべきか一層悩むことになりそうです。新聞上の表記としては「原則」に一番忠実な「サステイナブル」に分がありそうですが、果たしてどうなるでしょうか。

(2021年05月28日)



質問に際して

2030年までに世界が達成すべき目標を掲げた国連の「持続可能な開発目標(SDGs=Sustainable Development Goals)」。少しずつこの用語が社会に定着してきたのに伴い、「sustainable」という英単語を目にする機会も増えています。

日本語にするなら「持続可能な」「環境にやさしい」などと訳せば多くの場合で意味は伝わり、さほど問題にはなりません。ただ、音をカタカナで表そうとすると、「サステナブル」「サスティナブル」「サステイナブル」と表記が複数存在します。

英語の発音を忠実に再現するなら「サステイナブル」でしょうか。しかし、国語辞典をめくると「サステナブル」を見出し語にとっているものも多く、「サステナブル」「サステイナブル」が半々といった具合。比較的新しい語ゆえに新聞・通信各社は大半が表記を取り決めていないため、毎日新聞でも3通りの表記が併存している状況です。

「発音を考えれば『サスティナブル』はナシかなあ」と出題者は考えるのですが、この表記もそこそこ見かけます。さて、みなさんはどの表記がしっくりくるでしょうか。

(2021年05月10日)

 

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