「3タテ」を本来の意味の「3連敗」と受け取った人は3割強にとどまり、「3連勝」と取る人が多数派でした。毎日新聞では連敗の意味に限定していますが、対戦ゲームの世界では連勝の意味で使われるなど、変化の兆しもあるようです。

「3タテ」を「3連敗」「3連勝」どちらの意味で受け取るかについて伺いました。

「3連勝」と受け取る人が多数派に

「〇〇、××に3タテ」――この見出し、どちらの意味で受け取りますか?
〇〇が××に3連勝した 45.4%
〇〇が××に3連敗した 33.3%
どちらにも取れる 21.4%

 

「3タテ」の本来の意味である「3連敗」と受け取った人は3割強にとどまり、「3連勝」と解釈する人が多数派という結果になりました。「どちらにも取れる」を含めると3分の2の人が「3連勝」と誤解する可能性があり、紛らわしい使い方は避けた方がよさそうです。

「3タテ」が慣用、今年は「6タテ」も

「3タテ」の「立て」は「助数詞。勝負に続けざまに負けた数を数えるのに用いる。連敗」(大辞林4版)。助数詞である以上「2タテ」「4タテ」などバリエーションがあってもいいはずですが、使われるのはほとんどが「3タテ」であり、新選国語辞典9版のように「さんたて」を見出し語にしている辞書もあります。「続けざまに」といっても多くの場合はプロ野球の同一カード3連戦について用いられるため、「3タテ」が慣用として定着したのだと考えられます。

毎日新聞1956年4月20日付朝刊から

とはいえ、同一カードが「3連戦」でない場合には、必然的に「3タテ」ではなくなります。今季は新型コロナウイルス対策として、8月下旬までパ・リーグで同一カード6連戦が組まれましたが、この時に6連敗を喫する「6タテ」が登場して話題になりました。新明解国語辞典7版には「三回以上の場合に使う」との記述がありますが、回数の多寡というよりは同一カードの試合数に左右されるはずなので、仮に2連戦であれば「2タテ」も理論上は成り立つでしょう。また、3連敗だとしても、対戦相手が途中で代わっての3連敗であれば「3タテ」とは言いません。

なぜ元々は「連敗」なのかは不明

「タテ」とカタカナで書くことからもわかるように、現在では「3タテ」に「立て続け(の連敗)」という意味はほとんど意識されません。古い辞書などをあたってみても、立て続けの「連敗」のみに限定されるようになった経緯は不明で、原義が薄れてしまった現在においては「連勝」の意味に混同されてしまうのも無理はありません。

毎日新聞では「3タテ」について、「3連敗の意で、『3タテを食う』『3タテを喫する』と使う。3連勝したときは『〇〇に3タテを食らわす』のように表記し、見出しは『〇〇を3タテ』などとする」と用語集に記載し、注意喚起しています。しかし、このような記載があること自体が、「連勝」と取り違えられやすいことを物語っています。

野球以外でも用いられる「3タテ」

また近年では、特に対戦ゲームの世界において「3タテ」が登場することが増えています。「3タテした」という場合は「勝ち抜きの3対3の対戦で、相手3体を1体のみで倒した」、すなわち「3連勝した」という意味で使われます。「盾」となって「立て続け」に相手を倒す――そんなイメージから広がったのかもしれません。

このケースのように、「3タテ=3連勝」とする傾向は今後さらに拡大していくはずです。“正しく”3連敗の意味で使っていたとしても、質問文のように3連勝とも受け取られかねないような表現であれば、書き方を考え直すことも求められそうです。

(2020年09月25日)



質問に際して

プロ野球の記事でよく目にする「3タテ」ということば。本来は「(同一カード)3連敗」の意味なのですが、近年は「3連勝」の意味で使う原稿を目にする機会も増えてきています。

辞書を引くと、日本国語大辞典2版では「たて【立】」の項に「立て続けの負けを数えるのに用いる。連敗。『三たてを食う』など」との記載があります。岩波国語辞典8版のように「近ごろ、連勝にも言う」との注釈するものもありますが、いずれも語義として記しているのは「連敗」の方。「立て続け」から生まれた助数詞ですが、立て続けの「負け」に限定されて使われてきたようです。

仮に「3タテ」が「3連敗」と「3連勝」のどちらにも取れるとしても、「3タテを食う」であれば、「食う」のは「3連敗」のはずなので紛らわしくはありません。「〇〇が××を3タテ」という見出しなら少し複雑にはなりますが、おそらく「相手を3連勝させる」という回りくどい解釈はせず、「〇〇が××を3タテ(にする)」=「〇〇が××を3連敗させる」「〇〇が3連勝」と理解できるのではないでしょうか。

では、質問の「〇〇、××に3タテ」という見出しはどうでしょう。「3タテ」=「3連敗」だと理解している人は「〇〇が××に3連敗(を喫する)」と受け取るはずですが、「〇〇が××に3タテ(を食らわす)」と読めば「3連勝する」と思ってしまってもおかしくありません。こういう使い方から「3連敗」「3連勝」が紛らわしくなっていくのかもしれませんが、実際にどう受け取られるのか、気になるところです。

(2020年09月07日)

 

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