対戦相手を「くだす」という表現から、相手に格上・格下のニュアンスを感じ取るものか。結果は「どちらにも使う」が過半数を占め、格の上下とは関係なく使う人が最多でした。出題者の考え方とおおむね一致したといえそうです。

勝負で相手を「くだす」というときのニュアンスについて伺いました。

格上・格下「どちらにも使う」が過半数

対戦相手を「くだす」という表現は――
格上を負かすときに使う 20.9%
格下を負かすときに使う 24%
どちらにも使う 55.1%

 

対戦相手を「くだす」という表現に、相手が格上か格下かというニュアンスが伴うのかを探るために伺いました。結果は「どちらにも使う」が過半数を占め、「格上」「格下」がそれぞれ2割強と同じくらい。格の上下とは無関係と捉える私たちの考え方とおおむね一致したといえそうです。

大相撲では意識するとの意見も

昨年秋に開かれた報道各社の用語担当者による会合で、ある新聞社から「アマチュア競技の記事では対戦者の格の上下を前提とした表現を避けるため、AがBを『くだす』とは書かないとの注意事項がある。他社はどうか」という質問が出ました。

多くの出席者は毎日新聞と同様、「くだす」について「特に決めていない」「縛りをかけていない」「打ち負かす、降参させるという意味であり格の上下はない」と答えました。一方で、一部からは「大相撲の平幕力士が横綱、大関をくだすとはしない。格のはっきりしたものに関して下の者が上の者を『くだす』は使わない」「弱者が強者をくだすとするのは違和感があると出稿部側が言っていた」などの発言もありました。

東京・両国国技館で2019年9月19日午後3時半ごろ、西本龍太朗撮影

辞書には特段の記述なし

少数意見とはいえ、根拠が分かれば一考の余地があるかもしれない。そう考えて辞書を引いてみます。しかし、ほとんどの辞書は「勝負ごとで相手を負かす、降参させる」といった感じでそれ以上踏み込んだ語釈がなく、用例も「強敵を─」(大辞林第4版)などとあり、格上を倒す表現にそぐわないという根拠を見つけることはできませんでした。

では一般の人の捉え方は――と考えて今回伺ったわけですが、この結果を見て、私たちの考え方を変える必要は当面なさそうだと感じています。

毎日新聞は表外訓の「降す」を使用

なお、今回、漢字表記を使わず「くだす」と平仮名にしたのは、「下す」「降す」の表記による迷いや回答への影響を避けるためでした。常用漢字表で「降」の訓読みは「おりる」「おろす」「ふる」だけであり「くだす」はないことから、日本新聞協会の用語集では、漢字を「下す」に統一しています。

一方、毎日新聞は独自に「降す」の表記を認めて「下す」と区別し、相手を負かす場合は「降す」と書くよう使い分けています。この使い分けは1970年代から続いているものですが、社内の記録によれば、当時「下す」では降参させる意味が十分に出ないという意見が強かったため始まった使い分けだそうです。

1970年代の議論を伝える部内報

(2020年05月15日)



質問に際して

スポーツなどの勝負事で相手を負かすことを「くだす」と言いますが、この言葉で「相手が格上か格下か」に関して何らかのニュアンスを感じるでしょうか。

報道各社の用語担当者による会合で、ある社が「アマチュア競技では対戦者の格の上下を前提とした表現を避けるため、AがBを『くだす』とは書かない。他社はどうか」と問いかけたところ、いくつかの社から「弱者が強者をくだすというのは違和感がある」「平幕が横綱をくだすとは書かない」といった意見が出ました。

とはいえ多数派とまではいえない数でしたし、私たちもこうした考え方をとっていません。辞書の用例を見ても「強敵を─」(大辞林第4版)、「A校がB校を二対一で─」(明鏡国語辞典第2版)などとあり、格の上下とは無関係な表現と考えています。読者の皆さんはいかがでしょうか。

(2020年04月27日)

 

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