施設のような持ち出せないものにも「貸し出し」と言えるかどうかは、「許容派7割」「違和感を持つ人も7割」と言える結果になり、受け止め方に悩みます。一方、辞書によっては「貸し出し」の説明に「持ち出し」を含まないものもありました。

「貸し出し」という言葉の使い方について伺いました。

「許容」7割、「違和感」も7割

施設の「貸し出し」という言い方――OKですか?
持ち出せないものに「貸し出し」はおかしい 27.7%
違和感はあるが、許容範囲 42.9%
気にならない 29.4%

 

受け止め方の難しい結果となりました。「おかしい」と「気にならない」が約3割ずつ、そして残り4割が「違和感はあるが、許容範囲」。ということは、「許容派が7割」とも言えるし「違和感を持つ人が7割」とも言えることになります。

「貸し出す」は「貸す」に、しかし「貸し出し」は…

「東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京都が整備した競技会場の貸し出しや一般開放が始まっている」──ある原稿のこんなくだりに頭を抱えました。多くの辞書は、「貸し出す」について「貸して、外へ持ち出すことをみとめる」(三省堂国語辞典7版)というように、「出」の部分を持ち出させる意味と捉えています。会場は持ち運べませんから、もし「会場を貸し出す」という書き方ならシンプルに「貸す」と直して解決することができます(https://mainichi-kotoba.jp/photo-20181226)。

ところが「貸し出し」と名詞の形になると難しさが出てきます。「出し」を削って「貸し」としても意味が通りにくいし、「貸すこと」でもこの原稿ではつながりが今ひとつ。別の語に言い換えようにも、ここでは「開放」との使い分けがある様子だし、「提供」では意味がぼやけてしまう……と、小手先の直しで済みそうにありません。

「持ち出し」以外も認める辞書も

そこで肩の力を抜いて、直さないという選択肢を検討しました。注目したのは、新選国語辞典9版(小学館)の説明です。「③貸してもちださせる」などの前にまず「①他に貸す」を載せています。「出」の意味を物の移動だけでなく「他に対して」という関係性で解釈できるということでしょうか。そのように考えてみれば、だんだんおかしくない表現のように思えてくるから不思議です。こうして一応の根拠を得たことと、直しにくさもあいまって、結局このくだりには手を入れずに通しました。

辞書の恣意的な利用には要注意

たくさんの辞書を引き比べることは、このように時には解釈の幅を広げることにつながります。ただし一方で、辞書の使い方が恣意(しい)的になり、その時々で都合よく解釈するばかりにならないように気をつけねばとも考えています。今回のアンケート結果が「許容が7割、違和感も7割」となったこととあわせ、つくづく難しいものだと感じました。

(2020年12月11日)



質問に際して

「貸し出す」を辞書で引くと、物を貸して持ち出させるという説明がよくみられます。建物や場所などの持ち出せないものについては、「貸し出す→貸す」と直すことで問題のない表現にできます。

しかし「施設の貸し出し」などと名詞の形になると適当な言い換えが浮かばず、よくよく考えてみるとそれほどおかしくない表現のようにも思えてきて、結局手を入れなかったこともあります。

「出」の部分、つまり外部に向けた動きの意味はもっと抽象的な捉え方ができるのか、それともあくまで物理的な移動しか表さないのかという問題だと思うのですが、みなさんはどうお考えでしょうか。

(2020年11月23日)

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