「海外」という言葉を「国外」と同じように使えるのは、陸続きの外国がない場合のみと答えた方が6割を占めました。日本以外の国からの視点で「海外」を使う場合には、ちょっと立ち止まって考えることをおすすめします。

「海外」という言葉の使い方について伺いました

6割は「陸続きの外国がない場合のみ」使う

「海外」という言葉を「国外」「外国」と同じように使うのはどうですか?
陸続きの外国がない、島国の場合のみOK 62.2%
陸続きの外国がある場合でも、漠然と外国を指すときには使える 26.1%
海岸線のない国の場合や、陸続きに接する外国を指すときにも使える 11.8%

 

陸続きの外国がない場合にのみ使えると答えた方が6割を占めました。これまで「毎日ことば」で示してきた私たちの考えと一致していると言えそうです。

 

大陸の中国でも「海外=外国」

ただし、ちょっと気になることもあります。現実には、たとえば中国紙「人民日報海外版」のように、四方を海に囲まれてはいない国から見て「海外」を国外と同じ意味で使う例があるのです。手元の「中日大辞典」(大修館書店)3版でも、海外の語釈は「国外」と書かれており、中国語においては日本語の感覚よりも「海を隔てた地」という語感が薄いのかもしれません。

人民日報海外版のウェブサイトから

「海」が「未知の世界」を指す場合も

漢和辞典はどうでしょうか。十数巻から成る諸橋轍次著「大漢和辞典」(大修館書店)2版の用例では「【海外】とつくに。国のそと。四海の外。外国」とあり、海の字にかかわる説明は「四海の外」だけです。

四海とは何か。多くの国語辞典に載っている、文字通りの「四方の海」の意のほかに、白川静著「常用字解」はこういう意味があると解説しています。「中国で四海というのは、四方が海であるという意味ではなく、中華(文明の進んだ中国)に対して四方は未開の国であるという意味である。海はまた知られざる暗黒の世界であった」。必ずしも海の向こうを指さない「海外」の用法は、このように、「海」が知られざる地を指すことがもとになっていると理解することができそうです。

しかし、それがそのまま日本語として通用するかは別問題でしょう。「日本語新辞典」(小学館)に見られるように、「海をへだてた外国。日本は海に囲まれているところからいう」という考え方が一般的であると、今回のアンケートで確かめることができました。

日本以外の国からの視点では要注意

報道各社の用語集では、日経新聞が2017年版の用語集で「島国の日本から見れば『海外』と『外国』はほぼ同義語として使えるが、大陸の国などの場合は必ずしもそうではない。『中国企業の海外進出』『ギリシャの銀行から預金が海外に流出』などの使い方に注意する」との記述を追加しています。他の社が追随する動きは確認できていませんが、少なくとも「使い方に注意する」ことが必要なのは確かだと、私たちも考えています。

(2020年08月14日)



質問に際して

このテーマは以前にもブログなどで取り上げたことがあります。

「海外」は文字通り読めば、海の向こうの地にしか当てはまりません。海を隔てない外国を含む場合には「海外」と言わない方がよいと私たちは考えています。

ところが書き手にとっては文字通りの意味があまり意識されないのか、原稿では米国をはじめ陸続きの外国を持つ国の話にもよく登場します。

では読者の立場からは、言われてみればおかしいと感じられるのか、理屈は分かるが問題ないと思えるのか。一度うかがってみたいと考えたものです。

(2020年07月27日)

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