「ふよう」になった物を処分する、という場合は「不用」と書くか「不要」と書くか。「不要」を選んだ人が多数派でしたが、半数には届かず。意味の上からの使い分けには悩む場合もあり、表記を常に安定させるのは難しいかもしれません。

「不用」「不要」の使い分けについて伺いました。

最多は「不要」も半数届かず

「ふよう」になった物を処分する――どう書きますか?
不用 27.5%
不要 47%
いずれでもよい 11.4%
上の二つを使い分ける 14.1%

 

「不要」を選んだ人が最多でしたが、半数には届きませんでした。「不用」は4分の1ほど。いずれでもよいという人は1割強で、意外に少ないという印象を持ちました。大きく支持を得た表記はなく、場合によって表記が揺れることも考えられます。

古くからの表記は「不用」

そもそも「不用」と「不要」は違うのか。国語辞典を引いてみても、新明解国語辞典(8版)などは「ふよう」の項目に「【不要】・【不用】」をひとまとめに載せているほどで、意味の違いをあまり追究しない考え方もあるようです。

しかし、日本国語大辞典2版を見ると、記述の分量の差が目を引きます。「不用」の項目は56行あるのに対し、「不要」は7行のみ。用例も「不用」は土佐日記(10世紀)のものが既にあり、宇津保物語(同)、枕草子(同)など豊富な一方、「不要」の古い例は「正法眼蔵」(13世紀)が挙げられるのみ。広辞苑7版も「不要」の項目で「明治期の造語」と注記しており、古くから用いられているのは「不用」だと言えるでしょう。

土佐日記の用例は「今日、節忌(せちみ)すれば、魚(いを)不用」というもの。「節忌」は「斎日にする精進潔斎」(広辞苑)。なまぐさを食べない日なので、魚は要らなかったのだ(なのに米と交換で手に入れてしまっていた)という趣旨です。小学館の日本古典文学全集の注釈は「不用」について「漢語で、音読み。筆者側の愚かさを言う強い語調」としています。食べない魚を手に入れたのがそんなに悔やまれたのか、というのはともかく、「漢語」とあることから表記も「不用」で確かだろうと察せられます。

意味よりも用例に根拠を求める

もっとも、古くからある表記が「不用」だからといって、それを墨守せねばならないものでもありません。現に「不要」を載せていない辞書というのはありませんし、新聞・通信各社の用語集にも使い分けが載っています。

ただし、繰り返しますが意味の上からの使い分けには簡単にいかない面があります。

【不用】①必要がないこと。いらないこと。また、そのさま。不要。(②以下略)
【不要】いらないこと。必要がないこと。また、そのさま。

(大辞林4版)

――もう少し頑張って説明してくれても、と思いますが、意味上の違いを説明するのはかくも難しいと考えるべきなのでしょう。

ではどうするか。実践的な使い分けの方法としては、意味の違いを強調するより、現に使われている用例から積み上げていくのがよいかもしれません。たとえば昨年来のキーワード「不要不急」は「不用不急」とは書きません。「不要品」も間違いではありませんが「不用品」と書かれることが多い。文化庁の「言葉に関する問答集7」には「保証人不要」という例が載っていますが、これも「不用」は使いにくく感じます。

用例に表記の根拠を求めるというのは「鶏と卵のどちらが先か」的な問題を生みかねないのですが、現に皆が書くような表記を使う、というのは一つの立場として十分ありうると考えます。

考え方が難しい「ふようになった」

読売新聞の用語集は「不用〔使わない、役に立たない〕」「不要〔必要でない、なくても支障をきたさない〕」として、意味の上からの使い分けにもう一歩踏み込もうとしています。ただし、それでも今回の質問のような「ふようになった」は分類が難しいでしょう。あえて言えば、役に立たなくなったものについては「不用になった」と言い、機能的には問題なくても自分にとっては用がないものには「不要になった」と言うでしょうか。

今回のアンケートでは「不要」を選んだ人が相対的に多数でした。共同通信の用語集は使い分けについて「迷う場合は『不要』を使う」としていますが、同様の感覚を持つ人が多いのかもしれません。

あえて使い分けるか、なじみやすいものに統一するかというのは、校閲記者としても難しい選択です。「ふようになった」の場合は基本的には書き手の表記を尊重しつつ、文脈を踏まえて不自然でない表記としたい、要するに、場合によって表記が揺れることも許容しようと出題者としては考えます。「いずれでもよい」と「使い分ける」の間をふらふらするような説明で申し訳ないのですが、すっきりと割り切れない言い回しもあることは認めなければならないでしょう。

(2020年01月08日)



質問に際して

年末の大掃除にかかった人もいるでしょうか。この機会に要らない物や使わない物を処分する、という人もあることでしょう。

「要らない」「使わない」といったことについて使われる熟語があります。「不要」と「不用」です。毎日新聞用語集の「ふよう」の項目を見ると「=不用〔使われない〕不用品、予算の不用額/=不要〔必要でない〕説明不要、不要不急」とあります。

しかし「使われない」と「必要でない」は、意味が重なる部分が大きいとも思います。多くの場合、要らない物は使わないし、使わない物は要らないし――いずれにせよ処分の候補に挙がりそうです。質問文のような場合はどちらでも構わないのかもしれません。

ところで今年の流行語大賞では候補にも挙がりませんでしたが、個人的な流行語は「不要不急」。これを欠く生活がいかに味気ないかを思い知らされたこの一年でありました。この場合に「不用不急」と書くことはまず無いようです。

(2020年12月17日)

 

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