心地「好い」は仮名書きすれば「よい」である、とした人が3分の2を占めました。「心地いい」を選んだ人は15%程度。「気持ちいい」「格好いい」などは書き言葉としても定着しましたが、「心地いい」はそこまでには至っていないようです。

「心地いい」と「心地よい」、どちらを使うかを伺いました。

「心地よい」が3分の2を占める

心地「好い」――漢字を使わずに書くならどう書きますか?
心地いい 15.5%
心地よい 66.8%
上のいずれでもよい 17.6%

 

心地「好い」は仮名書きすれば「よい」である、とした人が3分の2を占めました。新聞でも見ることがある「心地いい」を優先する人は15%程度と、思ったよりも少ないという印象を受けました。

「心地いい」は「会話で」とする辞書も

十数点の国語辞典を引いてみた中で、「ここちいい」を見出し語として掲げているものはありませんでした。「ここちよい」の項目の中で「心地いい」とも言うと示していた辞書は2点。

・気持ちがよい。ほどよい快感にひたるようす。快い。心地いい。(三省堂現代新国語辞典6版)
・心や体に受ける感じがよい。〔会話で〕心地いい。(三省堂国語辞典7版)

三省堂国語辞典は「会話で」というただし書きを付けており、「心地いい」はおもに口頭表現であると示しています。今回の質問で「どう読むか」ではなく「どう書くか」を尋ねたのも、主に口頭で使われるとみられる表現が書き言葉に入り込んできたかどうかを確かめたいと考えたからです。アンケートの結果は、書き言葉としてはまだ「心地よい」の方がなじむと考えられていることを示しています。

単独の「いい」は書き言葉に定着

そもそもは「いい」が口頭表現です。日本国語大辞典2版の「いい」の項目には「語誌」として、

江戸時代前期に見られる「えい」の関東なまりとして生じた語か。明和、安永頃(一七六四~八一)から広まり使われたらしく、明和八年(一七七一)頃「遊子方言・発端」には通り者が「ゑい」を用い、明和八年「俠者方言」に「ゑゑ」が見えるなど、俠(きお)い者や、それに近い人から用い始めたようである。口頭語として共通語化したものが徐々に文章語にも定着し、意味は「よい」と同じように用いられる。

とあります。「俠い者」は字面から分かるとおり俠客(きょうかく)のような人のこと。「いい」はどちらかと言えば崩した言葉だったのでしょう。それでも説明にあるとおり、「いい」は既に文章語にも浸透しています。

文化庁の「言葉に関する問答集4」(1978年)は「『よい』と『いい』」という項目の中で「次のような、連体形の場合は、現在、あまり『よい』は使われないようである」と言い、「いい男 いい感じ いい加減 いい迷惑 いい年をして」などの例を挙げます。これらは書き言葉としても十分定着しているものです

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現時点では「心地よい」と書きたい

「心地よい」と同じような形の語でも、「気持ちいい」や「格好いい」のように、現在では書き言葉でも「よい」よりも「いい」がよく使われるものもあります。こうしたことを考えると、「心地いい」が書き言葉として浸透することも十分あり得ます。

それでも今回のアンケートの結果で見えたのは、まだ書き言葉としては「心地よい」がだいぶ優勢だということ。出題者が「心地いい」に感じていた違和感も多数派の感覚だったようです。書き言葉として使う場合には、あえて会話的に見せようという効果を狙うのでなければ「心地よい」とすることをおすすめします。

(2021年02月09日)



質問に際して

「いい気分だ。感覚的に楽しい。快い」(岩波国語辞典8版)――こうした心の状態を「心地好い」と言います。ただし、常用漢字表は「好」には「コウ」「このむ、すく」という音訓しか認めていません。よって、毎日新聞用語集では「心地よい」と書くよう案内しています。しかし、これを「心地いい」とする表記も見ることがあります。

「いい」は「『よい』のくだけた言いかた」(同)で、文章よりは口頭で使われます。しかし「気持ちいい」や「格好いい」が普通に使われる表現であることを考えると、「心地いい」と表記されるのも普通のことなのかもしれません。

個人的には口頭で使われるのはまだしも、書き言葉としてはしっくりこないのですが、毎日新聞でも使用例は決して少なくありません。ここで「心地いい」を認める人が多ければ、出題者も諦めがつくと思います。皆さんはどう表記するでしょうか。

(2021年01月21日)

 

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