コンビニなどで袋が要るかと聞かれた際に「大丈夫です」と答えるのはどうなのか。6割の人は「要らない」という意味は分かるが、曖昧なので使用は避けたいと答えました。受け答えで「大丈夫」を使う場合には意味が通じるか注意が必要です。

受け答えで使われる「大丈夫」について伺いました。

「分かるが避けたい」が6割占める

袋は要りますか?との問いに「大丈夫です」――この答え方はOK?
「要らない」という意味は分かり、問題ない 29.4%
意味は分かると思うが、曖昧なので避けたい 59.3%
意味が伝わるとは言えず、よくない 11.3%

 

コンビニなどで袋が要るかと聞かれ、「要る」「要らない」で答えずに「大丈夫です」と答えるのはどうなのか。9割の人は「大丈夫」=「要らない」という意味は分かると考えているようですが、返答としては曖昧なものと感じる人がそのうち3分の2、全体の6割を占めました。使う場面によっては意味が取りづらい場合も考えられ、返答に「大丈夫」を使うのは気をつける必要がありそうです。

辞書編集者も悩ます「大丈夫」

とはいえ出題者も時に使ってしまうこの「大丈夫」。辞書編集者の神永暁さんも「悩ましい国語辞典」(角川ソフィア文庫)で取り上げ、辞書の記述と使用実態のギャップに感じる“悩ましさ”をつづっています。

理髪店で髪を切り、シャンプーをしてもらっているときのことである。店員さんから「おかゆいところはありませんか」と聞かれて「大丈夫です」と答えてしまったのだが、自分で使っておきながら、この「大丈夫」の意味は残念ながら今の国語辞典では説明できないんだよなと考えた。

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「大丈夫」の項目で、「問題ない」「結構です」といった意味合いの受け答えの用法を載せている辞書が、まだ少なかったのだと思われます。しかし神永さんは「この新しい『大丈夫』が辞書に登録される日も遠くないような気がしているのである」と記しています。実際に、最近改訂された国語辞典は、新しい意味の「大丈夫」を採録する傾向が見られます。

応答の「大丈夫」も辞書に載る傾向

比較的最近出た国語辞典で、応答に使う「大丈夫」の説明を載せているものを以下に挙げます。

・婉曲(えんきょく)的に拒否したり、辞退したりするさま。結構。「『お茶はいかがですか』『―です』」〔近年、若者を中心に使われる〕(大辞林4版、2019年)
・近年、応答に用いることが増えている。「『おかわり―(=不要)ですか』『―(不要)です』」「『かゆいところありますか』『―(=問題ない)です』」(岩波国語辞典8版、2018年)
・口語で、「(…しても)よい」「(…しなくても)よい」の意。「『おかわりはいかがですか?』『大丈夫です』」(現代国語例解辞典5版、2016年)
・〔俗〕よろしい。けっこう。「おさらをお下げしても―ですか・『レジぶくろは―〔=ご不要〕ですか』『はい、―です〔=いりません〕』」(三省堂国語辞典7版、2014年)

やんわりと断る意味を載せているものが多いのですが、なかでも現代国語例解辞典が「(…しても)よい」「(…しなくても)よい」の両方を挙げているのが目を引きます。どっちも使われる、と辞書が明記するとは! 確かに「『おかわりはいかがですか?』『大丈夫です』」というやり取りは、ちょっと受け取り方に迷います。この返答はおそらく「食べなくてもよい」という意味と思いますが、もし質問が「おかわりどう? まだ食べられる?」という形で、それに「大丈夫です」と答えが返ったならどう受け止めるべきでしょうか。「食べてもよい」と受け止めたいところですが、その逆の意味である可能性も大いにあり得ます。

その「大丈夫」はどっちの意味?

さすがに上のような例であれば、「大丈夫です」を使うのはためらわれるので、アンケートを取ったならば問題ありとする人が大勢を占めるのではないかと思います。またよく例示されるのが、上司が部下に「一杯どう?」と誘いをかけ部下が「あ、大丈夫です」と答えるような形。部下は断っているつもりでも上司は「OK」の意味で受け取るという、コミュニケーションの食い違いが生まれます。

コンビニの袋の場合はこれほどの混乱は起こらないと考えて、今回の質問は「ぎりぎりセーフ」だろうかと伺ってみたのでしたが、「問題ない」は3割止まり。校閲のツイッターの引用リツイートで「コンビニで留学生アルバイトさんにこれを言ったら袋を出されてしまった」というものも見られました。「日本語ではっきり言うとキツく感じる」という意見も一理あると思いますが、意味が伝わりにくいことで現実的な不都合があることを考えると、「曖昧なので避けたい」という意見が過半数になったのはもっともなことだと思います。

「確実な意思疎通」には不向きな用法

応答に使う「大丈夫」が広がりを見せており、辞書でも市民権を得つつあるのは確かです。しかし、コンビニのレジのような、比較的意味の分かりやすい場面であってもきちんと意味が伝わるとは言えないことを考えると、問いかけへの返答に「大丈夫です」を使うのには注意が必要だと考えるべきでしょう。確実に意思疎通したい場合には、避けた方が無難なのは間違いありません。

(2020年09月15日)



質問に際して

プラスチック袋の有料化により、コンビニなどのレジで袋が要るかどうかを聞かれることが増えました。そうした時、自前の袋がある場合はつい「大丈夫です」と答えてしまい、「あっ、この『大丈夫』は大丈夫なんだっけ?」と自問自答することに。もちろん、こちらから袋を出せば店員さんには誤解の余地はないわけですが……。

こうした使い方の「大丈夫」は、近年になって一気に普及した言い回しのようです。明鏡国語辞典2版(2010年)では「相手の勧誘などを遠回しに拒否する語」と説明しつつ、「主に若者が使う。(中略)本来は不適切」としています。しかし昨年出た岩波国語辞典8版では「近年、応答に用いることが増えている」として「かゆいところありますか」「大丈夫(=問題ない)です」といった例を挙げますが、俗用とも誤りともしていません。

ただし、やんわりと断る語として使われる一方で、「明日行ける?」「大丈夫です」のようなやり取りでは、断るわけではなくOKの意味と取るのが普通です。文脈に依存する度合いが高い語になってしまっており、そこが良くないと感じる人も多そうです。今回の例では「問題ない」もある程度の人が選ぶのではないかと思いますが、使い方が気になる語であるのは確かです。

(2020年08月27日)

 

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