にこやかに振る舞う人が「振りまく」のは「愛想」か「愛嬌」かは、本来の言い方でないとされる「愛想を振りまく」が半数を上回り最多でした。しかし、それぞれを違う意味の表現と認識している人もおり、使い方を考える必要がありそうです。

周囲に対してにこやかに振る舞う様子の表現について伺いました。

「愛想」が「愛嬌」を上回る

みんなにニコニコ。どう表現するのがよいでしょう。
愛想を振りまく 51.1%
愛嬌(あいきょう)を振りまく 28.3%
上の二つは同じ意味で、どちらでもよい 1.9%
上の二つは意味が異なる 18.7%

 

「本来の言い方」ではないとされることもある「愛想を振りまく」が最多で、半数を上回りました。「本来の言い方」とされる「愛嬌を振りまく」は3割弱。この二つの言い回しはあまり区別されずに使われているのではないかとも思いましたが、「どちらでもよい」という人はわずかで、違う意味の表現として認識している人の方が目立ちました。にこやかな様子と一口に言っても、使い分けの意識が働く人もあるようです。

文化庁調査では「愛嬌~」が「本来」

文化庁は「国語に関する世論調査」で、2005年度と15年度に同様の質問をしています。「周囲のみんなに、明るくにこやかな態度を取ること」を何と言うか。主な回答結果は、

「あいそ(う)を振りまく」を使う 05年度48.3%、15年度42.7%
「あいきょうを振りまく」を使う  05年度43.9%、15年度49.1%

となっています。2度の調査のいずれも「あいそ(う)を振りまく」と「あいきょうを振りまく」とが4割台で均衡しました。今回のアンケートよりは、いわゆる「本来の言い方」に沿った結果になっています。

毎日新聞は07年に方針転換

ただし、「愛嬌を振りまく」が「本来」とされる一方で、国語辞典には「愛想を振りまく」という用例を挙げているものもあります。毎日新聞用語集は2002年版までは「誤りやすい慣用語句」の欄で「愛想をふりまく→愛きょうをふりまく、愛想がよい」とする書き換え例を載せていましたが、辞書の動向も踏まえて、07年版では記述を変更しました。以後、現在使用している19年版までは以下のように説明しています。

愛想をふりまく→「愛嬌(あいきょう)をふりまく」の誤用とする向きがあるが、採用している辞書は多い。「子犬が愛想をふりまく」などかわいらしさの形容には「愛嬌」がふさわしい

一律に書き換えを案内することはやめて、言葉の意味を考えて使うことを求めています。

自然な「愛嬌」、意識的な「愛想」

言葉の意味を考えて――と書きましたが、「愛嬌」と「愛想」が似た言葉であることは間違いありません。その上でニュアンスの違いについて説明する辞書は、大体は「愛嬌」を自然なものとし、「愛想」を意識的なものと見なしています。回答から見られる解説でも一部紹介しましたが、明鏡国語辞典(2版)は「愛嬌」の項目で次のように解説します。

「愛嬌がある/愛想がよい」はともに相手を評価して言うが、前者は個々人の顔立ちや性向が自然に備わったものとして言い、後者は対人関係のあり方として個人の社会的(または人為的)側面に注目して言う。「愛嬌/愛想を振りまく」でも、後者には、無理をして、こびてなどといった人為的な趣が感じられる。

いわゆる「誤用」に厳しい明鏡が「愛想を振りまく」を表現として認めていることに少々驚く一方で、「無理をして、こびて」という見方には手厳しい印象を受けます。この表現を使うなら、そういうニュアンスをも意識して使うように、と言っているようです。

「違いが分かる」受け手もいるかも…

現時点においては「愛想」と「愛嬌」のいずれを使っても間違いとは言いにくいでしょう。一方で「意味が異なる」という選択肢を選んだ2割弱の人は、現在の言葉の使い方に通じた人と言えそうです。いずれを使うにしても、受け取る人によっては微妙なニュアンスの違いを感じ取るかもしれません。「愛想を振りまく」を使う人が多数派ではありましたが、にこやかさのうちにも無邪気な様子をにおわせたいなら、「愛嬌」を選ぶのがより良いだろうと考えます。

(2020年03月06日)



質問に際して

本来の言い方とされるのは「愛嬌を振りまく」です。文化庁の「国語に関する世論調査」でもそのように扱っています。しかし、本当にそう言い切ってよいのかには疑問符も付きます。

三省堂の現代新国語辞典6版は「あいきょう」の項目で「愛嬌」と「愛想」を比較しています。「愛嬌」は「自然に備わっていて、無意識にあらわれるもの」、「愛想」は「相手によく思われようとして、意識的にする動作」とのこと。ナチュラルな「愛嬌」と、人工的な「愛想」という区別です。

明鏡国語辞典2版は「あいきょう」の項目で「『愛嬌/愛想を振りまく』でも、後者には、無理をして、こびてなどといった人為的な趣が感じられる」と言います。ここで明鏡は「愛想を振りまく」という言い回しを容認しつつ、「愛嬌を振りまく」とのニュアンスの差を説明しているわけです。となると、これらは両立する別の意味の言い回しと考えた方がよいことになります。

ちなみに毎日新聞用語集では2002年版までは「愛想をふりまく→愛きょうをふりまく、愛想がよい」という書き換え例を載せていましたが、07年版からは記述を変更し、言い換えを案内するのをやめました。皆さんは質問のような場合、どう表現することにしているでしょうか。

(2020年02月17日)

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