数量を表す接頭語「ギガ」を名詞として使う「ギガが足りない」。使う人と許容できる人を合わせると40%あまりになりました。しかし「違和感が強い」が最多で過半数を占めたことは無視できず、新聞で使うのは時期尚早と考えられます。

数量に関する「ギガ」の最近の用法について伺いました。

「使う」「許容」合わせて4割超えたが…

スマートフォンの「ギガが足りない」――このような言い方、どう感じますか?
通信容量の不足の意味で使うし、違和感はない 14%
使わないが意味は分かり、許容できる 28.9%
意味は分かるが、違和感が強い 52.9%
意味が分からない 4.2%

 

数量を表す接頭語「ギガ」を名詞として使う「ギガが足りない」。これを許容できる人の割合は、自分では使わない人も含めて40%あまりでした。意外に多いと感じるでしょうか。しかし、「分からない」は少数ながら「違和感が強い」が過半数を占めたことは無視できず、現時点において新聞で使用を認めるのは難しいと考えます。

「俗用」としつつ取り上げる辞書も

最近出た国語辞典から「ギガ」の説明を引いてみます。2019年11月に出た岩波国語辞典8版によると「基準となる単位名に冠し、その十億倍に当たる意を表す語。記号G。『―バイト』」。これぐらいが標準的な説明ではないかと思います。

その1年ほど前に出た三省堂現代新国語辞典6版はどうか。まず岩波と同じような説明を載せる一方、項目内の第3項に次のような説明を載せます。「〈名〉[俗に、スマートフォンなどの、利用可能な]データ通信量。『―が減る・―を増やす』」。俗用と断りつつも、「ギガ」が接頭語にとどまらず、名詞として使われる例を拾い上げています。

昨年9月に出た、やはり三省堂の大辞林4版。こちらも項目内の3番目に「(主に若者言葉で)携帯電話などのデータ通信で、契約範囲の通信量を俗にいう語。『動画を見過ぎて激しく残りの―が減った』」と、やはり「若者言葉」と留保しながらも、用法を採録しています。現代新国語辞典は積極的に俗用を取り上げていますが、大辞林にもそうした編集方針が共有されているのでしょうか。ともあれ、これらの辞書からは新しい「ギガ」が一定程度浸透していることがうかがえます。

言葉としては一種の比喩か

名詞として使われる「ギガ」は一種の比喩とみられます。たとえば「尺」は長さの単位ですが、「尺が足りない」と言えば長さの不足を意味するように、物の長さそのものを表すことがあります。「ギガ」の場合は「ギガバイト」が略されたうえで比喩的に使われるのでしょう。データの量を表すなら本来は「バイトが足りない」と言うべきかもしれませんが……字面はアルバイトの人手が足りないように見えます。

毎日新聞の記事で、スマートフォンの契約通信量にギガバイトという単位が登場したのは2010年。ドコモが現行の第4世代(4G)の通信サービスを開始した際のことです。それから10年、今度は5Gの通信サービスが始まろうとしています。一足飛びにギガからテラ(1兆)に桁が変わることはないと思いますが、さらに6G、7Gとなれば単位はテラバイトに変わることでしょう。その時にはやはり「テラが足りない」とか「テラ不足」などと言うことになるのでしょうか。

新聞で使うには時期尚早

さてしかし、「現代用語の基礎知識」(自由国民社)においてすら、「スマホなどの利用できる通信量が減ること」の意味で「ギガが減る」という例が載ったのは2018年版(17年11月刊)のこと。俗語の使用を制限している新聞において、「ギガが足りない」などの用法を認めるのは時期尚早と言うべきでしょう。

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先ごろは毎日新聞の紙面にも「ギガ不足」が現れました。キャッチーな見出しを付けたい編集サイドとしては「ギガ」を使いたいのかもしれず、使用を100%止めることができるかというと、なかなか難しい面もあります。しかし、今回のアンケートで「違和感が強い」という人が過半数を占めたことを踏まえれば、出てくる都度に注意喚起し、できる限り使用は控えたい用法だと考えます。

(2020年04月21日)



質問に際して

最近、毎日新聞のツイッターで「大学生のギガが足りない」とするツイートが流れました。大学のオンライン授業の導入で、学生のスマートフォンの通信量が契約容量を超えてしまうという話題です。

問題は「ギガが足りない」。ギガは接頭語で「基準となる単位名に冠し、十億倍に当たる意を表す」(岩波国語辞典8版)言葉です。現在のスマートフォンの通信契約は、データの容量は使い放題でなければ「ギガバイト」が単位になっているので、そこから通信量のことを「ギガ」と呼ぶことがあります。

とはいえ「ギガ」自体は接頭語に過ぎず、口頭語として使われるのはともかく、記事で使う言葉としてはどうかと思いましたが……。紙面よりウェブ掲載が先行する記事だったので、「ギガ」で話が通じやすいという判断だったのか。

と思っていたところ、校閲のツイッターにもこの記事の用語について疑問を投げかけるコメントが付きました。やはり皆さんに聞いてみなければならないでしょう。この「ギガ」、気になるでしょうか。

(2020年04月02日)

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