「あつい」友情という場合にどう表記するかは「内容によって使い分ける」「熱い」がそれぞれ3割前後、「厚い」「篤い」は2割弱となりました。表記によってそれぞれのニュアンスがあり、伝えたい内容によって使い分けるのがよさそうです。

「あつい」友情という場合、どの表記がしっくりくるかについてうかがいました。

「使い分ける」がやや優位も回答は分散

「あつい」友情を描いた小説――どの表記を使いますか。
熱い 29.8%
厚い 19.1%
篤い 16.5%
内容によって使い分ける 34.6%

 

「内容によって使い分ける」「熱い」がそれぞれ3割前後、「厚い」「篤い」は2割弱となり、票が分散する結果となりました。

「友情にあつい」であれば「厚」か「篤」

国語辞典で「あつい」を引いてみました。友情についての記載や例文を探してみると、大半は「友情にあつい」の形で載せていました。「~にあつい」であれば「深い」という意味を持つ「厚い」、または「篤い」が一般的に思えます。

一方、「あつい友情」を載せている辞書もいくつかありました。現代国語例解辞典5版、三省堂現代新国語辞典6版は「厚い」としており、大辞林4版は「篤・厚」の項目で取り上げています。「あつい友情」も、辞書の上では「真心のこもった」「深い」「甚だしい」という意味で解釈されており、それゆえ同様に「厚い」「篤い」が選ばれていると考えられます。

熱量を伝えたいなら「熱」も

ちなみに「厚」と「篤」の書き分けについて、明鏡国語辞典3版は「もと【篤】を使ったが、今は【厚】が一般的」としています。現代において「篤」が積極的に用いられるのは「篤い病」(←重篤)、「信仰心が篤い」(←篤信)のように、熟語との結びつきが深いケースが多く、「厚」の方が広く用いられる傾向にあります。また新聞では、常用漢字表で
「篤」に「あつい」の訓読みが認められていないため仮名書きにしており、分かりやすさの観点から考えれば「厚い友情」に分があるかもしれません。

では「熱い友情」はどうでしょう。たしかに辞書には用例が記載されていないものの、「熱」を使うことで別のニュアンスが強調されます。例えば、互いに愛し合って熱中しているさまを「お熱い仲」と表現しますが、燃え上がるような高まりを表す「熱」であれば、関係の熱量を伝えることができます。友情の深さというよりも、その内容の“熱さ”を出したいのであれば、「熱」を使うのがうってつけでしょう。

ニュアンスにより使い分けるのがおすすめ

円満字二郎さんの「漢字の使い分けときあかし辞典」(研究社)を見ると、次のような解説があります。

考え方としては、まず、比較的短い間の“感情の高ぶり”に重点がある場合には、たとえば「熱い友情」のように《熱》を使う。次に、《厚》には“中が詰まっている”という安定感があるので、長く安定した“ゆるぎなさ”を出したい場合に「厚い友情」と書く。最後に、時とともに深まっていく“ひたむきさ”を表現したい場合には、『篤い友情』のように《篤》を用いる。

「あつい友情がチームを勝利に導いた」のように、いずれの表記を使っても意味が伝わるケースもあります。信頼関係の深さなのか、関係の熱さなのか、前面に出したいニュアンスに応じて使い分けるのがよさそうです。「熱く深い友情」などとすれば双方の意味を重ねることもできるでしょう。

(2021年03月26日)



質問に際して

「熱い」友情を描いた小説――。こう書かれた原稿を前に、果たして「熱い」でよいのだろうかと悩みました。

友情に「あつい」は「厚い」と書くことを考えれば、「厚い友情」が適切なような気もします。そのためか共同通信は用語集に「厚い友情」の用例を載せています。ただ、「信仰心が篤い」のように使われる「篤い」(常用漢字では「篤」に「あつい」の訓読みが認められていないため、新聞では仮名書き)も、「厚い」と同じように「深い」という意味を持つため、こちらを採用してもよさそうです。

では「熱い」はどうでしょう。「熱」は燃え上がるように高まるさまを表します。「熱血」「熱情」といった熟語を作ることから、スポ根的な小説や青春ものなどであれば「熱い友情」とした方がそのイメージが伝わりやすいかもしれません。

というわけで、新聞では用いない「篤い」を含めると、3通りの表記が可能だと思います。冒頭の事例では小説の中身に触れていなかったためそのままにしたのですが、皆さんはどの表記がしっくりくるか、うかがいたいと思います。

(2021年03月08日)

 

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