「辞任の意向を表明した」という記事内容に合う見出しとしては、7割が「辞意表明」を選択。新聞側はより端的な「辞任表明」を使っていましたが、読者側は見出しについて、まず記事に即したものであることを求める傾向が見られました。

「辞任の意向を表明した」という記事になじむ見出しについて伺いました。

「辞意表明」が7割占める

「首相が辞任の意向を表明した」――この内容の記事にふさわしい見出しは?
首相辞意表明 69.9%
首相辞任表明 12.5%
首相辞任へ 16.2%
首相辞任 1.4%

 

「辞意表明」が7割を占め、大差で支持を集めました。毎日新聞の見出しは「首相辞任表明」というものでしたが、「辞任の意向」を忠実に反映させるなら「辞意」とすべきだと考える人が多いようです。見出しを付ける記者よりも読者の方が、見出しが記事に即していることを重んじているとも言えそうです。

辞書は「辞意」を「気持ち」と説明

回答から見られる解説でも書きましたが、8月28日の安倍晋三氏の首相辞任会見を受けた各紙の見出しは「安倍首相辞任表明」としたものが大半でした。新聞社の相場観としては、「辞意」よりは「辞任」の方が端的に意味を伝える、ということになるでしょう。

国語辞典では、「辞意」は「辞退・辞職したいという気持ち」(大辞泉2版)と説明されます。考え方としては、首相が辞任を記者会見で表明した以上、それは覆ることがないのだから「気持ち」として済まされるものではなく、「辞任」と言っても差し支えないということになります。

「首相辞任」としてよいか

一方、毎日新聞は今回の辞任に当たって号外を出したのですが、その見出しは「安倍首相辞任」というものでした。日経新聞は朝刊でこの見出しをとっていましたが、校閲のツイッターにはこれについて「まだ辞任していないのだから間違いだ」という声が寄せられました。

もちろん「辞任表明」の方が、当日に起こった出来事に即しているのは確かですが、上述したように覆ることのない決定である以上、インパクトを添えて伝えるためには「辞任」という見出しになることも理解できなくはありません。

ただし、毎日新聞でも2007年に安倍氏が首相を辞めると表明したときに「安倍首相が辞任」という見出しを取ったのですが、これについては社内からも意見が出ました。「辞任」と言い切ればインパクトはあるが、辞任に至るまでにはそれなりに手続きが必要であって、事実関係としては正確な表現とは言い難い、というのがその趣旨です。このことを踏まえても、やはり「首相辞任」とする見出しは、読者の批判を招きかねず、勇み足に近いと言うべきでしょう。

見出しにも求められる「精度」

新聞において見出しは、基本的に紙面制作を担当する整理記者の判断によって付けられるものですが、時に整理記者は人目を引く見出しを付けようとして、記事で述べられている事実以上に踏み込んだ表現をすることがあります。校閲記者は、ある意味ではそれをとどめる立場になりますが、校閲側の注文が必ずしも通らないこともあります。

しかし今回のアンケートの結果からみても、一般の読者の側からは新聞側が考える以上に、見出しにも記事内容に即した「精度」が求められています。校閲記者もそのことを踏まえて、見出しについてもよりシビアに臨まなければいけないと感じました。

(2020年09月18日)



質問に際して

8月28日、安倍晋三首相が辞任の意向を表明しました。それを受けた各紙の翌日朝刊1面の見出しは「安倍首相辞任表明」(毎日、読売、朝日、産経)、「安倍首相辞任」(日経)、「安倍首相退陣」(東京)というものでした。

安倍首相は2007年にも、健康上の理由から首相の座を退いています。当時の各紙の見出しはバラバラで、「安倍首相が辞任」「安倍首相辞任表明」「安倍首相退陣」「安倍首相が辞意」「安倍首相辞任へ」――というもの。

前回と比べると、今回は「辞任表明」でそろったという印象を受けます。「辞任の意向」なので「辞意」でもよいはずですが、端的な「辞任」が選ばれたのでしょう。また「表明」はあくまで即日の辞任ではないため、付けた方が事実に即しているのは確かです。

インパクトの強い出来事の紙面作りでは他社の見出しも気になりますが、今回各社横並びにも見える形となったのは、言葉の選び方が無難な方に傾いたからか、必然的なものだからか。皆さんならどうするかも伺ってみたいと思います。

(2020年08月31日)

 

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