スローガンを書いた段ボールも「プラカード」と呼んで問題ないとする回答が3分の2を占めました。材質や形状のいかんにかかわらず、メッセージを発するという役割を果たしていれば「プラカード」と呼べると判断されたようです。

段ボールを切り取ってスローガンを書いたものを「プラカード」と言ってよいか伺いました。

3分の2は「プラカード」と認める

上の写真で掲げられた物も「プラカード」と言ってよいでしょうか?
材質からしてプラカードとは言えない 21.1%
形状からしてプラカードとは言えない 3.8%
材質・形状ともにプラカードとは言えない 9.2%
スローガンが書かれているのでプラカードと言える 65.9%

 

「プラカード」で問題ないとする回答が3分の2を占めました。柄のついた板でなければプラカードと思えない、という出題者の感覚はむしろ少数派でした。

「板」か「張り紙」か 資料による違い

「コンサイスカタカナ語辞典」(三省堂)によると、プラカードは昔のオランダ語のplacke(平らな板)に由来し、昭和時代に日本に入ってきた言葉。「スローガンや校名・国名などを書いて掲げ歩く板。デモや入場行進に使う」(明鏡国語辞典2版)のようにほとんどの国語辞典が「板」と説明しているのは、この語源にかなうものです。

しかし国語辞典以外を見てみると、例えば「朝日新聞のカタカナ語辞典」(朝日新聞社)は「張り紙、掲示。特にデモ参加者などが持つ、主張などを掲げた宣伝板」。「現代用語の基礎知識 カタカナ外来語/略語辞典」(自由国民社)では「スローガンなどを書いて持ち歩く看板のようなもの。貼紙」とあります。板状のものである必要はなく、紙でも構わないというわけです。英和辞典でもplacardが「張り紙、ビラ」と説明されていることは出題時の解説で述べたとおりです。

はためく「プラカード」も

日本国語大辞典2版では、宮本百合子の「広場」(1940年)から「夜空にプラカートのはためく<略>歩道」という用例を引いています。「広場」には「街角の大きい銀行だの役所の屋根の破風には、その経営の中で機構の清掃が行われていることを市民に告げるプラカードが目立ち始めた」という使い方もされています(「宮本百合子全集第5巻」新日本出版社)。

作品の舞台はソ連時代のモスクワなので、どういう情景なのか想像が難しいのですが、このプラカードは屋根に取り付けられ「はためく」ような材質でできているということ。少なくとも柄のついた板でないことは確かです。

「プラカード」は材質より役割が大事

昔から、宣伝のための掲示物について「プラカード」が使われていたということでしょう。国語辞典の記述の細かいところにこだわって、材質が段ボールだとか柄がついていないとかいったことで悩む必要はなさそうです。今回のアンケートを見ても、「プラカード」と呼べるかどうかは実際に果たしている役割を見て判断すればよいだろうというのが結論です。

高校野球では、今春の選抜大会が残念ながら新型コロナウイルス問題を受けて中止になってしまいました。こちらに関しては、堂々と「柄のついた看板」(広辞苑7版)であるプラカードを先頭に行進する姿を、夏の甲子園で目にすることができればと思います。

(2020年04月14日)



質問に際して

写真に付けられた「プラカードを掲げた参加者」との説明を見て考えてしまいました。

プラカードと言われて出題者がまず思い浮かべるのは、高校野球の入場行進で掲げる、校名を書いたプレート。岩波国語辞典8版の「入場・デモ行進のときなどに、校名・スローガンなどを書いて持ち歩く、柄のついた看板状のもの」という説明がイメージ通りです。「柄のついた」という限定をつけない辞書もありますが、大方は「板」「看板」と説明しており、今回の写真の(おそらく)段ボールを切り取ったものを表せるのか疑問です。

しかし英和辞典でplacardを見てみると「はり紙、掲示、ポスター、ビラ」とあり、いわゆるプラカードはsignboardとなるのだそうです(ジーニアス英和辞典)。外来語の元の意味からすれば、特に材質や形状にこだわることはないのかもしれません。

自信が持てず直さなかったのですが、違和感を持つ人が多いとなれば、「スローガンを書いた紙を掲げる」などと直すことも検討しようと思います。

(2020年03月26日)

 

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