「わかる」感じや程度を表す「わかりみ」。こうした「み」を「自分は使わないし、他人が使ったなら気になる」という人が半数を占めましたが、「気にならない」の合計も半数近くに。まだ紙媒体では見ない用法ですが、慣れた人も多いようです。

「わかりみ」のような近年の「み」の用法について伺いました。

「使わない、気になる」が約半数

「わかりみ(が深い)」のような「み」の使い方、どう感じますか?
自分も使うし、他人が使っても気にならない 21.9%
自分は使わないが、他人が使っても気にならない 26.7%
自分は使うが、他人が使ったなら気になる 2.3%
自分は使わないし、他人が使ったなら気になる 49.2%

 

「わかりみが深い」と言えば「よくわかる」という意味になる、「わかる」感じや程度を表す「わかりみ」。「自分は使わないし、他人が使ったなら気になる」という人が半数近くを占めて最多でした。しかし、「他人が使っても気にならない」という人の合計も半数近くになったということがむしろ目を引きます。形容詞の語幹について名詞を作る接尾語「み」の拡大された用法として、受け入れられつつある可能性があります。

「赤み」や「丸み」から派生

「わかりみ」のような「み」の使い方は、SNS(ネット交流サービス)や通信アプリのやりとりでよく見られるものです。それだけに、ネットに接している度合いの低い人にはなじみの薄い語形とも考えられ、現に出題者の同僚でも「わかりみ」を見たことがないという記者がいました。

一方で、新しい形の言葉として取り上げられる機会も出てきています。辞書編集者の飯間浩明さんによる毎日小学生新聞の連載記事「日本語どんぶらこ」に、「どうして『分かりみ』というの?」という回(2019年1月24日付)がありました。

もともと「み」は、「感じ・度合い」という意味で使うことばです。「この写真は赤みが強い」と言えば、「赤い感じが強い」ということ。それが、若者の間で用法が広がり、「つらみ」(つらい気持ちだ)とか、「うれしみ」(うれしい気持ちだ)とか言うようになりました。

わかりやすい説明と感じます。国語辞典で「み」の項目を引くと「丸みを加えた月」「金メダルの重み」「甘みに飢える」などの例が挙がっています(岩波国語辞典8版)。同時に、動詞「悲しむ」を名詞にした「悲しみ」のような言葉の語尾も影響を与えているかもしれません。「うれしみ」や「悔しみ」には、かつて使われていた「うれしむ」「悔しむ」と言った動詞の名詞形が帰ってきたような感もあります。

「新語」としてはベテランか

「わかりみ」は2018年の「三省堂 辞書を編む人が選ぶ今年の新語」で3位に入っています。これについて選評では「ベストテンに選ぶのは今さら感がある」という意見も出たとのこと。「今年の新語」のプレ企画で14年に「~み」という語尾を選んだことがあったためと言います。

ただし、「わかりみ」のように動詞の連用形、「食べたみ」のように助動詞「たい」、また名詞につく場合もあって用法に広がりが認められたため、18年にも取り上げられたということです。三省堂現代新国語辞典の編集主幹・小野正弘さんによる「わかりみ」の語釈は「理解できること。共感できること。また、その度合い」となっています。

半数近くはもはや「気にならない」

アンケートの回答を、「自分で使うか否か」「他人の使用は気になるか否か」でまとめ直すと下のようになります。

・自分で使う――24.2%、使わない――75.9%
・他人の使用は気にならない――48.6%、気になる――51.5%

自分で使うという人は4分の1程度ですが、他人の使用が気にならないという人はその2倍。浸透が進んでいるとも言えそうです。

接尾語「み」の用法の広がりには、日本語研究からのアプローチも見られます。CiNii(NII学術情報ナビゲータ)から検索できる宇野和さんの論文「Twitterにみるオノマトペに後接する接尾辞ミの機能」(2018年)によると、「スヤスヤみ」「ホカホカみ」といった擬態語に付く形も確認されるとのこと。「より短いことばで、できるだけ具体的に事物を言い表したいというTwitterユーザーのニーズ」(同論文)が今後も持続するなら、こうした「み」の使い方が一過性のものとして消えることはないのではないかと思います。

現状では印刷媒体でこうした「み」を見ることはほとんどなく、新聞校閲にとって注意が必要な表現ではありません。しかし、特定の媒体で新しい用法が急速に広がるさまには面白さを感じます。辞書などの扱いが今後どうなるか気になるところです。

(2020年11月10日)



質問に際して

「わかる」の連用形や形容詞の語幹、果ては名詞などにも付く「み」は、SNSや通信アプリでよく使われる表現で「~の感じ」「~っぽさ」を表します。「わかりみが深い」というのは端的に言えば「よくわかる」で済んでしまうのですが、主語が自分でないところに、対象や自分の感情に対し少し距離を置いている印象を受けます。ほかの品詞の場合は「うれしみを感じる」「昭和みのある街並み」「アイス食べたみ」のように使われます。

先ごろ結果が発表された2019年度の文化庁「国語に関する世論調査」では、他の言葉と連結して言葉をつくる表現についての質問がありました。「セクハラ」などの「~ハラ」や「就活」などの」「~活」といったものです。ただし、同調査ではこのような省略表現しか取り上げておらず、「わかりみ」の「み」のような接尾語については質問していません。

だったらここで聞いてみようか、というのが今回の質問への前段です。選択肢は同調査が使ったものをなぞっています。皆さん、案外もう慣れているかとも思いますが、いかがでしょうか。

(2020年10月22日)

 

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