「SNS」をどう説明するか。そもそも「説明不要」と考える人が多いのではないかとも思いましたが、不要派は3割程度でした。紙面上では説明があった方がよいと考えられますが、どう説明するかは今後も悩むことになりそうです、

「SNS」という略語をどう説明したらよいか伺いました。

「説明不要」は3割にとどまる

新聞記事に「SNS」が登場するとき、どう説明されているのが分かりやすいですか?
「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」と説明する 33.6%
「会員制交流サイト」と説明する 12.1%
「ネット交流サービス」と説明する 27.2%
説明不要。SNSのみでよい 27.2%

 

校閲にとっての「SNS問題」について質問をさせていただきました。「毎日ことば」をご覧になっている皆さんであればSNSに明るい人も多いはずで、「説明不要」を選ぶ人が大多数ではないかと考えていたのですが、不要派は3割程度という結果になりました。紙面上では説明があった方がよいと判断した人が多いということになりますが、説明として抜きんでて支持を集めたものはなく、悩みは今後も続きそうです。

一般化しているなら説明は不要

略語について、毎日新聞の用語集には「文の最初に出てきた正式名のあとにかっこを付して入れる。同じ記事で2度目以降は略語だけを使う。ただし、安保条約、原発、日教組などのように一般化しているものは、最初から略語を使ってもよい」とのルールがあります。これを踏まえると略語を使う場合は、原則として初出時に説明や正式名を記すけれども、一般化している略語だと判断できれば、特に説明は不要だということになります。

毎日新聞用語集から

ゆえに「SNS」をすでに一般化した語と考えるかどうかが、説明をつけるかの判断基準になります。例えば総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、2018年度のソーシャルメディアの利用率は▽LINEが82.3%▽Twitter37.3%▽Instagram35.5%▽Facebook32.8%――となっています。

Twitter以下は利用していない人の方が多数派ではありますが、利用していなくても「どういったものかは分かる」という人はそれよりも多いであろう点、LINEに関しては8割以上が利用している点を踏まえると、「SNS」はある程度一般化していると考えてもよさそうです。

しかし、「SNS」が英略語であることを考慮しなければなりません。「原発」のような日本語と違って英略語の場合、知らない人にとってはただの記号となってしまい、意味を全く想像できないという問題があります。比較的目にすることの多い「EU」や「W杯」のような略語でも、初出時は「欧州連合」「ワールドカップ」との名称に添える形になります。英略語に関しては、一般化したと判断されても、紙面上ではできるだけ説明を入れる傾向があるのです。

日本語での説明に難しさ

では「SNS」に説明をつけるとしたら、どのような説明にすべきか。SNSの説明として紙面で採用されているのは、選択肢に挙げた三つに絞られます。一つ目が最多得票を集めた「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」です。これが一番多く使われることもあり、それなりに浸透してきているのかもしれません。ただ、正式名「Social Networking Service」をカタカナ表記しただけなので、「SNS」を知らない人のための解説になっているかは微妙なところがあります。

二つ目の「会員制交流サイト」は、通信社などで採用されている説明です。mixiなどコミュニティーを作って交流するネットのサイトを表すならしっくりくるのですが、「SNS」の中にはLINEやTwitterのように「アプリ」を使うものもあります。またこれらのアプリは使用前に会員登録をするとはいえ、それを「会員制」といえるかは微妙なところです。最後の「ネット交流サービス」は昨年改訂した毎日新聞の用語集で加えられた説明です。「交流」の部分を訳しただけですが、三つの中では一番わかりやすいのではないかと思います。

「SNS」は「AI=人工知能」のようにただ日本語に訳しただけですっきり、とはならないのが悩ましいところです。裏を返せば「SNS」という略語が広まっているのは、利用率の増加に加え、それにあたる日本語がないからというのも一つの理由でしょう。インターネットや情報通信の分野では「ダウンロード」「ブロックチェーン」のように、訳が難しい「新語」がどうしても多くなってしまいます。

「スマホ」の説明は消えたが…

「スマートフォン」は存在が当たり前になるにつれ、「(多機能携帯電話)」という説明がいつのまにか消えました。遠からず「SNS」もほとんどの人にとって当たり前の存在になりそうですが、SNSの説明も同様に消えるのか、はたまた「EU」のケースのように存在し続けるのか――。いずれにせよ「SNS問題」に悩む日々はまだしばらく続きそうです。

(2020年05月01日)



質問に際して

このブログでも何度も登場する「SNS問題」。校閲記者にとって悩みの種になっているのは、SNSをどう説明するのが適切かという問題です。

SNSは身近なものになりましたが、まだなじみのない人もいることでしょう。そういった人の理解の助けになるようにと、記事に登場する際は多くの場合、日本語の説明がつけられます。

例えば「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」は最も登場頻度の高い「説明」ですが、英語の「Social Networking Service」をカタカナで表記しただけなので、そもそも「説明」になっているのかという疑問が残ります。

一方でこれだけSNSという言葉もツールも浸透しているのだから、もはや説明は不要という考えもあると思います。例えば、サイエンスフィクション(Science Fiction)を表す「SF」のように、日本語の説明がつけられることがまれな言葉もあります。

SNSの一つであるTwitterを通して当サイトを訪れた人からは、今更説明なんて、という声も聞こえてきそうです。しかしここでは、既に「分かっている人」にもあえて伺い、今後の参考にさせていただきたいと思います。

(2020年04月13日)

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