「恩師」が指す人は「過去に教えを受けた先生」が最多で3分の2を占めました。一方で、現在教わっている先生も含む、とした人も3割を超えており、言葉に揺らぎがみられます。先生を高める言葉として使われる面もあるかもしれません。

「恩師」という言葉について伺いました。

「過去の先生を指す」が3分の2

「恩師」といったらどんな人を指しますか?
過去に教えを受けた先生 66.6%
現在教わっている先生 1.2%
上のいずれも含む 32.2%

 

「過去に教えを受けた先生」が最多で3分の2を占めました。一方で、現在教わっている先生も含む、とした人も3割を超えています。

国語辞典の説明も過去形

今回の質問のきっかけになったのは、高校ラグビーの写真に付された「恩師・○○監督の指導を受ける選手」というキャプションです。現在指導を受けている人に「恩師」という言葉を使うのだろうか、という疑問を持ちました。

国語辞典で「恩師」の項目を引くと、基本的には「教えを受けた、恩のある先生」(大辞泉2版)のように説明されています。「教えを受け、世話になった先生」(岩波国語辞典8版)、「教えを受けた、恩義のある先生」(明鏡国語辞典3版)など、過去のこととして記述するのが標準的です。辞書を見た限りでは、過去に教えを受けた先生のこと、とするのが間違いないようです。

あえて「恩師」が使われる場合

もっとも、毎日新聞の過去記事を見てみると、その時点で指導中のコーチなどであっても「恩師」という呼び方をしている場合があります。指導者の自宅に住み込みで指導を受けている選手が「恩師と共同生活を送る」と書かれている記事もありました。

辞書でも特に「教えを受けた教師を高めていう語としても使う」(明鏡3版)、「師に対する敬称」(広辞苑7版)のような説明を加えているものがあります。単に「指導者」「先生」と言って済まないほどに、教わる側から見ての感謝・尊敬の念が強い場合には、あえて「恩師」という言葉が選ばれるのかもしれません。

「教え子」に似る揺らぎ

アンケートの結果から見ても、また辞書類の説明を見ても、「恩師」という言葉は、基本的には過去に教わった先生を指して使うのがよいでしょう。現在の先生を指して使うのは言葉の揺らぎと受け止めますが、あまりおすすめはできません。

以前当ブログで「教え子」という言葉について、現在教えている生徒か、過去に教えた相手か、という話題を取り上げたことがありますが(「教え子とマージャン」は不祥事か)、「教え子」が「現在」に傾斜して「元教え子」という言葉も登場するといった用法の揺れが見られました。恩師と教え子、対をなすような言葉がともに揺らいでいるのは興味深いことと思います。

(2020年01月26日)



質問に際して

ある日の原稿で「恩師・○○監督の指導を受ける選手」というくだりに首をかしげました。「恩師」というのは過去に学恩をこうむった先生を指すのではないか、と思ったからです。記事などから見るに、この監督は現在もチームを率いている人。記者か出題者のどちらかに勘違いがありそうです。

手近な辞書を引いてみると「教えを受け、世話になった先生」(岩波国語辞典8版)とあります。「なった」とあるのだから、やはり過去に教わった人のことではなかろうか。

しかし辞書によっては「教えを受けた先生。師に対する敬称」(広辞苑7版)という説明を載せています。「敬称」というなら今教わっている先生にも使えるのかも。単に師と呼ぶのでは足りない、大いに恩のある先生です、ということでしょうか。

どうも釈然としません。皆さんの意見がはっきり偏れば、こちらのモヤモヤもすっきりするかもしれません。この言葉、皆さんはどうお使いでしょうか。

(2020年01月07日)

 

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