政権の「せいとうせい」をどう書くかという問いへの答えは「正当性」が過半数を占めました。「正統性」は4割程度。新聞協会は「正しい系統」を意味する「正統性」を採用していますが、この二つの使い分けには微妙なところもあるようです。

「せいとうせい」という言葉の使い分けについて伺いました。

「正当性」が過半数占める

多数の意思に支えられた政権が「せいとうせい」を持つ――どう書きますか?
正当性 55.2%
正統性 40.5%
どちらでもよい 4.3%

 

「正当性」が過半数を占めました。「正統性」も4割程度で大差がついたとは言えませんが、日常的になじみのある「正当性」が選ばれやすい傾向はありそうです。

新聞協会用語集は「政権の正統性」を記載

回答から見られる解説でも書きましたが、毎日新聞用語集は「正当」を「不当の対語、正しく道理にかなう」と説明し、「正統」を「異端の対語、正しい系統」としています。「政権の正統性」という例も挙げており、したがって、毎日新聞としての正解は「正統性」になります。これは日本新聞協会の「新聞用語集」(2007年版)にも出ている用例なので、大抵の新聞社・テレビ局は同様の見解を取るだろうと思います。

ただし、実際の使い分けには難しい面もあるかもしれません。例えば、広辞苑7版は見出し語「正統」の子項目として「正統性」を載せていますが、説明は「国民が政治の仕組みと政府の活動を承認・支持する度合のこと。正当性とも書く」というもの。政権について使う場合は「正統性」が良かろうと感じさせる説明ですが、最後の一文「正当性とも書く」に、はしごを外されたような思いがします。どっちでもいいとおっしゃいますか。

ちなみに「正当性」は「法律・社会通念から正当であると認められる状態にあること」。「正当」は「正しく道理にかなっていること」。政治に限らず、日常的にも広い場面で使えます。政治について言うなら、民主国家では、国民が投票で承認しない限りはどんな政権も政権として存立できないはずで、「法律・社会通念」に照らしても正当性は認められません。正統性と正当性が重なるのがあるべき姿とも言え、どちらを書いても構わないというのは、ある意味では善いことなのかもしれません。

政治学では使い分けを求めるが…

「新訂版現代政治学事典」(ブレーン出版、1998年)を見ると、「レジティマシー」の項目に「正統性、正当性」という日本語が添えられています。英語のlegitimacyは一般に「正統性」の訳語があてられますが、事典の説明はもう少しあやがあります。

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レジティマシーについて、①狭義の正統性(王朝系統の正統性)②正当性(社会的妥当性:社会的に妥当なものとして容認されている事実)③正統性(倫理的正統性:支配が倫理的に正しいとされる究極的根拠)――の三つに区分し、特に②と③の区分は大事だと言います。「正当性を持つもの、必ずしも正統性を持つものでなく、また、正統性を持つもの、必ずしも正当性を持つものではない」と。この二つを区別するからこそ、「被治者〔国民〕の抵抗権」なども説明できるということです。

しかしやはり、「一般に、この両者は十分に区別されず、時には混同されている」とも言います。これは同音で紛れやすい日本語についてだけでなく、外国語の場合も含めてのコメントで、そもそも概念として使い分けに難しい部分があるのでしょう。

使い分けの意識は持ちたい

アンケートの結果は「正当性」が「正統性」を上回りましたが、大差が付いたわけではなく、新聞協会が推す「正統性」に対する違和感はさほどなかろうと思います。細かく使い分けるのが難しいので用途の広い「正当性」で全てカバーする――ということも不可能ではないと思いますが、完全に同義語とは言えない以上、政権については「正統性」を使うことをお勧めしたいと考えます。

ところで、正統は「しょうとう」とも読みます。北畠親房による史論「神皇正統記(じんのうしょうとうき)」は、南北朝時代に南朝の正統性を述べたもの。仮に「しょうとう」と読む習慣が続いていれば、今の世で「正統」と「正当」の使い分けに悩む度合いは、幾分か減っていたかもしれません。

(2020年09月29日)



質問に際して

今般の自民党総裁選は、党員投票抜きで行われることについて党内から反発も出ました。いわく「党員の意向が反映された政権が『せいとうせい』をもつ」とのこと。本来なら政権は国民の選挙を経なければならないのではないか――という点はおくとして、党員投票をしないよりは、した方が政権としての由緒正しさ、もっともさを主張できる、という考え方でしょう。

さて、その「せいとうせい」ですが、これも表記に悩むことが少なくありません。毎日新聞用語集は「せいとう」の項目で、「正当」を「不当の対語、正しく道理にかなう」と説明し、「正統」を「異端の対語、正しい系統」としています。「正統」の用例には「政権の正統性」も挙げられており、上記の例では「正統性」と書くのが毎日新聞のルールにかなっていると言えます。

もっとも、投票によって支えられる政権の方が「正当性」がある、と書いても特段の不都合はなさそうに思われます。「正統」と「正当」はカバーする範囲が重なりがちな分、どちらを使うか迷いが生じやすいのです。党員投票抜きで選ばれた総裁が十分な「正統性」ないし「正当性」を持ちうるかも気になるところですが、ここではまず、用語の選択について皆さんのご意見を伺いたいと思います。

(2020年09月10日)

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