「直球を左中間に運ばれて適時二塁打を浴びた」という文章よりは、「~適時二塁打とされた」という形を選んだ人が多数派でした。出題者は冒頭の形に違和感を持ったのですが、その理由を説明するのはなかなか難しく感じます。

出題者が違和感を持った文章について、皆さんがどう感じるか伺いました。

この場合は「適時二塁打とされた」が多数派

「直球を左中間に運ばれて『○○』」――二重カギの中に入れるなら、どちらですか?
適時二塁打を浴びた 30%
適時二塁打とされた 60.2%
上のどちらでもよい 9.9%

 

「適時二塁打とされた」を選んだ人が6割という結果になりました。内訳はわかりませんが、野球記事をよく読むかそうでないかも影響するのでしょうか。出題者が違和感を持った形を選んだ人は少数派でしたが、意外に多いとも感じました。

情報を詰め込みすぎると文章が崩れる

「直球を左中間に運ばれて適時二塁打を浴びた」という文章だと、ボールは1回しか飛んでいないのに「投球が打たれる」描写が2度あるため、出題者は違和感を覚えたのですが、みなさんはどんな違和感があったのか聞いてみたいようにも思います。校閲のTwitterへのコメントでは「どちらも違和感はあるが、どちらかといえば……」という声も。その気持ちもよくわかります。

今回の文は、一文の中に多くの情報を詰め込んだことにより、文章がおかしくなってしまった例です。元の文を改めて見てみましょう。

二回は●●に甘く入った直球を左中間に運ばれて適時二塁打を浴び、先制点を与えた。

「運ばれる」「浴びる」という「投球が打たれる」描写が、ワンプレーに対して2度使われています。打たれる描写をひとつに絞るため「適時打を浴び」を「適時打とされ」とすると、この部分は「直球を運ばれ」たことの結果なので、出来事が時系列的になって重複感がなくなります。

文章を削ることですっきりする場合も

できるだけ原文を生かす直しをするのであれば上の形でよいと思うのですが、「●●に甘く入った直球を左中間に運ばれ、先制点を与えた」と、中盤の説明をゴッソリ削ることもできます。また、「浴びる」という言葉を生かして「●●に適時二塁打を浴び、先制点を与えた」とすることもできるでしょう。個人的にはこの2例のように文を削ってしまったほうが、すっきりしてわかりやすいと感じます。

とはいえ、校閲としては勝手にそこまで手を入れるわけにもいきません。小手先の直しではどうしても文章がつながらない場合などは出稿部デスクと相談して調整しますが、基本的には原文を尊重する形で最大限読みやすくなるようにしたいと考えています。このあたりは好みもあるので、あくまで個人の主義ですが……。

ただ聞くだけでもいいですか?

自分が違和感を覚えた文でも、「そんなに気にならない」という反応が返ってくることは多々あります。このアンケートを担当する際は「一般的にどう思われるか知りたい!」というものを取り上げるようにしていますが、結果について解説を記事にすることが難しいケースも多く、本当はあれもこれも聞きたいんだけどな~という表現がたくさんあります。いつか、ただただ聞くだけのアンケートも取ってみたいものですが……。(と書いたら「こういうアンケートで説明する経験を積むと、出稿部に説明するときにも役に立ちますよ」と、ブログを編集するデスクに言われました……)

(2020年10月02日)



質問に際して

元々の文は、プロ野球の試合で先発投手が「●●に甘く入った直球を左中間に運ばれて適時二塁打を浴び、先制点を与えた」というものでした。このくだりに違和感があり「~適時二塁打とされ」としたのですが、違和感の理由をうまく言葉にできず、説明に四苦八苦しました。

改めて考えてみると目的語が二つ(「直球」「適時二塁打」)あるために回りくどくなっているのかと思ったのですが、そもそも「運ばれる」と「浴びる」が一つのプレーに対して同時に使われることが不自然なようにも思います。この文を映像で考えると、ボールは1回しか飛んでいないのに「投球が打たれる」描写が2度あるためです。

こういった「なんか変だけどうまく説明できない」描写には度々出合います。さて、みなさんは質問の文にどちらを当てはめたでしょうか

(2020年09月14日)

 

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