「肌の薄さは大人の2分の1」という表現に、問題なしと答えた人は4分の1にとどまりました。「薄さ」と「2分の1」がうまく結びつかないためでしょう。一般の文章では論理的な正確さが大事だと意識されているようです。

「薄さ」のような度合いの小ささを表す表現に関して伺いました。

「問題ない」は4分の1にとどまる

赤ちゃんの「肌の薄さは大人の2分の1」だそうですが……すんなり読めますか?
問題ない 25.3%
「肌の薄さは大人の2倍」がよい 1.1%
「肌の厚さは大人の2分の1」がよい 41.5%
「肌は大人の2分の1の薄さ」がよい 32.1%

 

「薄さは2分の1」という形で問題なしとした人は4分の1にとどまりました。「厚さは2分の1」という人が4割、「2分の1の薄さ」が3割で、何らかの言い換えを施す方がよいと考える人が多数派です。

質問文に挙げた例は実際の広告で見かけた言い回しです。一見して「何だか変」という印象を持ったのですが、改めて書き換え方を考えてみても「これならOK」と断言できるものは思いつかず。比較的受け入れやすいのは「厚さは2分の1」か「2分の1の薄さ」だろうと思いましたが、その点では予想した通りの結果でした。

「ユニクロ」のサイトから

「厚さ」は「度合いが大きい」という印象

支持が多かったのは「厚さは2分の1」ですが、広告でこの表現が使われなかったということは分かる気がします。「厚さ」は多くの国語辞典で「厚いこと」(大辞林4版)と言い、そのうえで「また、その程度」(同)のように説明されます。

「厚い」は「物の一方の面から他方の面までの距離が大きい」(同)ことですから、「厚さ」と言ってしまうと単なる度合いではなく、「厚いこと」すなわち度合いが大きいことを意味するようにも見えてしまう。度合いが小さいことを印象づけたい、「薄い」と直感的に分かってほしいという場合には、「厚さ」は使いにくい言葉になります。

今回辞書を引いていて、「厚さ」の説明が豊富だったのは明鏡国語辞典(2版)。まず「①〔向かい合った二つの面をもつ物体の特性としての〕物の両面の幅。また、その度合い」と説明し、度合いを表す語としての性質を分かりやすくしています。このような前提で考えるなら「厚さは2分の1」が「正しい」書き方と言いやすいでしょう。ちなみに度合いが大きいことを示す意味は②として「①が、相当に厚いこと」(同)と説明しています。「大きい」ではなく「厚い」と言ってしまっているのは疑問符も付くのですが。

「薄さ」と「2分の1」の結びつきは?

それにしても、「薄さは2分の1」というのは読みにくい。薄さが減ったら厚くなる?と変に勘繰ってしまいます。そこで「2分の1の薄さ」という表現を持ち出したのですが、これはどう違うのか。前者が「『薄さ』は2分の1」と言うのに対し、後者は「『肌』は2分の1」と言います。「2分の1」と説明されるものを「薄さ」からずらすことによって、「度合いの小ささを2分の1にする」という屈折した表現を回避するわけです。

出題者としては、直すならばこれぐらいかと思うのですが、「大人の2分の1の薄さ」と「の」が連続して三つも出てくる点に問題を感じる人もいそうです。「これでOK」という具合にはなかなかなりません。

「薄さ」であっても、これが例えば料理のレシピであれば「チキンブイヨンは通常の『2倍の薄さ』にする」と言った方が、「『半分の薄さ』にする」と言うよりも意味が通じやすいようです。これは「2倍」と言ったときに、通常の分量より「水を2倍にする」ということが直感的に分かりやすいからでしょう。しかし言葉の使い方として「2倍の薄さ」がよいかというと、これもすんなりうなずくことはできません。程度の小ささを表す言葉と掛け算・割り算的表現の結びつきは、やはり難しいものです。

一般的には「アピールよりも正確さ」で

今回のアンケートの質問で挙げた例は、もとが広告ということもあり、直感的に「薄さ」を感じ取ってもらうことが重要だったようです。元々は「赤ちゃんの肌は薄い」「その厚さは大人の2分の1だ」という二つの命題だったものをくっつける時にねじれが生じたわけですが、そこは目をつぶってアピールしやすい文面を作ったということでしょう。

とはいえ多くの人にとっては、広告でない普通の文章を書く機会の方がずっと多いはずです。アンケートでも4分の3の人が書き換えを選んだのは、論理的な正確さが大事だと考えるからでしょう。例文のように、よく考えると首をひねってしまう文章は、書く際のお手本にはされませんように

(2020年03月13日)



質問に際して

「薄さ」のような、度合いの小ささを比較する表現についての質問です。主に平たい物の高さについて「厚さ」と言い、「厚さ○ミリ」のような形で度合いを表します。紙のようにペラペラな物であっても高さは存在しており、その度合いを言うときには「厚さ」という言葉を使うのが普通です。

してみれば赤ちゃんの肌のようにやわやわとした物であっても、その度合いを表すためには「厚さ」を使えば問題はなかろうと思われるのですが……。「厚さ」の反対は言うまでもなく「薄さ」で、厚さの度合いが小さいことを指します。しかし「薄さ○ミリ」のように度合いを表すことはあまりありません。もっとも「○ミリの薄さ」のように言うことはあり、これは薄さを強調した表現と言えます。

「薄さは2分の1」という表現の仕方も、程度の小ささをさらに2分の1にすると言っており妙な感じがします。かといって「薄さは2倍」も何だか変。皆さんは選択肢の中ならばどれを選ぶでしょうか。

(2020年02月24日)

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