「募ったお金」のこととして「募金」を使う用法は近ごろ許容される傾向にありますが、「寄付金」と言い換えた方がよいとする人が半数を超えました。「募金」は「お金を集めること」に限って使う方が文意がはっきりすることが多そうです。

「募金」を「募ったお金」の意味で使えるかについて伺いました。

過半数は言い換えを選択

被災地に「募金」を送る――この使い方、どう感じますか?
「募金」はお金を募る行為。「寄付金」とした方がいい 59.8%
「募金」はお金を募る行為だが、「募ったお金」として違和感はない 29.8%
「募金」はお金を募る行為に加え、お金を出す行為も意味するので問題ない 10.4%

 

「募ったお金」のこととして「募金」を使うこと。この用法を許容する新聞・通信社や国語辞典もあるため、容認派が多くなるのではないかと予想していたのですが、「寄付金」と言い換えた方がいいとした人が半数を超える結果になりました。

「募金」は本来「集めること」だが…

まずは「寄付をする」という意味で「募金」を使うことについて。お金を出すことも「募金」と表現する使い方はかなり広まっているとはいえ、これを認めるマスコミの用語集や辞書はありません。毎日新聞でも用語集で「『募金(する)』は金を募ることで、寄付することではない。金を出す行為は『募金に応じる』『寄付する』などとする」と注意喚起しています。金を募る側なのか、出す側なのかをはっきりさせるためにも、前者は「募金する」、後者は「寄付する」と使い分けたいところです。

では「募金=募ったお金」とするのはどうでしょうか。辞書では「寄付金を募る」という動作の説明のみを記載するものが多いものの、載せているものもあります。明鏡国語辞典2版は以下のように言います。

寄付金などを一般から集めること。また、その金▽主催者側からいうことば。②[俗]①に応じて、金を寄付すること。また、その金▽主催者側の言い方をそのまま受けて言ったもの。

また、三省堂国語辞典7版には以下の通り。

寄付金などを集めること。また、その集めたおかね。②[あやまった使い方で]おかねを寄付すること。また、そのおかね。

「募金」はお金を「募る行為」に加え、その主体が「募ったお金」を表すのであれば認められる――反対に、「寄付する行為」「寄付したお金」を表すのはよくない――という姿勢を打ち出したものだと読めます。

「集めた金」を認める新聞・通信社も

新聞・通信社の用語集も見てみました。一部を紹介すると「『募金』は寄付金を募ることや、そのようにして集めた金。寄付することや、自分が寄付した金を『募金』と呼ぶのは俗用」(朝日)、「金を募ること。募金に応える行為は『寄付・寄金、募金に応じる』」「募った金(名詞)の意で使う『募金を(まとめて)被災地へ送る』などは可」(共同)といった具合です。辞書と同様に、主催者側が「募ったお金」であれば認めている社もあるようです。

共同通信社「記者ハンドブック13版」から

 

例えば「貯金」「預金」は「お金をためる」「(金融機関に)お金を預ける」という行為に加え、それぞれ「たまったお金」「預けたお金」そのものも指します。これに照らせば、「募金」も「お金を募る」「募ったお金」双方を表すと解釈できるのかもしれません。

「募金」はまだ限定的に使いたい

それならば毎日新聞としても「募金=募ったお金」を認めた方がよいのではとも考えたのですが、言い換え奨励派が多いという今回の結果を受け、慎重であるべきだと思い直しました。もしかしたら「被災地に『募金』を送る」という今回の質問の形では、主催者側が募ったお金というよりも、応じた側が寄付したお金と解釈した人が多かったのかもしれません。

「募ったお金」としての用法は「間違いだから直す」とはいえないものの、「寄付金」「集まったお金」と言い換えた方が「(応じた側の)寄付金」「(主催者側に)集まったお金」と、誰が主体なのかをはっきりさせることができるでしょう。

(2020年06月05日)



質問に際して

以前本コーナーで「募金」ということばの使い方について伺いました。

そこで解説したように、「募金」は文字通り「お金を募る」ことを表すので、お金を出す側でなく集める側について用いられることばです。毎日新聞の用語集も「『募金(する)』は金を募ることで、寄付することではない。金を出す行為は『募金に応じる』『寄付する』などとする」と記載しています。

「募金」と「寄付金」の使い方については以前、マスコミ各社の用語担当者の会合でも取り上げられ、その際「被災地に募金を送る」「お預かりした募金は〇○に役立てさせていただきます」という表現はどう思うかについて話し合われました。

毎日新聞のルールに慣れている出題者は、いわば反射的に「寄付金にすべきだろう」と思ったのですが、各社の答えでは「募金を『集まったお金』の意味で(名詞として)使うなら違和感はない」といったものが多数派で驚きました。

「募金」で辞書を引くと「寄付金を募る」という動作の説明のみの記載が多いものの、「寄付金などを集めること。また、その集めたおかね」(三省堂現代新国語辞典6版)、「寄付金などを一般から集めること。また、その金」(明鏡国語辞典2版)のように「募ったお金」の用法を認めるものもあります。動詞として考えれば「金を募る」ですが、「募ったお金」としても認められるということでしょうか。

(2020年05月18日)

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